3割特例と簡易課税は何が違うか(国税庁Q&A 問117-3・還付の注意点つき)
最終確認日: (数値は一次情報で照合)
3割特例は売上税額の3割を納付税額として計算する経過措置で、個人事業者の令和9年・令和10年に含まれる各課税期間に限られます。簡易課税制度は事業区分ごとのみなし仕入率(第1種90%・第2種80%・第3種70%・第4種60%・第5種50%・第6種40%)を売上税額に乗じた額を控除する制度で、基準期間における課税売上高が5,000万円以下の課税期間に限り適用でき、事業を廃止した場合を除き2年間継続して適用した後でなければやめられません。国税庁のQ&A問117-3は、事業が小売業に該当する場合について「80%のみなし仕入率が適用されることになりますので、3割特例を適用するよりも、消費税の納付金額が少なくなると考えられます」と記載しています。同じQ&Aは、多額の設備投資などがあり課税仕入れ等に係る消費税額が課税売上げに係る消費税額を上回る場合、一般課税であれば還付税額が生じるものの、簡易課税制度や3割特例を適用しているときは通常還付税額が生じないとも述べています。どの方法で申告するかの判断は、税理士または税務署にご確認ください。
この記事の要点
- 3割特例は納付税額が売上税額の3割になる計算で、控除される部分は売上税額の7割にあたる。
- 簡易課税はみなし仕入率で控除する計算で、率は事業区分ごとに90%・80%・70%・60%・50%・40%の6種類。
- 国税庁Q&A問117-3は、小売業(第2種・みなし仕入率80%)の場合について、簡易課税のほうが納付金額が少なくなると考えられると記載している。
- 簡易課税には基準期間の課税売上高5,000万円以下という要件と、事業を廃止した場合を除く2年間の継続適用がある。
- 2割特例・3割特例の適用を受けた事業者は、翌課税期間の確定申告期限までに届出書を出せば、その翌課税期間から簡易課税を適用できる(期限が休日等なら翌日に繰り下がる)。
- 多額の設備投資などがある場合、一般課税なら還付税額が生じるところ、簡易課税・3割特例では通常還付税額が生じないと国税庁が注意喚起している。
2つの計算は、どちらも「売上税額に率を掛ける」形
令和8年で2割特例が終わったあと、個人事業者の前には計算方法が複数並びます。国税庁のQ&A問117-3は、申告方法を次のように整理しています。
消費税の申告方法は、仕入控除税額について実額で計算する「一般課税」、業種ごとに決められたみなし仕入率を適用し仕入控除税額を計算する「簡易課税制度」による方法のほか、小規模個人事業者の令和9年及び令和 10 年に含まれる各課税期間については、売上税額の3割を納税額として計算する「3割特例」が設けられています。
3割特例は、納付税額が売上税額の3割になる計算です。裏返すと、控除される部分は売上税額の 7割 にあたります。
簡易課税は、売上税額にみなし仕入率を掛けた額を控除する計算です。率は事業区分ごとに決まっています。
| 事業区分 | みなし仕入率 | 主な事業 |
|---|---|---|
| 第1種事業 | 90% | 卸売業(購入した商品を性質・形状を変更しないで他の事業者に販売) |
| 第2種事業 | 80% | 小売業、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業) |
| 第3種事業 | 70% | 農林漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)、鉱業、建設業、製造業、電気・ガス・熱供給・水道業 |
| 第4種事業 | 60% | 第1・2・3・5・6種以外。飲食店業など |
| 第5種事業 | 50% | 運輸通信業、金融業・保険業、サービス業(飲食店業を除く) |
| 第6種事業 | 40% | 不動産業 |
国税庁は、この比較について問117-3で具体例を挙げています。
ご質問のように、行っている事業が「小売業」に該当する場合、簡易課税制度を適用して申告することで、80%のみなし仕入率が適用されることになりますので、3割特例を適用するよりも、消費税の納付金額が少なくなると考えられます。
質問者は「卸売業者から雑貨を仕入れ、消費者に販売する事業を営んでいる個人事業者」です。事業区分は取引ごとに判定するもので、1つの事業者が複数の区分にまたがることもあります。自社の事業がどの区分に当たるかは、税理士または税務署にご確認ください。
簡易課税には、3割特例には無い条件が付く
同じ「率を掛ける計算」でも、条件が違います。問117-3の注2・注3と特集ページの記載を並べると、次のようになります。
| 3割特例 | 簡易課税制度 | |
|---|---|---|
| 使える期間 | 個人事業者の令和9年・令和10年に含まれる各課税期間 | 期間の限定なし(要件を満たす課税期間) |
| 対象 | 個人事業者のみ | 個人事業者・法人 |
| 売上の要件 | 基準期間の課税売上高が1千万円以下(超えると適用不可) | 基準期間における課税売上高が5,000万円以下 |
| 手続き | 事前の届出は不要。確定申告書にその旨を付記する | 消費税簡易課税制度選択届出書の提出が必要 |
| やめられるか | 課税期間ごとに判断 | 事業を廃止した場合を除き、2年間継続して適用した後でなければやめられない |
2年間の継続適用については、問117-3の注3が正確な言い方を示しています。
適用を開始した課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出することはできません。
「2年経てば自由」ではなく、2年を経過する日の属する課税期間の初日以後という起算です。届出書をいつから提出できるかは、税務署にご確認ください。
届出書は「翌課税期間の申告期限まで」に出せる
簡易課税は、原則として適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに届出書を出す制度です。ところが2割特例・3割特例を使った事業者には例外があります。
また、2割特例や3割特例の適用を受けた事業者については、その適用を受けた課税期間の翌課税期間に係る確定申告期限まで(注1)に、その翌課税期間から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した「消費税簡易課税制度選択届出書」を納税地を所轄する税務署長に提出した場合には、その翌課税期間から、簡易課税制度の適用を受けることができることとされています(注2・3)。
つまり その課税期間が終わって、数字が出てから届出書を出せます。
期限が休日等に当たる場合の扱いも、問117-3の注1に書かれています。翌課税期間に係る確定申告期限が 日曜日・国民の祝日に関する法律に規定する休日その他一般の休日・土曜日・12月29日・30日・31日 に当たる場合は、これらの日の翌日が期限になります。法人の確定申告書の提出期限の特例(消法45の2①)などで提出期限が延長される場合は、その延長後の提出期限です。
| 例 | 届出書の提出期限 | 効果 |
|---|---|---|
| 個人事業者が令和8年分まで2割特例を適用 | 令和9年分の確定申告期限=令和10年3月31日 | 令和9年分から簡易課税を適用できる |
| 個人事業者が令和10年分まで3割特例を適用 | 令和11年分の確定申告期限=令和12年4月1日 | 令和11年分から簡易課税を適用できる |
| 12月決算法人が令和8年12月期まで2割特例を適用 | 令和9年12月期の確定申告期限=令和10年2月29日 | 令和9年12月期から簡易課税を適用できる |
1行目の令和10年3月31日(2028年3月31日)は金曜日で、注1の繰下げは働きません。一方、3行目の期限が3月31日ではなく4月1日になっているのは、令和12年3月31日(2030年3月31日)が日曜日であるためです。注1の繰下げが働いた結果であり、この特例の期限が一律に4月1日という意味ではありません。期限は年ごとに暦で確認してください。
届出書の期限の特例そのものは「[簡易課税の届出は、あとから出せる場合があります](/articles/kani-todokede-kigen-tokurei/)」で詳しく扱っています。
数字が小さいほうを選んでも、還付は消える
問117-3で最も見落としやすいのは、最後の段落です。
なお、多額の設備投資などがあり、課税仕入れ等に係る消費税額が課税売上げに係る消費税額を上回る場合、一般課税であれば還付税額が生じますが、簡易課税制度や3割特例を適用している場合には、通常、還付税額が生じることはありませんので、その点も踏まえ申告方法をご検討ください。
簡易課税も3割特例も、売上税額に率を掛けて控除額を出す計算です。実際にいくら払ったかを積み上げないため、仕入れや設備投資が売上を上回った期でも、控除額は売上税額の一定割合で止まります。
一般課税は実額で計算するため、控除額が売上税額を上回れば還付税額が生じます。大きな設備投資を予定している課税期間は、納付税額の大小だけでは比較が閉じません。国税庁自身がこの点を踏まえて申告方法を検討するよう案内しています。
確認しておきたいこと
- 自社の事業が、簡易課税のどの事業区分に当たるか(取引ごとに複数にまたがることがあります)
- 基準期間における課税売上高が5,000万円以下かどうか
- 令和9年分・令和10年分に、大きな設備投資や修繕の予定があるか
- 届出書を出す場合、その期限の日が休日等に当たっていないか
- 簡易課税を始めた場合、2年間は継続して適用することになる点
試算ツールでは、売上と仕入れの金額を入れて、課税期間ごとの納付税額の見当をつけられます。表示されるのは前提を置いた計算結果であり、申告方法の選択そのものではありません。どの方法で申告するかは、税理士または税務署にご確認ください。
経営者の疑問と、制度の事実
答えるのは制度の事実だけです。有利・不利は事業ごとの事情で変わるため、判断は税理士・税務署にご確認ください。
経営者3割特例は「3割」、簡易課税は「みなし仕入率」。結局どちらの数字を見比べればいいんだ。
制度の事実3割特例は、売上税額の3割を納付税額として計算する経過措置です。したがって控除される部分は売上税額の7割にあたります。簡易課税制度は、売上税額に事業区分ごとのみなし仕入率を乗じた金額を控除する計算です。みなし仕入率は第1種90%、第2種80%、第3種70%、第4種60%、第5種50%、第6種40%と定められています。数字の並びとしては7割と各区分の率を比べる形になりますが、実際にどちらで申告するかの判断は税理士または税務署にご確認ください。
経営者うちは飲食店だ。第4種で60%と聞いている。この場合はどう考えればいい。
制度の事実特集ページの表では、第4種事業のみなし仕入率は60%とされ、飲食店業が第4種の例として挙げられています。3割特例で控除される部分は売上税額の7割にあたりますので、率だけを並べれば60%と70%の比較になります。ただし簡易課税には基準期間の課税売上高5,000万円以下という要件と2年間の継続適用があり、3割特例は令和9年分・令和10年分の2年間に限られるなど、期間や要件も異なります。個別の当てはめは税理士または税務署にご確認ください。
経営者来年、厨房設備を入れ替える予定がある。それでも簡易課税で問題ないか。
制度の事実国税庁のQ&A問117-3は、多額の設備投資などがあり課税仕入れ等に係る消費税額が課税売上げに係る消費税額を上回る場合について、一般課税であれば還付税額が生じるものの、簡易課税制度や3割特例を適用している場合には通常還付税額が生じないと述べ、その点も踏まえて申告方法を検討するよう案内しています。設備投資の時期と課税方式の関係については、税理士または税務署にご相談ください。
よくある質問
- 3割特例と簡易課税は、どこが違うのですか?
- 3割特例は、個人事業者の令和9年・令和10年に含まれる各課税期間について、売上税額の3割を納付税額として計算する経過措置です。簡易課税制度は、消費税簡易課税制度選択届出書を提出した課税事業者が、基準期間における課税売上高が5,000万円以下の課税期間について、売上に係る消費税額に事業区分ごとのみなし仕入率を乗じた金額を仕入れに係る消費税額として控除する制度です。どちらで申告するかの判断は、税理士または税務署にご確認ください。
- 小売業なら簡易課税のほうが納付税額は小さくなるのですか?
- 国税庁のQ&A問117-3は、行っている事業が小売業に該当する場合について「簡易課税制度を適用して申告することで、80%のみなし仕入率が適用されることになりますので、3割特例を適用するよりも、消費税の納付金額が少なくなると考えられます」と記載しています。ただし事業区分は取引ごとに判定するもので、複数の区分にまたがることもあります。自社の事業区分の判定と申告方法の選択は、税理士または税務署にご確認ください。
- 設備投資をした年でも、簡易課税や3割特例で申告してよいのですか?
- 問117-3は「多額の設備投資などがあり、課税仕入れ等に係る消費税額が課税売上げに係る消費税額を上回る場合、一般課税であれば還付税額が生じますが、簡易課税制度や3割特例を適用している場合には、通常、還付税額が生じることはありませんので、その点も踏まえ申告方法をご検討ください」と述べています。設備投資の予定がある課税期間の取扱いは、税理士または税務署にご相談ください。
- 簡易課税は、いったん選ぶと何年やめられないのですか?
- 問117-3の注3は「簡易課税制度の適用を受けている事業者は、事業を廃止した場合を除き、2年間継続して適用した後でなければ、その適用をやめることはできません」とし、括弧書きで、適用を開始した課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ消費税簡易課税制度選択不適用届出書を提出できないと説明しています。自社の場合にいつから提出できるかは、税務署にご確認ください。
個別の判断について
適用の可否や有利・不利は、事業区分・基準期間の課税売上高・過去の届出など個別の事情で変わります。実際の判断の前に、税理士等の専門家、または所轄の税務署にご相談ください。
出典(一次情報)
- 国税庁「インボイス制度に関するQ&A」問117-3 3割特例を適用するよりも簡易課税制度を適用した方が納付税額が少なくなる場合【令和8年4月追加】(PDF原本)確認日 2026-09-20
- 国税庁「インボイス制度に関する令和8年度税制改正について」特集ページ(3割特例・簡易課税への移行・事業区分とみなし仕入率)確認日 2026-09-20
- 国税庁 タックスアンサー No.6505 簡易課税制度確認日 2026-10-08
法令・国税庁・省庁など公的機関の公表資料のみを参照しています(解説記事等の二次情報は使用していません)。