令和8年度税制改正に対応

課税事業者選択届出書と、2割特例・簡易課税の関係

最終確認日: (数値は一次情報で照合)

結論から

国税庁のインボイス制度Q&A問115では、2割特例は「免税事業者(『課税選択届出書』の提出により課税事業者となった免税事業者を含みます)」がインボイス発行事業者となる場合に適用できるとされています。つまり課税事業者選択届出書を出していても、2割特例の対象から外れるわけではありません。ただし、課税事業者となった後2年以内に一般課税で調整対象固定資産(税抜100万円以上)の仕入れ等を行った場合には、2割特例を適用できない課税期間が生じます。自社の当てはめは税理士または税務署にご確認ください。

この記事の要点

  • 消費税課税事業者選択届出書の提出期限は、選択しようとする課税期間の初日の前日まで。期限が日曜日や国民の休日等でも翌平日に延長されない。
  • 事業を開始した日の属する課税期間から選択する場合は、その課税期間の終了の日までに提出すればよい。
  • 一度選択すると、事業を廃止した場合を除き、原則として課税事業者となった日から2年間は免税事業者に戻れない。
  • インボイス発行事業者の登録を受けている場合は、選択届出書がなくても納税義務は免除されない。
  • 2割特例は、課税事業者選択届出書の提出により課税事業者となった免税事業者も対象に含むとされている。
  • 課税事業者となった後2年以内に一般課税で調整対象固定資産(税抜100万円以上)を取得すると、2割特例が使えない課税期間が生じ、簡易課税制度選択届出書も一定期間提出できない。
  • その制限期間は、仕入れ等の日の属する課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間の初日までとされている(消費税法第37条第3項第1号、簡易課税制度選択届出書の記載要領)。きっかけを判定する「2年」とは別の年数。

課税事業者になる道は2つある

消費税を納める側になる経路は、大きく2つあります。

経路内容
課税事業者選択届出書を提出する免税事業者が課税事業者になることを選択するときに提出する(タックスアンサーNo.6629)
インボイス発行事業者の登録を受ける登録を受けている場合、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも納税義務は免除されない(タックスアンサーNo.6501)

インボイス登録をきっかけに課税事業者になった方は、後者に当たります。この2つは似ていますが、後で見るとおり2割特例の扱いで差が出る場面があります。

提出期限と、2年間の縛り

タックスアンサーNo.6629では、消費税課税事業者選択届出書の提出期限等は次のとおりとされています。

選択しようとする課税期間の初日の前日まで

ここで押さえておきたい点が2つあります。

1つめ。期限は延びません。同じ資料の注記に、提出期限等が課税期間の初日の前日等までとされている届出書については、その日が日曜日等の国民の休日等に当たる場合であっても、その日までに提出がなければ規定の適用を受けることができないと明記されています。タックスアンサーNo.6501でも「翌日等の平日に提出期限は延長されません」とされています。

2つめ。開業した年は例外があります。事業を開始した日の属する課税期間から選択する場合は、その課税期間の終了の日までに提出すれば、その課税期間から選択できるとされています。

そして、いったん選択すると簡単には戻れません。タックスアンサーNo.6501には次のように示されています。

消費税課税事業者選択届出書を提出した事業者は、事業を廃止した場合を除き、原則として、課税事業者となった日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、消費税課税事業者選択不適用届出書を提出することができません

起算点は届出書を出した日ではなく、課税事業者となった日です。

2割特例は「課税事業者選択」をしていても対象になる

インボイス制度Q&A問115の本文は、次のように始まります。

2割特例は、適格請求書発行事業者の令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間において、免税事業者(「課税選択届出書」の提出により課税事業者となった免税事業者を含みます。)が適格請求書発行事業者となる場合に適用することができます

括弧の中に「課税選択届出書の提出により課税事業者となった免税事業者を含みます」と明記されています。課税事業者選択届出書を出していることそのものが、2割特例を妨げるわけではありません。

ただし調整対象固定資産を取得すると止まる

問115は、2割特例を適用できない課税期間を①から⑩まで挙げています。このうち課税事業者選択届出書に直接関わるのが⑥です。

「課税選択届出書」を提出して課税事業者となった後2年以内に一般課税で調整対象固定資産の仕入れ等を行った場合において、「消費税課税事業者選択不適用届出書」の提出ができないことにより事業者免税点制度の適用が制限される課税期間

条件を分解すると次の3つが重なった場合です。

#条件
1課税事業者選択届出書を提出して課税事業者となっている
2課税事業者となった後2年以内である
3その期間中に一般課税調整対象固定資産(税抜100万円以上の棚卸資産以外の資産)の仕入れ等を行った

問115の注記には重要な補足があります。

免税事業者に係る登録の経過措置(28年改正法附則44④)の適用を受けて適格請求書発行事業者となった者は、「課税選択届出書」の提出をして課税事業者となっていませんので、これに該当することはありません

つまり、インボイス登録の経過措置で課税事業者になった方は、⑥には当たらないとされています。冒頭で「2つの経路で差が出る」と書いたのはこの点です。

簡易課税の届出にも制限がかかる

国税庁の「消費税簡易課税制度選択届出書の記載要領等」には、次のように示されています。

課税事業者を選択することにより課税事業者となった日から2年を経過する日までの間に開始した各課税期間中又は法第12条の2第1項に規定する新設法人若しくは法第12条の3第1項の特定新規設立法人が基準期間のない事業年度に含まれる各課税期間中に調整対象固定資産の課税仕入れ等を行った場合は、その仕入れ等の日の属する課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければこの届出書を提出することはできません(法37③一、二)。

ここで2年と3年は、別のものを指しています

年数何を指すか
2年制限のきっかけになる期間。課税事業者となった日から2年を経過する日までの間に開始した課税期間に、調整対象固定資産の仕入れ等をしたかどうか
3年きっかけが生じた後の制限期間。仕入れ等の日の属する課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、届出書を提出できない

免税事業者に戻れない期間についても、消費税法第9条第7項は「調整対象固定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ」と定めています。つまり、免税に戻れない期間と、簡易課税を選べない期間は、いずれも同じ3年として組み立てられています。

⚠️ タックスアンサーNo.6501(令和7年4月1日現在法令等)の同じ趣旨の文では、簡易課税制度選択届出書の側だけが「2年間」と示されています。上記の記載要領および消費税法第37条第3項第1号の条文とは年数が一致しません。自社の課税期間への当てはめは、税理士または税務署にご確認ください。

なお、上記の期間中にすでに簡易課税制度選択届出書を提出していた場合、その提出はなかったものとみなされると、同じ記載要領に示されています(法37④)。先に提出しておくという対応はとれない形になっています。

タックスアンサーNo.6629の注記でも、課税事業者選択届出書を提出して課税事業者となっている場合には、一定期間「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出できない場合があるとされています。

簡易課税の届出期限には特例がある

令和8年度税制改正で、簡易課税への移行に関する措置が設けられました。国税庁の令和8年度税制改正特集には、次のように示されています。

2割特例・3割特例の適用を受けた翌課税期間に簡易課税制度の適用を受けようとする場合は、その適用を受けようとする課税期間の申告期限までに届出書を提出することで、その課税期間から簡易課税制度の適用を受けることが可能です

原則は「適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで」です。この特例は、その原則に対する例外にあたります。ただし、同ページには2つの注記が付いています。

注記内容
※12割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間が、令和8年9月30日以前に終了する課税期間である場合は、その課税期間の末日までとなる
※2確定申告書の提出期限の特例の適用を受ける法人等は、その特例により延長された期限が届出書の提出期限となる

なお、同ページには簡易課税制度について「選択したら原則として2年間は継続適用する必要があります」とも示されています。

確認しておきたいこと

  • 自社が課税事業者になった経路(課税事業者選択届出書か、インボイス登録か)
  • 課税事業者となった日から2年以内に、税抜100万円以上の設備等を取得する予定があるか
  • 取得する場合、その課税期間の申告を一般課税で行うのか
  • 2割特例の適用を受けた翌課税期間の申告期限がいつか

課税期間ごとの税額の見当は試算ツールでつけられます。届出の要否・提出期限・設備投資との関係については、税理士または税務署にご相談ください。

経営者の疑問と、制度の事実

答えるのは制度の事実だけです。有利・不利は事業ごとの事情で変わるため、判断は税理士・税務署にご確認ください。

経営者インボイスの登録はしている。それとは別に課税事業者選択届出書というのも出すのか。

制度の事実国税庁のタックスアンサーNo.6501では、適格請求書発行事業者の登録を受けている場合には、基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても納税義務は免除されないとされています。課税事業者選択届出書は、免税事業者が課税事業者になることを選択しようとするときに提出する届出書として、タックスアンサーNo.6629に掲げられています。自社にとってどの届出が必要かは、税理士または税務署にご確認ください。

経営者設備を買う予定がある。届出との関係で気をつける点はあるか。

制度の事実国税庁のインボイス制度Q&A問115では、2割特例を適用できない課税期間の一つとして、「課税選択届出書」を提出して課税事業者となった後2年以内に一般課税で調整対象固定資産の仕入れ等を行った場合において、消費税課税事業者選択不適用届出書の提出ができないことにより事業者免税点制度の適用が制限される課税期間が挙げられています。調整対象固定資産は税抜100万円以上の棚卸資産以外の資産とされています。設備投資の時期と届出の関係については、税理士または税務署にご相談ください。

経営者2割特例が終わったあと、簡易課税に移るには期限前に届出が要るのか。

制度の事実国税庁の令和8年度税制改正特集では、簡易課税制度の適用を受けるには原則として適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに届出書の提出が必要とされています。その上で、2割特例・3割特例の適用を受けた翌課税期間に簡易課税制度の適用を受けようとする場合は、その適用を受けようとする課税期間の申告期限までに届出書を提出することで、その課税期間から適用を受けることが可能とされています。自社の期限日は税理士または税務署にご確認ください。

よくある質問

課税事業者選択届出書はいつまでに出すのですか。
国税庁のタックスアンサーNo.6629では、消費税課税事業者選択届出書の提出期限等は「選択しようとする課税期間の初日の前日まで」とされています。また、その日が日曜日等の国民の休日等に当たる場合であっても、その日までに提出がなければ規定の適用を受けられないとされています。
開業した年から課税事業者になることはできますか。
国税庁のタックスアンサーNo.6629の注記では、事業を開始した日の属する課税期間から消費税課税事業者選択届出書に係る制度を選択する場合は、その事業を開始した日の属する課税期間の終了の日までに提出すれば、その課税期間から選択することができるとされています。
インボイス登録をしています。課税事業者選択届出書も出す必要がありますか。
国税庁のタックスアンサーNo.6501では、適格請求書発行事業者の登録を受けている場合には、基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても納税義務は免除されないとされています。自社の届出の要否は税理士または税務署にご確認ください。
課税事業者選択届出書を出していると2割特例は使えないのですか。
国税庁のインボイス制度Q&A問115では、2割特例は「免税事業者(『課税選択届出書』の提出により課税事業者となった免税事業者を含みます)」が適格請求書発行事業者となる場合に適用できるとされています。ただし問115には、適用できない課税期間が①から⑩まで挙げられています。
調整対象固定資産とは何ですか。
国税庁のインボイス制度Q&A問115の注記では、調整対象固定資産とは「一の取引単位につき、課税仕入れ等に係る支払対価の額(税抜き)が100万円以上の棚卸資産以外の資産」とされています。タックスアンサーNo.6501では、建物およびその附属設備、構築物、機械および装置、船舶、航空機、車両および運搬具、工具、器具および備品、鉱業権その他の資産が挙げられています。
調整対象固定資産を取得した場合、簡易課税制度選択届出書を出せない期間は2年ですか、3年ですか。
消費税法第37条第3項第1号は「調整対象固定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の初日から同日以後3年を経過する日の属する課税期間の初日の前日までの期間」と定めており、国税庁の「消費税簡易課税制度選択届出書の記載要領等」も同じく3年としています。この規定で出てくる「2年」は、制限のきっかけを判定する期間(課税事業者となった日から2年を経過する日までの間に開始した各課税期間)を指すもので、制限期間そのものではありません。なお、タックスアンサーNo.6501では簡易課税制度選択届出書の側だけが「2年間」と示されており、条文および記載要領とは年数が一致していません。自社の当てはめは税理士または税務署にご確認ください。
制限期間に入る前に、先に簡易課税制度選択届出書を出しておくことはできますか。
国税庁の「消費税簡易課税制度選択届出書の記載要領等」では、この届出書を提出した後に同一の課税期間に制限の対象となる場合に該当することとなったときは、既に提出した届出書は「その提出がなかったものとみなされます」(法37④)とされています。

個別の判断について

適用の可否や有利・不利は、事業区分・基準期間の課税売上高・過去の届出など個別の事情で変わります。実際の判断の前に、税理士等の専門家、または所轄の税務署にご相談ください。

出典(一次情報)

法令・国税庁・省庁など公的機関の公表資料のみを参照しています(解説記事等の二次情報は使用していません)。

本ページは公表されている制度情報にもとづく解説と試算の補助であり、税務に関する助言ではありません。個別の判断は必ず税理士等の専門家にご確認ください(所轄の税務署でも確認できます)。

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