令和8年度税制改正に対応

恒久的施設(PE)を持たない国外事業者は、簡易課税を使えません(2割特例も同じ)

最終確認日: (数値は一次情報で照合)

結論から

消費税法37条1項は、簡易課税制度の対象となる事業者を「事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者及びその課税期間の初日において所得税法第二条第一項第八号の四(定義)又は法人税法第二条第十二号の十九(定義)に規定する恒久的施設を有しない国外事業者を除く。)」と定めています。つまり、その課税期間の初日に恒久的施設を有しない国外事業者は、簡易課税制度の対象から外れます。国外事業者とは、消費税法2条1項4号の2により、所得税法2条1項5号に規定する非居住者である個人事業者および法人税法2条4号に規定する外国法人をいいます。恒久的施設は一般にPEと略称され、国税庁タックスアンサーNo.2883は国内にある支店・事務所・工場などの一定の場所、1年を超える建設工事等の場所、契約締結代理人等の3つに区分しています。国税庁タックスアンサーNo.6505は、この制限が令和6年10月1日以後に開始する課税期間から適用されること、令和6年9月30日までに消費税簡易課税制度選択届出書を提出していても、令和6年10月1日以後に開始する課税期間の初日において恒久的施設を有しない場合には簡易課税制度の適用はないことを記載しています。同じ除外は、2割特例を定める平成28年改正法附則51条の2第1項にも置かれています。自社や取引先がこれに当たるかどうかの判定は、税理士または税務署にご確認ください。

この記事の要点

  • 消費税法37条1項の括弧書きが、簡易課税の対象から「その課税期間の初日において恒久的施設を有しない国外事業者」を除いている。
  • 国外事業者とは、非居住者である個人事業者と外国法人をいう(消費税法2条1項4号の2)。
  • 恒久的施設(PE)は、一定の場所・1年を超える建設工事等の場所・契約締結代理人等の3種類に区分される(国税庁タックスアンサーNo.2883)。
  • 判定の時点は課税期間の初日という一時点で、期の途中の状況ではない。
  • この制限は令和6年10月1日以後に開始する課税期間から適用される(No.6505 注)。
  • 令和6年9月30日までに届出書を提出済みでも、課税期間の初日に恒久的施設がなければ適用はない(No.6505 ※3)。
  • 2割特例を定める平成28年改正法附則51条の2第1項にも、同じ文言の除外が置かれている。

除外は、条文の1つ目の括弧の中にある

簡易課税制度の根拠は消費税法37条1項です。その冒頭は、次の形で始まっています。

事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者及びその課税期間の初日において所得税法第二条第一項第八号の四(定義)又は法人税法第二条第十二号の十九(定義)に規定する恒久的施設を有しない国外事業者を除く。)が、その納税地を所轄する税務署長にその基準期間における課税売上高(中略)が五千万円以下である課税期間(中略)についてこの項の規定の適用を受ける旨を記載した届出書を提出した場合には(後略)

主語である「事業者」に、括弧書きで2つの除外が付いています。

  1. 免税事業者(消費税法9条1項本文により消費税を納める義務が免除される事業者)
  2. その課税期間の初日において恒久的施設を有しない国外事業者

2つ目が今回の話です。この括弧書きは主語そのものを狭めていますので、届出書を出す・出さないより手前にあります。

国税庁 タックスアンサー No.6505 も、対象者の欄の注で同じことを記載しています。

(注) 令和6年10月1日以後に開始する課税期間から、その課税期間の初日において恒久的施設(※1)を有しない国外事業者(※2)は、簡易課税制度の適用を受けられません(※3)。

「国外事業者」は2種類しかない

言葉の定義を確認します。消費税法2条1項4号の2です。

国外事業者 所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第二条第一項第五号(定義)に規定する非居住者である個人事業者及び法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第二条第四号(定義)に規定する外国法人をいう。

非居住者である個人事業者と、外国法人の2つです。No.6505 の※2も同じ内容を記載しています。

日本国内に住んでいる個人事業者、日本の法令に基づいて設立された法人は、この定義に当たりません。国内だけで商売をしている中小企業にとっては、まず自社が該当しないことを確認して終わる種類の規定です。

ただし、非居住者に当たるかどうかは所得税法の定義によります。事業主の生活の本拠が国外に移った場合には、判定が変わり得ます。

恒久的施設(PE)の3種類

「恒久的施設」は聞き慣れない言葉ですが、国税庁 タックスアンサー No.2883 に定義があります。一般に PE(Permanent Establishment)と略称され、次の3つの種類に区分されています。

種類No.2883 の記載
(1) 一定の場所非居住者等の国内にある事業の管理を行う場所、支店、事務所、工場、作業場もしくは鉱山その他の天然資源を採取する場所またはその他事業を行う一定の場所
(2) 長期建設工事現場等非居住者等の国内にある建設、据付けの工事またはこれらの指揮監督の役務の提供で1年を超えて行う場所
(3) 契約締結代理人等非居住者等が国内に置く代理人等で、その事業に関し、反復して契約を締結する権限を有し、または契約締結のために反復して主要な役割を果たす者等の一定の者

同ページには、場所があるだけでは該当しない場合がある旨の注も置かれています。

(注1) 非居住者等に属する物品もしくは商品またはそれらの在庫の保管、展示または引渡しのためのみに使用または保有する施設等については、それが非居住者等の事業の遂行上準備的または補助的な性格のものである場合は、上記(1)、(2)に含まれません。

そして判定の姿勢について、次のように記載しています。

日本国内に恒久的施設を有するかどうかを判定するに当たっては、形式的に行うのではなく機能的な側面を重視して判定することになります。例えば、事業活動の拠点となっているホテルの一室は、恒久的施設に該当しますが、単なる製品の貯蔵庫は恒久的施設に該当しないことになります。

ホテルの一室が該当し、倉庫が該当しない場合がある。看板や登記の有無ではなく、そこで何をしているかを見る形になっています。

なお No.2883 は、我が国が締結した租税条約において国内法上の恒久的施設と異なる定めがある場合には、その租税条約の適用を受ける非居住者等については租税条約上の恒久的施設を国内法上の恒久的施設とする、とも記載しています。

判定の時点は「課税期間の初日」

条文の文言は「その課税期間の初日において」です。

期の途中で日本の事務所を閉じた場合も、期の途中で開いた場合も、条文が見ている時点は初日1日だけという書き方になっています。

そして No.6505 の※3は、届出書との関係を次のように記載しています。

(※3)令和6年9月30日までに、「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出している場合であっても、令和6年 10 月1日以後に開始する課税期間の初日において恒久的施設(PE)を有しない場合には、簡易課税制度の適用はありません。

過去に届出書を出していたことは、この判定を通過させる事情としては書かれていません。

内容出典
いつから令和6年10月1日以後に開始する課税期間からNo.6505 注
いつの時点で見るかその課税期間の初日消費税法37条1項/No.6505 注
届出済みの場合届出書を提出していても適用はないNo.6505 ※3

同じ除外が、2割特例にも置かれている

見落としやすい点があります。この除外は簡易課税だけの話ではありません。

2割特例(適格請求書発行事業者となる小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置)を定めているのは、平成28年改正法の附則51条の2第1項です。その主語は次の形で書かれています。

適格請求書発行事業者(消費税法第五十七条の三第三項の規定により同法第五十七条の二第一項の登録を受けた事業者とみなされる者を含み、その課税期間の初日において所得税法第二条第一項第八号の四又は法人税法第二条第十二号の十九に規定する恒久的施設を有しない消費税法第二条第一項第四号の二に規定する国外事業者を除く。以下この条及び次条において同じ。)

消費税法37条1項の括弧書きと、同じ条文を指す同じ文言です。

簡易課税制度の適用がないから2割特例へ、という置き換えが条文上は用意されていない形になっています。実際の申告での取扱いは、税理士または税務署にご確認ください。

国内の中小企業にとって、どこを見る規定か

この規定は、日本国内で事業を営み、国内に住んでいる経営者にとっては該当しないことを確認するための条文です。ただし、次のような場面では言葉の定義に戻る必要が出ます。

  • 事業主本人が国外へ生活の本拠を移した(所得税法上の非居住者に当たるかどうか)
  • 日本で事業を行う外国法人の申告を扱う
  • 国外の親会社が日本国内に置いている拠点の性格を整理する

いずれも、判定の材料は居住者か非居住者か、外国法人か否か、そして課税期間の初日に恒久的施設があるかの3点です。個別の判定は、税理士または税務署にご確認ください。

この記事の一次情報

  • 国税庁 タックスアンサー No.6505「簡易課税制度」[令和7年4月1日現在法令等](2026年8月27日に再取得。対象者の注、※1〜※3の記載に変更がないことを確認しました)
  • 国税庁 タックスアンサー No.2883「恒久的施設(PE)(令和元年分以後)」[令和7年4月1日現在法令等](2026年8月27日に取得)
  • e-Gov法令検索 消費税法 第37条第1項・第2条第1項第4号の2(2026年4月1日施行版の原文を取得)
  • e-Gov法令検索 消費税法 附則(平成28年3月31日法律第15号)第51条の2第1項(同版の原文を取得)

この記事は制度の内容を一般的に説明したものであり、個別の事案についての税務相談ではありません。自社が国外事業者に当たるかどうか、恒久的施設を有するかどうかの判定については、税理士または税務署にご確認ください。

経営者の疑問と、制度の事実

答えるのは制度の事実だけです。有利・不利は事業ごとの事情で変わるため、判断は税理士・税務署にご確認ください。

経営者うちは日本国内だけで商売している中小企業だ。国外事業者の話は関係ないだろう。

制度の事実消費税法2条1項4号の2は、国外事業者を非居住者である個人事業者および外国法人と定めています。日本国内に住んでいる個人事業者や、日本の法令に基づいて設立された法人は、この定義に当たりません。ご質問の前提であれば、消費税法37条1項の括弧書きによる除外の対象からは外れることになります。ただし所得税法上の非居住者に当たるかどうかは住所や居所の有無で判定されるもので、たとえば代表者や事業主の生活の本拠が国外に移った場合には判定が変わり得ます。ご自身の状況での判定は、税理士または税務署にご確認ください。

経営者海外の会社から仕入れている。その相手が簡易課税を使えるかどうかは、うちに関係あるのか。

制度の事実消費税法37条1項は、簡易課税制度の適用を受ける事業者自身の要件を定めた規定です。仕入先がどの計算方法で申告しているかは、この規定が直接定めている事項ではありません。一方で、仕入税額控除の要件やインボイスの交付を受けられるかどうかは、これとは別の条文で定められています。取引に即した確認は、税理士または税務署にご確認ください。

経営者日本に事務所を借りていれば恒久的施設になるのか。登記だけならどうだ。

制度の事実国税庁タックスアンサーNo.2883は、恒久的施設の1つ目の種類として「非居住者等の国内にある事業の管理を行う場所、支店、事務所、工場、作業場もしくは鉱山その他の天然資源を採取する場所またはその他事業を行う一定の場所」を挙げています。同時に注1として、非居住者等に属する物品もしくは商品またはそれらの在庫の保管、展示または引渡しのためのみに使用または保有する施設等については、それが非居住者等の事業の遂行上準備的または補助的な性格のものである場合は含まれない、と記載しています。さらに同ページは、判定に当たっては形式的に行うのではなく機能的な側面を重視して判定することになるとし、事業活動の拠点となっているホテルの一室は恒久的施設に該当するが、単なる製品の貯蔵庫は該当しないという例を挙げています。個別の当てはめは、税理士または税務署にご確認ください。

よくある質問

「国外事業者」とは、外国の会社のことですか?
消費税法2条1項4号の2は、国外事業者を「所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第二条第一項第五号(定義)に規定する非居住者である個人事業者及び法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第二条第四号(定義)に規定する外国法人をいう」と定めています。外国法人だけではなく、非居住者である個人事業者も含まれます。自分がどちらに当たるかの判定は、税理士または税務署にご確認ください。
恒久的施設(PE)とは、具体的に何を指しますか?
国税庁タックスアンサーNo.2883は、恒久的施設を3つの種類に区分しています。(1)非居住者等の国内にある事業の管理を行う場所、支店、事務所、工場、作業場もしくは鉱山その他の天然資源を採取する場所またはその他事業を行う一定の場所、(2)非居住者等の国内にある建設、据付けの工事またはこれらの指揮監督の役務の提供で1年を超えて行う場所、(3)非居住者等が国内に置く代理人等で、その事業に関し、反復して契約を締結する権限を有し、または契約締結のために反復して主要な役割を果たす者等の一定の者、です。同ページは、判定に当たっては形式的に行うのではなく機能的な側面を重視して判定することになる、とも記載しています。個別の判定は、税理士または税務署にご確認ください。
判定はいつの時点で行うのですか?
消費税法37条1項の括弧書きは「その課税期間の初日において」と書かれています。課税期間の途中の状態ではなく、初日という一時点での判定として定められています。国税庁タックスアンサーNo.6505の注も「その課税期間の初日において恒久的施設を有しない国外事業者は、簡易課税制度の適用を受けられません」と記載しています。自社の課税期間の初日がいつかを含めた当てはめは、税理士または税務署にご確認ください。
令和6年9月30日までに届出書を出していた場合はどうなりますか?
No.6505の※3は「令和6年9月30日までに、『消費税簡易課税制度選択届出書』を提出している場合であっても、令和6年10月1日以後に開始する課税期間の初日において恒久的施設(PE)を有しない場合には、簡易課税制度の適用はありません」と記載しています。届出書を出していたかどうかとは別に判定される形で書かれています。個別の取扱いは、税理士または税務署にご確認ください。
2割特例のほうは使えるのですか?
2割特例を定める平成28年改正法附則51条の2第1項は、その対象を「適格請求書発行事業者(中略)その課税期間の初日において所得税法第二条第一項第八号の四又は法人税法第二条第十二号の十九に規定する恒久的施設を有しない消費税法第二条第一項第四号の二に規定する国外事業者を除く。以下この条において同じ。」と定めています。消費税法37条1項と同じ文言の除外が置かれています。実際の適用の可否については、税理士または税務署にご確認ください。

個別の判断について

適用の可否や有利・不利は、事業区分・基準期間の課税売上高・過去の届出など個別の事情で変わります。実際の判断の前に、税理士等の専門家、または所轄の税務署にご相談ください。

出典(一次情報)

法令・国税庁・省庁など公的機関の公表資料のみを参照しています(解説記事等の二次情報は使用していません)。

本ページは公表されている制度情報にもとづく解説と試算の補助であり、税務に関する助言ではありません。個別の判断は必ず税理士等の専門家にご確認ください(所轄の税務署でも確認できます)。

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