基準期間と特定期間とは何か(消費税の課税事業者になるかの判定)
最終確認日: (数値は一次情報で照合)
基準期間とは、個人事業者の場合はその年の前々年、法人の場合は前々事業年度(前々事業年度が1年未満の場合には、事業年度開始の日の2年前の日の前日から同日以後1年を経過する日までの間に開始した各事業年度を合わせた期間)をいいます。特定期間とは、個人事業者の場合はその年の前年1月1日から6月30日までの期間、法人の場合は原則としてその事業年度の前事業年度開始の日以後6か月の期間をいいます。基準期間における課税売上高が1,000万円以下であれば原則として納税義務は免除されますが、特定期間における課税売上高が1,000万円を超える場合には免除されません。なお国外事業者以外の事業者は、特定期間の1,000万円の判定を、課税売上高に代えて特定期間中に支払った給与等の金額の合計額により行うこともでき、いずれの基準で判定するかは納税者の任意です。適格請求書発行事業者は、基準期間における課税売上高にかかわらず納税義務は免除されません。自社の判定は、税理士または税務署にご確認ください。
この記事の要点
- 基準期間は、個人事業者はその年の前々年、法人は原則として前々事業年度。
- 特定期間は、個人事業者はその年の前年1月1日から6月30日まで、法人は原則として前事業年度開始の日以後6か月の期間。
- 基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えると納税義務は免除されない。
- 特定期間の1,000万円判定は、課税売上高に代えて給与等支払額の合計額で行うこともでき、どちらで判定するかは納税者の任意(国外事業者を除く)。
- 基準期間に免税事業者だった場合、その売上げには消費税が含まれていないため、収受した金銭等の全額がそのまま基準期間の課税売上高になる(消費税法基本通達1-4-5)。
- 個人事業者は、基準期間の中途で開業・廃業して1年に満たなくても年換算しない(同1-4-9)。特定期間も6か月分に換算しない。
- 適格請求書発行事業者は、基準期間における課税売上高にかかわらず納税義務は免除されない。
2つの期間は、見る年が違う
消費税で「課税事業者になるかどうか」を判定するとき、国税庁は2つの期間を使います。基準期間と特定期間です。名前が似ていますが、見る年が違います。
| 個人事業者 | 法人 | |
|---|---|---|
| 基準期間 | その年の前々年 | 原則として前々事業年度 |
| 特定期間 | その年の前年1月1日〜6月30日 | 原則として前事業年度開始の日以後6か月の期間 |
No.6501 は、基準期間について次のように定めています。
事業者は、国内において行った課税資産の譲渡等について消費税を納める義務がありますが、その課税期間の基準期間(個人事業者の場合はその年の前々年、事業年度が1年である法人の場合はその事業年度の前々事業年度)における課税売上高が1,000万円以下である場合には、原則として、納税義務が免除されます。
法人で前々事業年度が1年未満の場合は、No.6531 が別の定め方を示しています。事業年度開始の日の2年前の日の前日から、同日以後1年を経過する日までの間に開始した各事業年度を合わせた期間が基準期間になります。
順番は「基準期間 → 特定期間」
No.6501 は、基準期間で1,000万円以下だった場合の続きを書いています。
特定期間における課税売上高が1,000万円を超える場合には、基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、納税義務は免除されません。
つまり 基準期間で1,000万円以下でも、そこで終わりではありません。特定期間をもう一度見ます。
質疑応答事例「特定期間の課税売上高による免税事業者の判定」は、3月決算法人の具体例を示しています。前期の課税売上高が1,000万円以下でも、当期の中間決算における課税売上高が1,000万円を超えることとなったときは、特定期間(当期の4月1日〜9月30日)の課税売上高が1,000万円を超えた場合に該当するため、来期は課税事業者になる、という内容です。
特定期間の売上は、その期の途中で見えます。決算を締める前に、翌々期ではなく翌期の扱いが決まります。
特定期間は「給与等支払額」で代えられる
No.6501 には、判定の方法を選べることが明記されています。
なお、特定期間における1,000万円の判定は、課税売上高に代えて、給与等支払額の合計額により判定することができます。いずれの基準で判定するかは納税者の任意です。
質疑応答事例「特定期間の課税売上高による免税事業者の判定」は、もう少し踏み込んだ書き方をしています。国外事業者以外の事業者は、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えていても、給与等支払額が1,000万円を超えていなければ、給与等支払額により免税事業者と判定することができる、という内容です。
その給与等支払額の範囲は、質疑応答事例「特定期間の給与等支払額の範囲」が示しています。
| 内容 | |
|---|---|
| 該当する | 所得税の課税対象とされる給与、賞与等(所得税法施行規則第100条第1項第1号に規定する給与等の金額) |
| 該当しない | 所得税が非課税とされる通勤手当、旅費等 |
| 該当しない | 未払額(支払ったものが対象) |
| 該当しない | 出向先事業者が支払う給与負担金(出向元事業者が給与を支払い支払明細書を交付する場合は、出向元事業者の給与支払額になる) |
なお No.6501 は、令和6年10月1日以後に開始する課税期間から、国外事業者(所得税法に規定する非居住者である個人事業者および法人税法に規定する外国法人)については、特定期間における1,000万円の判定を給与等支払額の合計額により行うことはできないと記載しています。
免税事業者だった基準期間は、受け取った金額の全額で見る
ここが最も間違いやすい箇所です。質疑応答事例「基準期間において免税事業者であった者の課税売上高の判定」の回答を引用します。
基準期間となる課税期間において免税事業者となっていたことから、その売上げには消費税は含まれていないこととなります(法9)。したがって、基準期間となる課税期間の課税資産の譲渡等の対価の額、すなわち、その課税売上金額がそのまま基準期間の課税売上高となることになります(基通1-4-5)。
消費税法基本通達1-4-5 も同じ内容を定めており、免税事業者であった基準期間中に行った課税資産の譲渡等に伴って収受し、又は収受すべき金銭等の全額が、その基準期間における課税売上高になるとしています。
数字で置くと、次のようになります。
| 前提 | 基準期間における課税売上高 | 1,000万円との関係 |
|---|---|---|
| 免税事業者として、基準期間に受け取った総額が 1,050万円 | 1,050万円 | 1,000万円を超える |
| 同じ金額を1.1で割り戻して954万円とみなす扱い | — | このような割戻しは行いません |
1,000万円から1,100万円あたりの受取総額の帯にいる事業者は、割り戻すかどうかで結論が反対に出ます。自社の金額での判定は、税理士または税務署にご確認ください。
期間が1年に満たないときの扱い
個人事業者と法人で、扱いが違います。
消費税法基本通達1-4-9 は、個人事業者について次のように定めています。
個人事業者の基準期間における課税売上高については、次に掲げる場合のように当該基準期間において事業を行っていた期間が1年に満たないときであっても、当該基準期間における課税売上高によって法第9条第2項第1号《個人事業者に係る課税売上高》の規定を適用するのであるから留意する。
対象として挙げられているのは、基準期間の中途で新たに事業を開始した場合、中途で事業を廃止した場合、中途で廃止してその後同一または異なる種類の事業を開始し通算して1年に満たない場合の3つです。いずれも年換算しません。
特定期間についても同じです。No.6531 は、前年の3月1日に事業を開始した個人事業者の特定期間における課税売上高は前年の3月1日から6月30日までの期間における課税売上高(又は給与等の金額)となり、6か月分に換算する必要はないと記載しています。
さらに、質疑応答事例「特定期間の判定」は、前年7月1日から12月31日までの間に開業した場合には、特定期間の課税売上高(又は給与等支払額)がないため判定不要であるとしています。
法人については、設立1期目の長さによって特定期間の取り方が変わります。同じ質疑応答事例は次の3つを区分しています。
| 法人の状況 | 特定期間 |
|---|---|
| 設立1期目が8か月以上 | 前事業年度開始の日以後6か月の期間 |
| 設立1期目が8か月未満で、月の途中に設立し前事業年度の決算期末が月の末日 | 設立日から6か月後の応当日の前月の末日までの期間 |
| 設立1期目が7か月以下 | 特定期間に該当しない(前事業年度の課税売上高による判定は不要) |
2番目の区分について、質疑応答事例は5月15日設立・前事業年度7か月半・決算期末が月末の例を挙げ、6か月後は11月14日になるものの、10月31日が特定期間の末日となり、5月15日から10月31日までが特定期間になると説明しています。
3番目については注が付いており、特定期間がなく課税事業者とならない場合であっても、事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額が1,000万円以上である法人(消費税法第12条の2第1項に規定する新設法人)は課税事業者となります。
課税売上高に何を入れるか
消費税法基本通達1-4-2 は、基準期間における課税売上高および特定期間における課税売上高に含めるものと含めないものを定めています。
| 内容 | |
|---|---|
| 含む | 資産のみなし譲渡(消費税法第4条第5項)、輸出免税等(同第7条・第8条、租税特別措置法第85条〜第86条の2)等により消費税が免除される場合の課税資産の譲渡等に係る対価の額 |
| 含まない | 消費税額等、特定資産の譲渡等の対価の額、消費税法第31条によりみなされるものの対価の額、売上げに係る対価の返還等の金額 |
| 含まない | 特定課税仕入れに係る支払対価の額 |
| 控除しない | 貸倒れにより領収することができなくなった課税資産の譲渡等の対価の額 |
また同1-4-4 は、基準期間における課税売上高を事業者単位で算定すると定めています。一の事業者が異なる種類の事業を行う場合や、2以上の事業所を有している場合であっても、それらを合計して判定します。店舗ごと・事業ごとに分けて1,000万円と比べる計算ではありません。
インボイス登録者には、この判定が効かない場面がある
No.6501 は、基準期間の課税売上高にかかわらず納税義務が免除されない場合を列挙しており、その筆頭が適格請求書発行事業者の登録です。
課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、適格請求書発行事業者の登録を受けている場合には、納税義務は免除されません。
登録をやめる手続については、消費税法基本通達1-4-1の2 が、適用を受けようとする課税期間の初日から起算して15日前の日までに、適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書の提出が必要になると定めています。この点は「[免税事業者に戻れるか](/articles/back-to-menzei/)」で詳しく扱っています。
ただし、基準期間と特定期間の判定が無意味になるわけではありません。登録している事業者にとっても、2割特例や3割特例を使えるかどうかの判定には基準期間の課税売上高が使われます。対象の範囲は「[2割特例の対象になるのは誰か](/articles/2wari-target/)」をご覧ください。
確認しておきたいこと
- 判定したい年(事業年度)の前々年・前々事業年度の課税売上高はいくらか
- その基準期間に免税事業者だったか(だった場合、受け取った金額の全額で見ます)
- 前年1月1日〜6月30日(法人は前事業年度開始の日以後6か月)の課税売上高はいくらか
- 同じ期間に支払った給与等の金額の合計額はいくらか(未払額・通勤手当・旅費は含みません)
- 適格請求書発行事業者の登録をしているか
- 法人の場合、事業年度開始の日における資本金の額または出資の金額が1,000万円以上か
試算ツールでは、課税売上高と課税仕入れを入れて、課税期間ごとの納付税額の見当をつけられます。表示されるのは前提を置いた計算結果であり、納税義務の判定そのものではありません。判定は、税理士または税務署にご確認ください。
経営者の疑問と、制度の事実
答えるのは制度の事実だけです。有利・不利は事業ごとの事情で変わるため、判断は税理士・税務署にご確認ください。
経営者「基準期間」というのは、前の年の売上のことじゃないのか。
制度の事実前の年ではありません。No.6501 は、基準期間を、個人事業者の場合はその年の前々年、事業年度が1年である法人の場合はその事業年度の前々事業年度としています。No.6531 は、法人で前々事業年度が1年未満の場合について、事業年度開始の日の2年前の日の前日から同日以後1年を経過する日までの間に開始した各事業年度を合わせた期間になると記載しています。2年前を見る点が、前年を見る特定期間との違いです。自社の期間の特定は、税理士または税務署にご確認ください。
経営者免税事業者だった年の売上が1,050万円だった。税抜きなら954万円だから、1,000万円以下でいいのか。
制度の事実質疑応答事例「基準期間において免税事業者であった者の課税売上高の判定」は、基準期間となる課税期間において免税事業者となっていた場合、その売上げには消費税は含まれていないこととなり、その課税売上金額がそのまま基準期間の課税売上高になると回答しています(消費税法基本通達1-4-5)。したがって、受け取った金額の全額である1,050万円が基準期間における課税売上高になり、これは1,000万円を超えます。1.1で割り戻して判定する取扱いではありません。自社の金額での判定は、税理士または税務署にご確認ください。
経営者法人を作れば、これまでの個人事業の売上はリセットされるのか。
制度の事実消費税法基本通達1-4-6 の注は、個人事業者のいわゆる法人成りにより新たに設立された法人であっても、その個人事業者の基準期間における課税売上高又は特定期間における課税売上高は、その法人の基準期間における課税売上高又は特定期間における課税売上高とはならないと定めています。No.6531 にも同じ趣旨の記載があります。ただし No.6531 は、基準期間がない事業年度であっても、その事業年度開始の日における資本金の額または出資の金額が1,000万円以上である法人や特定新規設立法人に該当する法人は納税義務が免除されないとしています。また適格請求書発行事業者となる場合は、基準期間の課税売上高にかかわらず納税義務は免除されません。自社の設立計画の当てはめは、税理士または税務署にご確認ください。
よくある質問
- 基準期間と特定期間は、どちらか一方を見ればよいのですか?
- 両方を見ます。No.6501 は、その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下である場合には原則として納税義務が免除されるとしたうえで、基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、特定期間における課税売上高が1,000万円を超える場合には納税義務は免除されないと記載しています。順番としては基準期間で判定し、そこで1,000万円以下だった場合に特定期間を見る形になります。自社の判定は、税理士または税務署にご確認ください。
- 基準期間に免税事業者だった場合、売上は税抜きに直して1,000万円と比べるのですか?
- 質疑応答事例「基準期間において免税事業者であった者の課税売上高の判定」は、基準期間となる課税期間において免税事業者となっていたことから、その売上げには消費税は含まれていないこととなるとし、その課税売上金額がそのまま基準期間の課税売上高になると回答しています(消費税法基本通達1-4-5)。したがって税抜きに直す処理は行いません。自社の金額の当てはめは、税理士または税務署にご確認ください。
- 前年の6月末までの売上が1,000万円を超えました。もう課税事業者になるのですか?
- 質疑応答事例「特定期間の課税売上高による免税事業者の判定」は、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えた場合には課税事業者となるとしています。ただし同じ回答は、国外事業者以外の事業者は、この判定を課税売上高に代えて特定期間中に支払った給与等の金額により行うこともでき、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えていても給与等支払額が1,000万円を超えていなければ、給与等支払額により免税事業者と判定することができると記載しています。どちらの基準で判定するかは納税者の任意です(No.6501)。自社がどう判定できるかは、税理士または税務署にご確認ください。
- 給与等支払額には、何が含まれますか?
- 質疑応答事例「特定期間の給与等支払額の範囲」は、この場合の給与等の金額を、所得税法施行規則第100条第1項第1号に規定する給与等の金額とし、所得税の課税対象とされる給与、賞与等が該当すると回答しています。所得税が非課税とされる通勤手当、旅費等は該当せず、未払額は含まれません。また出向契約に基づき出向先事業者が出向元事業者に対して支払う給与負担金は、出向元事業者が給与を支払い支払明細書を交付する場合には出向元事業者の給与支払額となるため、出向先事業者における特定期間の給与支払額には該当しません。範囲の当てはめは、税理士または税務署にご確認ください。
- 年の途中で開業した場合、売上を1年分に換算して判定するのですか?
- 個人事業者については換算しません。消費税法基本通達1-4-9 は、基準期間において事業を行っていた期間が1年に満たないときであっても、その基準期間における課税売上高によって判定すると定めています。特定期間についても、No.6531 は、前年の3月1日に事業を開始した個人事業者の特定期間における課税売上高は前年の3月1日から6月30日までの期間における課税売上高(又は給与等の金額)となり、6か月分に換算する必要はないと記載しています。一方、法人の基準期間については、前々事業年度が1年未満の場合に別の定め方があります。自社の当てはめは、税理士または税務署にご確認ください。
- インボイスに登録しています。基準期間の売上が1,000万円以下なら免税に戻れますか?
- No.6501 は、課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、適格請求書発行事業者の登録を受けている場合には納税義務は免除されないと記載しています。消費税法基本通達1-4-1の2 は、この規定の適用を受けるには、適用を受けようとする課税期間の初日から起算して15日前の日までに、適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書の提出が必要になると定めています。手続と時期は、税理士または税務署にご確認ください。
個別の判断について
適用の可否や有利・不利は、事業区分・基準期間の課税売上高・過去の届出など個別の事情で変わります。実際の判断の前に、税理士等の専門家、または所轄の税務署にご相談ください。
出典(一次情報)
- 国税庁 タックスアンサー No.6501 納税義務の免除確認日 2026-10-08
- 国税庁 タックスアンサー No.6531 新規開業又は法人の新規設立のとき確認日 2026-10-08
- 国税庁 質疑応答事例「特定期間の判定」確認日 2026-08-19
- 国税庁 質疑応答事例「特定期間の課税売上高による免税事業者の判定」確認日 2026-08-19
- 国税庁 質疑応答事例「特定期間の給与等支払額の範囲」確認日 2026-08-19
- 国税庁 質疑応答事例「基準期間において免税事業者であった者の課税売上高の判定」確認日 2026-08-19
- 国税庁 消費税法基本通達 第1章第4節 納税義務の免除(1-4-2・1-4-4・1-4-5・1-4-6・1-4-9)確認日 2026-08-19
法令・国税庁・省庁など公的機関の公表資料のみを参照しています(解説記事等の二次情報は使用していません)。