令和8年度税制改正に対応

2割特例・3割特例と簡易課税は、どの率で入れ替わるか(80%・70%とみなし仕入率の比べ方)

最終確認日: (数値は一次情報で照合)

結論から

2割特例の特別控除税額は、課税標準額に対する消費税額から売上げに係る対価の返還等に係る消費税額を控除した残額の100分の80と定められています(平成28年改正法附則51の2第2項)。3割特例の特別控除税額は同じ形で100分の70です(同附則51の3第2項)。簡易課税制度で控除されるのは、売上げに係る消費税額にみなし仕入率を乗じた金額で、率は第1種90%・第2種80%・第3種70%・第4種60%・第5種50%・第6種40%です。したがって、1種類の事業だけを営み、売上げに係る対価の返還等がない場合には、控除される金額の大小は率の比較だけで決まります。2割特例の80%と一致するのは第2種事業の80%、3割特例の70%と一致するのは第3種事業の70%です。ただし事業区分の判定は原則として課税資産の譲渡等ごとに行うため複数の区分にまたがることがあり、簡易課税には基準期間の課税売上高5,000万円以下という要件と2年間の継続適用があります。3割特例にも適用要件と適用できない課税期間が定められています。また多額の設備投資などがある場合、一般課税であれば還付税額が生じるところ、簡易課税制度や3割特例では通常還付税額が生じないと国税庁は案内しています。どの方法で申告するかの判断は、税理士または税務署にご確認ください。

この記事の要点

  • 2割特例の特別控除税額は売上税額(課税標準額に対する消費税額から売上対価の返還等に係る消費税額を控除した残額)の80%、3割特例は70%と条文で定められている。
  • 簡易課税で控除されるのは売上税額にみなし仕入率を乗じた額で、率は90%・80%・70%・60%・50%・40%の6種類。
  • 1種類の事業だけを営み、売上げに係る対価の返還等がない場合は、控除額の大小は率の比較だけで決まる。
  • 2割特例の80%と一致するのは第2種事業(80%)、3割特例の70%と一致するのは第3種事業(70%)。
  • 国税庁Q&A問117-3は、小売業に該当する場合について80%のみなし仕入率が適用されるため3割特例より納付金額が少なくなると考えられると記載している。
  • 率だけでは決まらない。事業区分は取引ごとの判定で複数区分にまたがること、簡易課税の5,000万円要件と2年間の継続適用、3割特例の適用要件と対象年分、還付の取扱いが別に関わる。
  • 3割特例の「主な適用要件」3項目だけでは足りない。同じ特集のフローチャートには特定期間(前年1月〜6月)の課税売上高も1,000万円以下という通過条件があり、Q&A問115-2は適用できない課税期間を8つ挙げている。

「2割」「3割」は納付側の呼び名。控除側では80%と70%

数字が飛び交って混乱しやすいところです。まず言葉を揃えます。

国税庁のリーフレットは、3割特例をこう説明しています。

個人事業者である適格請求書発行事業者の令和9年分及び令和10年分の消費税申告については、その課税期間における課税標準額に対する消費税額から控除する金額を、その課税標準額に対する消費税額に7割を乗じた額とすることにより、納付税額をその課税標準額に対する消費税額の3割とすることができることとされました。

つまり「3割」は納めるほうの呼び名で、控除されるのは7割です。同じように、2割特例は控除されるのが8割にあたります。

条文でも同じ形で書かれています。e-Gov法令検索で消費税法の令和8年10月1日施行版に添付された平成28年改正法附則を読むと、特別控除税額は次のように定められています。

特例条文特別控除税額
2割特例附則51の2第2項(課税標準額に対する消費税額 − 売上げに係る対価の返還等に係る消費税額)の 100分の80
3割特例附則51の3第2項(課税標準額に対する消費税額 − 売上げに係る対価の返還等に係る消費税額)の 100分の70

一方、簡易課税制度で控除されるのは、売上げに係る消費税額にみなし仕入率を乗じた金額です(国税庁タックスアンサーNo.6505)。率は事業区分ごとに 90%・80%・70%・60%・50%・40% の6種類です。

どちらも「売上税額に率を掛ける」という同じ形をしています。だから比べられます。

前提を4つ置くと、率の比較だけで決まる

次の前提が揃う場合、控除される金額の大小は率の比較だけで決まります。

  • 1種類の事業だけを営んでいること
  • 売上げに係る対価の返還等(返品・値引き・割戻し)がないこと
  • 特例と簡易課税とで、売上税額そのものは同じであること
  • 適用要件をどちらも満たしていること

この前提のもとで並べると、次のようになります。

事業区分みなし仕入率2割特例の80%と比べると3割特例の70%と比べると
第1種事業(卸売業)90%高い高い
第2種事業(小売業など)80%同じ高い
第3種事業(製造業・建設業など)70%低い同じ
第4種事業(飲食店業など)60%低い低い
第5種事業(サービス業など)50%低い低い
第6種事業(不動産業)40%低い低い

境界は2か所にあります。

  • 2割特例の80% … 第2種事業(80%)とちょうど一致します。入れ替わりは第1種と第2種の間にあります。
  • 3割特例の70% … 第3種事業(70%)とちょうど一致します。入れ替わりは第2種と第3種の間にあります。

売上税額が100万円だったとすると

前提を置いた試算です。売上税額(課税標準額に対する消費税額)が 100万円、売上げに係る対価の返還等はなし、1種類の事業だけ、という条件で並べます。

計算方法控除される金額差引きの納付税額
2割特例(80%)80万円20万円
3割特例(70%)70万円30万円
簡易課税 第1種(90%)90万円10万円
簡易課税 第2種(80%)80万円20万円
簡易課税 第3種(70%)70万円30万円
簡易課税 第4種(60%)60万円40万円
簡易課税 第5種(50%)50万円50万円
簡易課税 第6種(40%)40万円60万円

これはあくまで前提を単純化した試算です。実際の納付税額には、売上げに係る対価の返還等(消法38)や貸倒れ(消法39)の控除も関わります。国税庁のQ&A問117-3も、小売業に該当する場合について次のように記載しています。

ご質問のように、行っている事業が「小売業」に該当する場合、簡易課税制度を適用して申告することで、80%のみなし仕入率が適用されることになりますので、3割特例を適用するよりも、消費税の納付金額が少なくなると考えられます。

それでも、率だけでは決まりません

ここからが実務です。率の比較で見えるのは控除される金額の大小だけで、次の4つは別に効いてきます。

1. 事業区分は取引ごとの判定

国税庁タックスアンサーNo.6509は、どの事業区分に該当するかの判定を、原則として課税資産の譲渡等ごとに行うとしています。1つの事業者が複数の区分にまたがることがあります。

No.6505には、2種類以上の事業を営む場合の計算として、1種類の事業の課税売上高が全体の 75%以上を占める場合にその事業のみなし仕入率を全体に適用できる特例などが示されています。また、課税売上げを事業ごとに区分していない部分には、区分していない事業のうち一番低いみなし仕入率が適用されます。

2. 簡易課税には要件と2年間の継続適用がある

Q&A問117-3の注2・注3には、次の記載があります。

  • 簡易課税制度は、課税期間の基準期間における課税売上高が 5,000万円以下である場合に限り適用することができます。
  • 簡易課税制度の適用を受けている事業者は、事業を廃止した場合を除き、2年間継続して適用した後でなければ、その適用をやめることはできません。

3. 3割特例にも要件と対象年分がある

国税庁の特集ページは、3割特例の「主な適用要件」として、個人事業者であること、基準期間(適用を受ける年の2年前)の課税売上高が 1,000万円以下であること、インボイス発行事業者の登録を受けていることの3項目を挙げ、あわせて適用可否フローチャートの確認を求めています。対象となるのは令和9年分・令和10年分です。

この3項目だけでは足りません。同じ特集の適用可否フローチャートには、特定期間(前年1月〜6月)の課税売上高も1,000万円以下であることが通過条件として書かれています。また国税庁のQ&A問115-2は、個人事業者であっても3割特例の適用を受けられない課税期間を8つ挙げており、その③は特定期間における課税売上高により事業者免税点制度の適用が制限される課税期間です。詳しくは「[個人事業者でも3割特例を使えない8つの課税期間](/articles/3wari-tsukaenai-8-cases/)」をご覧ください。

4. 還付が生じるかどうか

Q&A問117-3は、多額の設備投資などがあり課税仕入れ等に係る消費税額が課税売上げに係る消費税額を上回る場合について、一般課税であれば還付税額が生じるものの、簡易課税制度や3割特例を適用している場合には通常還付税額が生じないと述べ、その点も踏まえて申告方法を検討するよう案内しています。率の比較には、この論点は出てきません。

期限は先に確認しておく

簡易課税制度は届出書の提出が前提です。国税庁の特集ページは、原則として適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに届出書を提出する必要があるとしたうえで、2割特例・3割特例の適用を受けた翌課税期間に簡易課税制度の適用を受けようとする場合は、その適用を受けようとする課税期間の申告期限までに届出書を提出することで、その課税期間から簡易課税制度の適用を受けることが可能であると記載しています。

同ページには、その翌課税期間が令和8年9月30日以前に終了する課税期間である場合はその課税期間の末日までとなること、確定申告書の提出期限の特例の適用を受ける法人等はその延長後の期限が届出期限となることも注記されています。

率の比較は、判断の材料のひとつにすぎません。自社の事業区分の判定、適用できる特例の範囲、届出書の期限日、そして申告方法の選択については、税理士または所轄の税務署にご確認ください。

出典

  • e-Gov法令検索 消費税法 令和8年10月1日施行版(平成28年改正法附則51の2第2項・51の3第2項)/確認日 2026-08-20
  • 国税庁「インボイス制度に関する令和8年度税制改正について」特集ページ/確認日 2026-08-20
  • 国税庁 同リーフレット(令和8年4月・令和8年5月改訂)PDF原本/確認日 2026-08-20
  • 国税庁「インボイス制度に関するQ&A」問117-3(令和8年4月追加)PDF原本/確認日 2026-08-20
  • 国税庁「インボイス制度に関するQ&A」問115-2(3割特例の適用ができない課税期間・令和8年4月追加)PDF原本/確認日 2026-08-20
  • 国税庁 同特集資料(PDF原本・10ページ・3割特例の適用可否フローチャート)/確認日 2026-08-20
  • 国税庁 タックスアンサー No.6505 簡易課税制度/確認日 2026-08-20

経営者の疑問と、制度の事実

答えるのは制度の事実だけです。有利・不利は事業ごとの事情で変わるため、判断は税理士・税務署にご確認ください。

経営者3割だ8割だと数字が飛び交って、何と何を比べているのか分からない。整理してくれ。

制度の事実比べているのは「売上税額のうち何%が控除されるか」です。条文では、2割特例の特別控除税額は課税標準額に対する消費税額から売上げに係る対価の返還等に係る消費税額を控除した残額の100分の80、3割特例は同じ形で100分の70と定められています。簡易課税で控除されるのは、売上げに係る消費税額にみなし仕入率を乗じた金額です。つまり並ぶ数字は、80%・70%と、第1種90%・第2種80%・第3種70%・第4種60%・第5種50%・第6種40%です。なお「2割」「3割」は納付側から見た呼び名で、控除側から見ると80%・70%になります。実際の当てはめは税理士または税務署にご確認ください。

経営者うちは小売だ。簡易課税なら80%と聞いた。3割特例の70%とは10ポイント違うだけか。

制度の事実第2種事業のみなし仕入率は80%で、3割特例の特別控除税額の割合である100分の70との差は10ポイントです。国税庁のQ&A問117-3は、行っている事業が小売業に該当する場合について、簡易課税制度を適用して申告することで80%のみなし仕入率が適用されることになるため、3割特例を適用するよりも消費税の納付金額が少なくなると考えられる、と記載しています。ただし事業区分の判定は原則として課税資産の譲渡等ごとに行うため、同じ店でも取引によって区分が分かれることがあります。ご自身の判定は税理士または税務署にご確認ください。

経営者簡易課税に移るなら、いつまでに届出を出せばいいんだ。もう間に合わないのか。

制度の事実国税庁の特集ページは、簡易課税制度の適用を受けるには原則として適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに届出書を提出する必要があるとしたうえで、2割特例・3割特例の適用を受けた翌課税期間に簡易課税制度の適用を受けようとする場合は、その適用を受けようとする課税期間の申告期限までに届出書を提出することで、その課税期間から簡易課税制度の適用を受けることが可能であると記載しています。なお、その翌課税期間が令和8年9月30日以前に終了する課税期間である場合はその課税期間の末日まで、確定申告書の提出期限の特例の適用を受ける法人等はその延長後の期限となる旨の注記もあります。ご自身の期限日は税務署にご確認ください。

よくある質問

3割特例と簡易課税は、結局どの数字を並べれば比べられますか?
3割特例の特別控除税額は、課税標準額に対する消費税額から売上げに係る対価の返還等に係る消費税額を控除した残額の100分の70です(平成28年改正法附則51の3第2項)。簡易課税で控除されるのは、売上げに係る消費税額にみなし仕入率を乗じた金額です。したがって1種類の事業だけを営み、売上げに係る対価の返還等がない場合には、70%と自社の事業区分のみなし仕入率を並べる形になります。実際の申告方法の判断は、税理士または税務署にご確認ください。
みなし仕入率が70%ちょうどの第3種事業だと、どうなりますか?
第3種事業のみなし仕入率は70%で、3割特例の特別控除税額の割合である100分の70と一致します。したがって上記の前提のもとでは、控除される金額は同じ額になります。ただし簡易課税には届出書の提出、基準期間の課税売上高5,000万円以下という要件、2年間の継続適用があり、3割特例には対象年分と適用要件があるなど、率以外の条件が異なります。個別の当てはめは税理士または税務署にご確認ください。
国税庁は、どちらの納付税額が小さくなるかを書いていますか?
国税庁のQ&A問117-3は、卸売業者から雑貨を仕入れて消費者に販売する個人事業者の質問に対し、行っている事業が「小売業」に該当する場合、簡易課税制度を適用して申告することで80%のみなし仕入率が適用されることになるため、3割特例を適用するよりも消費税の納付金額が少なくなると考えられる、と記載しています。ご自身の事業区分の判定と申告方法の選択は、税理士または税務署にご確認ください。
率が高いほうを選べば、それで終わりですか?
率の比較で見えるのは控除される金額の大小だけです。国税庁のQ&A問117-3は、多額の設備投資などがあり課税仕入れ等に係る消費税額が課税売上げに係る消費税額を上回る場合、一般課税であれば還付税額が生じるものの、簡易課税制度や3割特例を適用している場合には通常還付税額が生じないため、その点も踏まえて申告方法を検討するよう案内しています。また簡易課税は事業を廃止した場合を除き2年間継続して適用した後でなければやめられません。判断は税理士または税務署にご相談ください。
複数の事業をやっている場合は、この比べ方は使えますか?
そのままでは使えません。国税庁タックスアンサーNo.6509は、どの事業区分に該当するかの判定を原則として課税資産の譲渡等ごとに行うとしています。No.6505には、2種類以上の事業を営む場合の原則法・簡便法と、1種類の事業の課税売上高が全体の75%以上を占める場合などの特例の計算、さらに事業ごとに区分していない部分には区分していない事業のうち一番低いみなし仕入率を適用することが示されています。自社の売上構成での計算は、税理士または税務署にご確認ください。

個別の判断について

適用の可否や有利・不利は、事業区分・基準期間の課税売上高・過去の届出など個別の事情で変わります。実際の判断の前に、税理士等の専門家、または所轄の税務署にご相談ください。

出典(一次情報)

法令・国税庁・省庁など公的機関の公表資料のみを参照しています(解説記事等の二次情報は使用していません)。

本ページは公表されている制度情報にもとづく解説と試算の補助であり、税務に関する助言ではありません。個別の判断は必ず税理士等の専門家にご確認ください(所轄の税務署でも確認できます)。

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