令和8年度税制改正に対応

2種類以上の事業をやっている場合の簡易課税の計算(75%特例と、区分していない売上げの扱い)

最終確認日: (数値は一次情報で照合)

結論から

簡易課税制度で2種類以上の事業を営む場合、仕入控除税額は事業の種類ごとに消費税額を分け、それぞれにみなし仕入率(第1種90%・第2種80%・第3種70%・第4種60%・第5種50%・第6種40%)を掛けて計算します。これに対して国税庁タックスアンサーNo.6505は2つの特例の計算を挙げています。1つ目は、2種類以上の事業を営む事業者で1種類の事業の課税売上高が全体の課税売上高の75パーセント以上を占める場合に、その事業のみなし仕入率を全体の課税売上げに対して適用できるというものです。2つ目は、3種類以上の事業を営む事業者で特定の2種類の事業の課税売上高の合計額が全体の75パーセント以上を占める場合に、その2業種のうちみなし仕入率の高い方の事業に係る課税売上高にはその率を適用し、それ以外の課税売上高にはその2種類のうち低い方の率を適用できるというものです。消費税法施行令57条3項は、この75パーセントの判定を、課税資産の譲渡等の対価の額の合計額から売上げに係る税抜対価の返還等の金額の合計額を控除した残額の割合で行うと定めています。また2種類以上の事業を営む事業者が課税売上げを事業ごとに区分していない場合、その区分していない部分には、区分していない事業のうち一番低いみなし仕入率が適用されます。自社の売上げをどう区分するか、どの計算方法を使うかについては、税理士または税務署にご確認ください。

この記事の要点

  • 2種類以上の事業を営む場合、簡易課税の仕入控除税額は事業の種類ごとに消費税額を分けて計算するのが基本。
  • 1種類の事業の課税売上高が全体の75%以上なら、その事業のみなし仕入率を全体に適用できる(75%特例・1業種版)。
  • 3種類以上の事業で特定の2種類の合計が75%以上なら、高い方の率をその事業に、低い方の率をそれ以外の課税売上げに適用できる(2業種版)。
  • 75%の判定に使うのは、課税資産の譲渡等の対価の額から売上げに係る税抜対価の返還等の金額を控除した残額(消費税法施行令57条3項)。
  • みなし仕入率を掛ける相手は課税売上高ではなく消費税額であり、判定と計算で見ている金額が違う。
  • 簡便法は、貸倒回収額がある場合と、売上対価の返還等を各種事業の消費税額から控除しきれない場合には使えない。
  • 事業ごとに区分していない売上げは、消費税法施行令57条4項によって低い方の事業に係るものとして扱われる。

まず、事業が1種類のときの形を確認する

簡易課税制度は、売上げに係る消費税額にみなし仕入率を掛けて、仕入れに係る消費税額を求める制度です。

事業が1種類だけなら、形は単純です。国税庁 タックスアンサー No.6505 が示している算式は次のとおりです。

仕入控除税額 =(課税標準額に対する消費税額 − 売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額)× みなし仕入率

みなし仕入率は6つです。第1種事業90%・第2種事業80%・第3種事業70%・第4種事業60%・第5種事業50%・第6種事業40%。

ここで注意したい点が1つあります。掛ける相手は売上高ではなく、消費税額です。この点は最後まで変わりません。

2種類以上あると、事業ごとに分けて計算する

問題は、1つの会社が複数の事業をやっている場合です。実際には珍しくありません。製造もするし、仕入れた商品もそのまま売る、といった形です。

No.6505 の原則法の算式は、次の形をしています。

仕入控除税額 =(課税標準額に対する消費税額 − 売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額)×〔(第1種事業に係る消費税額×90% + 第2種事業に係る消費税額×80% + 第3種事業に係る消費税額×70% + 第4種事業に係る消費税額×60% + 第5種事業に係る消費税額×50% + 第6種事業に係る消費税額×40%)÷(第1種事業に係る消費税額 + 第2種事業に係る消費税額 + 第3種事業に係る消費税額 + 第4種事業に係る消費税額 + 第5種事業に係る消費税額 + 第6種事業に係る消費税額)〕

長い式ですが、やっていることは1つです。6区分それぞれの消費税額に、それぞれのみなし仕入率を掛けて足し、全体の消費税額で割る。その割合を、全体の消費税額に掛けています。

消費税法施行令57条2項も同じ形で書かれています。

事業者の営む事業が前項各号に掲げる事業又は第四種事業のうち二以上の事業である場合には、法第三十七条第一項第一号に規定する政令で定める率は、次の各号に規定する残額の合計額(次項において「売上げに係る消費税額」という。)のうちに当該各号に掲げる金額の合計額の占める割合とする。

条文は「率」を定めています。事業が2種類以上あるときは、みなし仕入率そのものが、6区分の消費税額の構成比で決まるという構造です。

簡便法は、割って掛ける手間を省いた形

No.6505 は、原則法のほかに簡便法の算式を挙げています。

仕入控除税額 = 第1種事業に係る消費税額×90% + 第2種事業に係る消費税額×80% + 第3種事業に係る消費税額×70% + 第4種事業に係る消費税額×60% + 第5種事業に係る消費税額×50% + 第6種事業に係る消費税額×40%

原則法の分子だけを取り出した形です。割って掛ける部分が消えています。

ただし、誰でもこの形を使えるわけではありません。No.6505 は次のように条件を付けています。

次のAおよびBのいずれにも該当しない場合は、次の算式により計算しても差し支えありません。 A 貸倒回収額がある場合 B 売上対価の返還等がある場合で、各種事業に係る消費税額からそれぞれの事業の売上対価の返還等に係る消費税額を控除して控除しきれない場合

B は「返品や値引きがあること」ではありません。それを各事業の消費税額から引いて、引ききれない場合です。ある事業の返品額が、その事業の売上げより大きくなったような場合が該当します。

75%特例(1業種版)

ここからが特例です。No.6505 の記載は次のとおりです。

2種類以上の事業を営む事業者で、1種類の事業の課税売上高が全体の課税売上高の75パーセント以上を占める場合には、その事業のみなし仕入率を全体の課税売上げに対して適用することができます。

主力の事業が75%以上を占めるなら、その1つの率で全体を計算してよい、という定めです。

消費税法施行令57条3項1号は、その1つの事業を「特定一事業」と呼び、6区分それぞれについて適用できる率(90%・80%・70%・60%・50%・40%)を並べています。特定の業種に限った特例ではありません。

条文の末尾は「することができる」です。原則の計算に代えて使える形として書かれています。

75%特例(2業種版)

3種類以上ある場合には、もう1つの形があります。

3種類以上の事業を営む事業者で、特定の2種類の事業の課税売上高の合計額が全体の課税売上高の75パーセント以上を占める事業者については、その2業種のうちみなし仕入率の高い方の事業に係る課税売上高については、そのみなし仕入率を適用し、それ以外の課税売上高については、その2種類の事業のうち低い方のみなし仕入率をその事業以外の課税売上げに対して適用することができます。

読み飛ばしやすい箇所が1つあります。低い方の率が当たるのは、2業種のうちの残り1つではありません。「その事業以外の課税売上げ」、つまり高い方の事業を除いたすべてです。75%に入らなかった3つ目・4つ目の事業も、そこに含まれます。

条文でも同じです。消費税法施行令57条3項2号イは、第1種事業とそれ以外の事業が特定二事業である場合について、次のように書いています。

売上げに係る消費税額から第一種事業に係る消費税額を控除した金額に次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める割合を乗じて計算した金額

「売上げに係る消費税額 から 第1種事業に係る消費税額を控除した金額」です。第2種事業に係る消費税額、ではありません。

No.6505 が例として挙げている、第1種事業と第2種事業の合計が75%以上の場合の簡便法の算式は次の形です。

仕入控除税額 = 第1種事業に係る消費税額×90% +(売上げに係る消費税額 − 第1種事業に係る消費税額)×80%

75%の判定に使う金額は、税額ではない

ここが混ざりやすいところです。判定と計算で、見ている金額が違います。

消費税法施行令57条3項1号は、判定に使う「課税売上高」を次のように定義しています。

当該課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等(中略)の対価の額の合計額から当該課税期間中に行つた売上げに係る税抜対価の返還等の金額の合計額を控除した残額

対価の額、つまり税抜の売上高です。そこから返品・値引きの金額(税抜)を引いた後の残額で割合を出します。

一方、みなし仕入率を掛ける相手は消費税額でした。

何を使うか根拠
75%以上かどうかの判定課税資産の譲渡等の対価の額(税抜)− 売上げに係る税抜対価の返還等の金額消費税法施行令57条3項
みなし仕入率を掛ける相手各種事業に係る課税資産の譲渡等に係る消費税額 − 売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額消費税法施行令57条2項

税率が1つだけなら、売上高の構成比と消費税額の構成比はほぼ同じ動きをします。しかし軽減税率8%の売上げと標準税率10%の売上げが混ざっている場合は、この2つはずれます。飲食料品を扱う事業者では起こり得ます。

なお、「売上げに係る税抜対価の返還等の金額」も条文に定義があります。消費税法施行令57条5項7号です。

法第三十八条第一項に規定する売上げに係る対価の返還等の金額から同項に規定する売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額に七十八分の百を乗じて算出した金額を控除した金額

区分していない売上げは「一番低い率」で終わらない

No.6505 は、事業ごとに区分していない場合の取扱いを次のように書いています。

2種類以上の事業を営む事業者が課税売上げを事業ごとに区分していない場合には、この区分をしていない部分については、その区分していない事業のうち一番低いみなし仕入率を適用して仕入控除税額を計算します。

条文の書き方は、これより一段手前にあります。消費税法施行令57条4項は、5つの号に分けて次のように定めています。

号区分していない事業の組み合わせ条文が定める扱い結果として当たる率
1号第1種と第2種第2種事業に係るものとする80%
2号第1種または第2種と第3種第3種事業に係るものとする70%
3号第1種・第2種・第3種と第4種第4種事業に係るものとする60%
4号第1種・第2種・第3種・第4種と第5種第5種事業に係るものとする50%
5号第6種と第6種以外第6種事業に係るものとする40%

条文は「その事業に係るものとする」と書いています。率を差し替えるのではなく、その売上げがどの事業のものとして数えられるかを決めています。

数えられる事業が変わるということは、75%の判定に使う分子・分母も変わるということです。区分をしていない売上げは、低い方の事業の課税売上高として集計されることになります。

帳簿での区分は、率だけの問題ではありません。

数字を当てはめてみる

条文の形が見えにくいので、数字を置いてみます。以下は制度の形を確認するための計算例です。実際の申告での取扱いは、税理士または税務署にご確認ください。

課税期間中の課税売上高(税抜)が、第1種事業800万円・第2種事業150万円・第5種事業50万円、合計1,000万円だったとします。返品・値引きはなく、税率は10%のみとします。

  • 第1種事業の割合は 800万円 ÷ 1,000万円 = 80% です。75%以上なので、1業種版の特例の記載に当てはまります。
  • このとき、全体の課税売上げに第1種事業のみなし仕入率 90% を適用する計算ができます。
  • 原則法で計算した場合の率は、消費税額の構成比が売上高の構成比と同じであれば、(800×90% + 150×80% + 50×50%)÷ 1,000 = 86.5% です。

この2つは同じ数字にはなりません。どちらの計算方法を用いるかは、条文上「することができる」と書かれた選択の形になっています。当てはめと選択については、税理士または税務署にご確認ください。

この記事の一次情報

  • 国税庁 タックスアンサー No.6505「簡易課税制度」[令和7年4月1日現在法令等](2026年8月27日に再取得。みなし仕入率6区分、原則法・簡便法の算式、特例の計算イ・ロ、事業区分をしていない場合の取扱いのいずれも変更がないことを確認しました)
  • 国税庁 タックスアンサー No.6509「簡易課税制度の事業区分」[令和7年4月1日現在法令等](同日に再取得。事業区分の表に変更がないことを確認しました)
  • e-Gov法令検索 消費税法施行令 第57条(2026年5月22日施行版の原文を取得)
  • e-Gov法令検索 消費税法 第37条第1項(2026年4月1日施行版の原文を取得)

この記事は制度の内容を一般的に説明したものであり、個別の事案についての税務相談ではありません。自社の事業区分の判定、割合の計算、計算方法の選択については、税理士または税務署にご確認ください。

経営者の疑問と、制度の事実

答えるのは制度の事実だけです。有利・不利は事業ごとの事情で変わるため、判断は税理士・税務署にご確認ください。

経営者うちは店売りと卸の両方をやっている。第2種と第1種だ。まとめて90%で計算できたら楽なんだが。

制度の事実国税庁タックスアンサーNo.6505は、2種類以上の事業を営む事業者で1種類の事業の課税売上高が全体の課税売上高の75パーセント以上を占める場合に、その事業のみなし仕入率を全体の課税売上げに対して適用することができる、と記載しています。この特例は事業の種類を限定していませんので、第1種事業(卸売業・みなし仕入率90%)の課税売上高が全体の75パーセント以上であれば、この記載の対象になります。ただし75パーセントの判定は消費税法施行令57条3項1号により、課税資産の譲渡等の対価の額の合計額から売上げに係る税抜対価の返還等の金額の合計額を控除した残額の割合で行います。また同令57条4項は、卸売と小売の区分をしていない課税資産の譲渡等は第2種事業に係るものとする、と定めています。自社の割合がどうなるか、区分の記録が足りているかについては、税理士または税務署にご確認ください。

経営者売上高の割合で75%を判定するのに、税額の計算では消費税額を使うのか。同じ数字を使わないのはなぜだ。

制度の事実条文の書き方がそうなっています。消費税法施行令57条3項は、75パーセントの判定を「課税資産の譲渡等の対価の額の合計額から売上げに係る税抜対価の返還等の金額の合計額を控除した残額」の割合で行うと定めています。一方で同令57条2項は、みなし仕入率にあたる「政令で定める率」を、各種事業に係る課税資産の譲渡等に係る消費税額の合計額から売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額の合計額を控除した残額を使って定めています。前者は税抜の売上高、後者は消費税額です。軽減税率の対象となる売上げがある場合など、売上高の構成比と消費税額の構成比は一致しないことがあります。自社の数字での判定と計算については、税理士または税務署にご確認ください。

経営者返品や値引きが多い商売だ。それでも簡便法で計算してよいのか。

制度の事実No.6505は、簡便法について、A 貸倒回収額がある場合、B 売上対価の返還等がある場合で、各種事業に係る消費税額からそれぞれの事業の売上対価の返還等に係る消費税額を控除して控除しきれない場合、のいずれにも該当しない場合は簡便法の算式で計算して差し支えない、としています。したがって売上対価の返還等があること自体ではなく、それを各種事業に係る消費税額から控除して控除しきれるかどうかが分かれ目として書かれています。自社の数字がどちらに当たるかは、税理士または税務署にご確認ください。

よくある質問

2種類の事業をやっています。売上の多い方の率でまとめて計算してよいのですか?
国税庁タックスアンサーNo.6505は、2種類以上の事業を営む事業者で1種類の事業の課税売上高が全体の課税売上高の75パーセント以上を占める場合には、その事業のみなし仕入率を全体の課税売上げに対して適用することができる、と記載しています。75パーセントに満たない場合について、この特例の記載はありません。自社の割合の計算と当てはめについては、税理士または税務署にご確認ください。
75%の判定は、税込の売上で見るのですか、税抜で見るのですか?
消費税法施行令57条3項1号は、判定に使う「課税売上高」を、その課税期間中に国内において行った課税資産の譲渡等の対価の額の合計額から、その課税期間中に行った売上げに係る税抜対価の返還等の金額の合計額を控除した残額と定義しています。消費税法でいう「対価の額」は消費税額に相当する額を含まない金額です。したがって判定は税抜の金額で、しかも返品や値引きを差し引いた後の金額で行うことになります。自社の集計方法については、税理士または税務署にご確認ください。
3種類の事業がある場合、2業種の特例では残りの1業種にどの率が当たるのですか?
No.6505は、その2業種のうちみなし仕入率の高い方の事業に係る課税売上高についてはそのみなし仕入率を適用し、それ以外の課税売上高については、その2種類の事業のうち低い方のみなし仕入率をその事業以外の課税売上げに対して適用することができる、と記載しています。消費税法施行令57条3項2号も、売上げに係る消費税額から高い方の事業に係る消費税額を控除した金額に低い方の率を乗じる形で書かれています。つまり低い方の率が当たるのは残りの1業種だけではなく、高い方の事業以外のすべてです。実際の当てはめは税理士または税務署にご確認ください。
簡便法という計算方法があると聞きました。誰でも使えるのですか?
No.6505は、簡便法について「次のAおよびBのいずれにも該当しない場合は、次の算式により計算しても差し支えありません」としたうえで、A 貸倒回収額がある場合、B 売上対価の返還等がある場合で、各種事業に係る消費税額からそれぞれの事業の売上対価の返還等に係る消費税額を控除して控除しきれない場合、の2つを挙げています。この2つのいずれかに当たる場合について、簡便法によって差し支えないという記載はありません。自社がこれに当たるかどうかは、税理士または税務署にご確認ください。
売上を事業ごとに分けて記録していない場合はどうなりますか?
No.6505は、2種類以上の事業を営む事業者が課税売上げを事業ごとに区分していない場合には、この区分をしていない部分については、その区分していない事業のうち一番低いみなし仕入率を適用して仕入控除税額を計算する、と記載しています。消費税法施行令57条4項は、これを率の話としてではなく、区分をしていない課税資産の譲渡等をどの事業に係るものとするかという形で5つの号に分けて定めています。帳簿での区分の方法については、税理士または税務署にご相談ください。

個別の判断について

適用の可否や有利・不利は、事業区分・基準期間の課税売上高・過去の届出など個別の事情で変わります。実際の判断の前に、税理士等の専門家、または所轄の税務署にご相談ください。

出典(一次情報)

法令・国税庁・省庁など公的機関の公表資料のみを参照しています(解説記事等の二次情報は使用していません)。

本ページは公表されている制度情報にもとづく解説と試算の補助であり、税務に関する助言ではありません。個別の判断は必ず税理士等の専門家にご確認ください(所轄の税務署でも確認できます)。

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