令和8年度税制改正に対応

3割特例の「確定申告書への付記」とは何か(付記がないと適用されません)

最終確認日: (数値は一次情報で照合)

結論から

3割特例は、適用を受けようとする場合に確定申告書にその旨を付記する必要があります。付記がなければ適用を受けられません。対象は個人事業者の令和9年分・令和10年分の消費税申告です。実際の申告書のどこにどう記載するかは、税務署または税理士にご確認ください。

この記事の要点

  • 3割特例の適用を受けようとする場合には、確定申告書にその旨を付記する必要がある。
  • 付記は形式的な手続きではなく、適用の要件のひとつ。付記を欠くと適用を受けられない。
  • 対象は個人事業者のみ。対象は令和9年分・令和10年分の消費税申告。
  • 計算は、課税標準額に対する消費税額から控除する金額をその消費税額に7割を乗じた額とすることで、納付税額がその3割になる。
  • 免税事業者がインボイス発行事業者となったこと等により事業者免税点制度の適用を受けられない課税期間に限られる。
  • 国税庁が示す主な適用要件は3つ。個人事業者であること、基準期間(適用を受ける年の2年前)の課税売上高が1,000万円以下であること、インボイス発行事業者の登録を受けていること。
  • 同じ特集の適用可否フローチャートには、これに加えて特定期間(前年1月〜6月)の課税売上高も1,000万円以下であることが通過条件として書かれている。

3割特例には「付記」という要件がある

3割特例は、個人事業者の令和9年分・令和10年分の消費税申告に使える経過措置です。課税標準額に対する消費税額から控除する金額を、その消費税額に7割を乗じた額とすることで、納付税額がその3割になります。

この特例について、国税庁のリーフレットには次の記載があります。

3割特例の適用を受けようとする場合には、確定申告書にその旨を付記する必要があります。

「付記」とは、確定申告書にその旨を書き添えることです。ここで重要なのは、これが適用の要件のひとつだという点です。売上規模などの条件を満たしていても、申告書への付記がなければ適用を受けられないことになります。

対象になるのは誰か

3割特例の対象は個人事業者です。法人は対象外で、令和9年分以後は2割特例・3割特例のいずれも適用できません。

課税期間個人事業者法人(例:12月決算)
令和8年分(2026)2割特例2割特例
令和9年分(2027)3割特例3割特例・2割特例とも適用不可
令和10年分(2028)3割特例適用不可
令和11年分(2029)以降3割特例適用不可適用不可

あわせて、適用できるのは、免税事業者がインボイス発行事業者となったこと、または課税事業者選択届出書を提出したことにより事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる課税期間に限られます。これは2割特例と同様の要件です。

国税庁が示す「主な適用要件」は3つ

国税庁の令和8年度税制改正特集のページでは、3割特例の主な適用要件として次の3つが挙げられています。

要件内容
事業者の区分個人事業者であること
売上規模基準期間の課税売上高が1,000万円以下であること
登録インボイス発行事業者の登録を受けていること

ここでいう基準期間は、適用を受ける年の2年前です。令和9年分なら令和7年、令和10年分なら令和8年の課税売上高で判定します。

フローチャートには、本文にない要件がもうひとつ書かれています

同じページに置かれている適用可否のフローチャート(特集資料のPDF)では、1,000万円以下であることを求める金額が2つ挙げられています。

判定する期間内容
基準期間2年前の課税売上高が1,000万円以下
特定期間前年1月〜6月の課税売上高が1,000万円以下(課税売上高に代えて、給与等支払額の合計額により判定することもできると記載されています)

上の「主な適用要件」は本文に3つと書かれていますが、フローチャートはこの2つの金額がいずれも1,000万円以下であることを通過条件にしています。2年前だけを見て判断すると、前年前半の分が抜け落ちます。

なお、国税庁のQ&A(問115-2)は、3割特例を適用できない課税期間として「基準期間の課税売上高が1千万円を超える課税期間(消費税法9条1項)」を挙げています。この1,000万円という金額を何で測るかについて、国税庁の通達(消費税法基本通達1-4-5)は、基準期間に免税事業者だった場合は、その期間に受け取った金銭等の全額がその基準期間における課税売上高になる、としています。つまり2年前に免税事業者だったかどうかで、当てはめる金額が変わることになります。ご自身の金額の当てはめは、税理士または税務署にご確認ください。

付記はいつ・どこに書くか

付記をするのは、その年分の消費税の確定申告書です。個人事業者の課税期間は暦年ですので、令和9年分の申告と令和10年分の申告の2回、それぞれの申告書で付記することになります。

記載する欄と書き方は、その年分の申告書の様式によります。申告の時期になったら、様式を確認するか、税務署または税理士にご確認ください。

令和11年分から先の計算

3割特例は令和10年分までです。令和11年分からは、本則課税(仕入れ・経費にかかった消費税を実額で差し引く方式)か簡易課税(事業区分ごとのみなし仕入率で計算する方式)で計算することになります。

2割特例・3割特例の適用を受けた事業者には、簡易課税制度選択届出書の提出期限に特例があります。どの課税期間からどの方式で計算するかについては、試算ツールで年ごとの金額を確認したうえで、税理士または税務署にご相談ください。

経営者の疑問と、制度の事実

答えるのは制度の事実だけです。有利・不利は事業ごとの事情で変わるため、判断は税理士・税務署にご確認ください。

経営者3割特例っていうのは、条件を満たしていれば黙っていても適用されるものじゃないのか。

制度の事実国税庁のリーフレットには、3割特例の適用を受けようとする場合には確定申告書にその旨を付記する必要がある、と記載されています。つまり要件を満たしているかどうかとは別に、申告書での付記が必要になります。ご自身の申告での取扱いは税務署または税理士にご確認ください。

経営者付記というのは、何か別の書類を出すということか。

制度の事実リーフレットの記載は、確定申告書にその旨を付記する、というものです。別の届出書の提出を求める記載はありません。記載する欄と書き方はその年分の申告書の様式によりますので、様式または税務署にご確認ください。

経営者うちは法人だ。同じように付記すれば3割特例が使えるのか。

制度の事実3割特例の対象は個人事業者です。法人は令和9年分以後、3割特例・2割特例のいずれも適用できないとされています。法人の課税期間ごとの計算方法については税理士や税務署にご相談ください。

よくある質問

付記をしないと、3割特例はどうなりますか?
国税庁のリーフレットには、3割特例の適用を受けようとする場合には確定申告書にその旨を付記する必要がある、と記載されています。付記がなければ適用を受けられないことになります。記載方法は税務署にご確認ください。
確定申告書のどこに付記するのですか?
記載する欄と書き方は、その年分の消費税の確定申告書の様式によります。実際の記載位置は、申告する年分の様式を確認するか、税務署または税理士にご確認ください。
法人でも3割特例と付記の対象になりますか?
3割特例の対象は個人事業者です。法人は令和9年分以後、2割特例・3割特例のいずれも適用できません。法人の課税期間ごとの取扱いは税務署にご確認ください。
付記のほかに要件はありますか?
国税庁は3割特例の主な適用要件として、個人事業者であること、基準期間(適用を受ける年の2年前)の課税売上高が1,000万円以下であること、インボイス発行事業者の登録を受けていることの3つを挙げています。同じ特集の適用可否フローチャートには、これに加えて特定期間(前年1月〜6月)の課税売上高も1,000万円以下であることが通過条件として書かれています。あわせて、免税事業者がインボイス発行事業者となったこと、または課税事業者選択届出書を提出したことにより事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる課税期間に限り適用できる、とされています。個別の該当関係は税理士や税務署にご相談ください。
基準期間というのはいつの年ですか?
国税庁の資料では、3割特例の基準期間は適用を受ける年の2年前とされています。令和9年分なら令和7年、令和10年分なら令和8年です。その年の課税売上高が1,000万円以下であることが要件のひとつとされています。ご自身の金額の当てはめは税理士または税務署にご確認ください。
1,000万円は税込みの金額で見るのですか、税抜きで見るのですか?
国税庁のQ&A(問115-2)は、3割特例を適用できない課税期間として、基準期間の課税売上高が1千万円を超える課税期間(消費税法9条1項)を挙げています。この基準期間における課税売上高について、国税庁の通達(消費税法基本通達1-4-5)は、基準期間に免税事業者だった場合は、その期間に受け取った、または受け取るべき金銭等の全額がその基準期間における課税売上高になる、としています。一方、同1-4-2は、基準期間における課税売上高に消費税額等は含まない、としています。2年前に免税事業者だったかどうかで当てはめる金額が変わることになりますので、ご自身の当てはめは税理士または税務署にご確認ください。

個別の判断について

適用の可否や有利・不利は、事業区分・基準期間の課税売上高・過去の届出など個別の事情で変わります。実際の判断の前に、税理士等の専門家、または所轄の税務署にご相談ください。

出典(一次情報)

法令・国税庁・省庁など公的機関の公表資料のみを参照しています(解説記事等の二次情報は使用していません)。

本ページは公表されている制度情報にもとづく解説と試算の補助であり、税務に関する助言ではありません。個別の判断は必ず税理士等の専門家にご確認ください(所轄の税務署でも確認できます)。

当サイトはアフィリエイトプログラムを利用しており、広告を含みます(ページ上部に「PR」と表示しています)。