令和8年度税制改正に対応

令和8年9月30日をまたぐ取引は80%か70%か(判定は「課税仕入れを行った日」)

最終確認日: (数値は一次情報で照合)

結論から

免税事業者などインボイス発行事業者以外の相手からの課税仕入れについて、控除できる割合が80%から70%に切り替わる境目は「課税仕入れを行った日」が令和8年10月1日以後かどうかで判定します。原則として、請求日や支払日で判定するものではありません。ただし現金主義(消費税法第18条)を適用している個人事業者は、課税仕入れを行った時期が「費用の額を支出した日」になります。国税庁の基本通達では、商品・材料の仕入れは引渡しのあった日、請負は目的物を完成して引き渡した日(物の引渡しを要しない請負は約した役務の全部を完了した日)、家賃やリース料など賃貸借契約に基づく使用料等は契約又は慣習によりその支払を受けるべき日とされています。ただしこの定めは使用料等の額のうち前受けに係る額を除いており、前受金に係る資産の譲渡等の時期は基本通達9-1-27により現実に資産の譲渡等を行った時とされています。個々の取引がどの日に当たるかの判断は、税理士または税務署にご確認ください。

この記事の要点

  • 控除割合の切り替えは「課税仕入れを行った日」で判定する(消費税法基本通達11-3-1)。原則として請求日・支払日では判定しない(現金主義=消費税法第18条を適用している個人事業者は支出した日による)。
  • 商品・材料の仕入れは引渡しのあった日(9-1-1)、請負は完成して引き渡した日、物の引渡しを要しない請負は役務の全部を完了した日(9-1-5)。
  • 家賃・リース料など賃貸借契約に基づく使用料等は「契約又は慣習によりその支払を受けるべき日」(9-1-20)で、役務が終わった日ではない。
  • ただし9-1-20は、使用料等の額のうち「前受けに係る額を除く。」と括弧書きで対象を限定している。前受金に係る資産の譲渡等の時期は9-1-27により、現実に資産の譲渡等を行った時とされている。
  • 引渡しの日は、出荷した日・相手方が検収した日など複数の候補のうち合理的で継続して採用している日による(9-1-2・9-1-6)。制度が一つの日を指定しているわけではない。
  • 割合の切り替え(課税仕入れを行った日)と、1億円の控除限度額(令和8年10月1日以後に開始する課税期間)は、起算がそれぞれ別。

境目は「請求書の日付」ではない

免税事業者などインボイス発行事業者以外の相手からの仕入れは、支払った消費税相当額の一定割合だけを控除できます。その割合は 令和8年9月30日まで80%、令和8年10月1日から70% です。

問題になるのは、ちょうどこの境目にかかる取引です。9月に納品され、10月に請求書が届き、11月に支払う。この取引は 80% なのか 70% なのか。

国税庁の基本通達は、判定に使う日を 「課税仕入れを行った日」 と定めています。原則として、請求書の日付でも、通帳から引き落とされた日でもありません。

「課税仕入れを行った日」の定義

11-3-1 (略)「課税仕入れを行った日」及び同項第2号に規定する「特定課税仕入れを行った日」とは、課税仕入れに該当することとされる資産の譲受け若しくは借受けをした日又は役務の提供を受けた日をいうのであるが、これらの日がいつであるかについては、別に定めるものを除き、第9章《資産の譲渡等の時期》の取扱いに準ずる。

つまり「いつ受け取ったか」で見ます。そして具体的な日は、取引の種類ごとに第9章が定めています。

取引の種類ごとに、どの日か

取引の種類課税仕入れを行った日根拠
商品・材料の仕入れ(棚卸資産)引渡しのあった日基通9-1-1
請負(物の引渡しを要するもの)目的物の全部を完成して相手方に引き渡した日基通9-1-5
請負(物の引渡しを要しないもの)その約した役務の全部を完了した日基通9-1-5
家賃・リース料など賃貸借契約に基づく使用料等(前受けに係る額を除く)契約又は慣習によりその支払を受けるべき日基通9-1-20
上記のうち前受けに係る額(前受金・仮受金)現実に資産の譲渡等を行った時(消費税法第18条の特例の適用を受ける事業者を除く)基通9-1-27

上の表に当てはまらない取引もあります。割賦購入・リース取引(基通11-3-2)、郵便切手類や物品切手等(基通11-3-7)、輸入した貨物(基通11-3-9)などは、別に定めがあります。該当する取引がある場合は、税理士または税務署にご確認ください。

家賃やサブスクは「使い終わった日」ではない

ここは取り違えやすいところです。

「役務の全部を完了した日」と書かれているのは、物の引渡しを要しない請負契約についてです(基通9-1-5)。役務の提供が一律にこの日で判定される、という定めではありません。

事務所の家賃、コピー機のリース料、クラウドサービスの月額料金のように、資産の賃貸借契約に基づいて支払う使用料等については、基通9-1-20に次の定めがあります。

資産の賃貸借契約に基づいて支払を受ける使用料等の額(前受けに係る額を除く。)を対価とする資産の譲渡等の時期は、当該契約又は慣習によりその支払を受けるべき日とする。

この定めには括弧書きが付いています。対象から外れているのは前受けに係る額です。その前受金については、基通9-1-27に別の定めがあります。

資産の譲渡等に係る前受金、仮受金に係る資産の譲渡等の時期は、法第18条《小規模事業者に係る資産の譲渡等の時期等の特例》の規定の適用を受ける事業者を除き、現実に資産の譲渡等を行った時となることに留意する。

つまり、賃貸借契約の使用料等であれば一律に支払を受けるべき日で判定される、という形にはなっていません。前受けに当たる額は9-1-20の対象外で、現実に資産の譲渡等を行った時によります(消費税法第18条の特例の適用を受ける事業者は除かれています)。

小規模な事業者ほど、毎月の固定費はこの類型に集まります。「使い終わった日」で数えると、令和8年9月30日をまたぐ月額の契約で割合を取り違えることになります。自社の契約が前受けに当たるかどうかを含め、契約書の定めをどう読むかは、税理士または税務署にご確認ください。

「引渡しの日」は一つに決まっていない

商品の引渡しの日についても、通達は一つの日を指定していません。

9-1-2 棚卸資産の引渡しの日がいつであるかについては、例えば、出荷した日、相手方が検収した日、相手方において使用収益ができることとなった日、検針等により販売数量を確認した日等、当該棚卸資産の種類及び性質、その販売に係る契約の内容等に応じてその引渡しの日として合理的であると認められる日のうち、事業者が継続して棚卸資産の譲渡を行ったこととしている日によるものとする。

建設工事等についても、作業を結了した日・搬入した日・検収を完了した日などから、合理的な日を継続して採用する形になっています(基通9-1-6)。

つまり、日付は自動的に決まるものではなく、自社が継続して採用している基準があってはじめて決まります。請求日や支払日から機械的に導き出せる性質のものではないため、この記事でも一つの日を指定する形にはしていません。

前払いした分は「支出した日」に飛ぶことがある

令和8年9月に1年分をまとめて前払いした場合、その課税仕入れがどの時期のものになるかについては、別の定めがあります。

11-3-8 前払費用(略)につき所基通37-30の2又は法基通2-2-14《短期前払費用》の取扱いの適用を受けている場合は、当該前払費用に係る課税仕入れは、その支出した日の属する課税期間において行ったものとして取り扱う。

この取扱いの適用を受けているかどうかは、日々の経理の方法と要件の当てはめで決まります。判断は税理士または税務署にご確認ください。

国税庁は、この短期前払費用の取扱いを受けている1年分の保守料金について、経過措置の割合をどう当てはめるかの設例を令和8年4月に追加しています(問113-4)。その内容と、2019年の税率引上げのときの同じ形の設例とで答えが逆を向いていることは「[同じ短期前払費用でも、令和8年のインボイスの資料と2019年の税率の資料は答えが逆です](/articles/tanki-maebarai-zengaku-80-2019-gyaku/)」で扱っています。

現金主義(消費税法第18条)を選んでいる場合は、判定の日が変わる

ここまでは原則の話です。消費税法第18条には、これと結論が入れ替わる特例があります。

第十八条 個人事業者で所得税法第六十七条第一項又は第二項(小規模事業者等の収入及び費用の帰属時期)の規定の適用を受ける者の資産の譲渡等及び課税仕入れを行つた時期は、その資産の譲渡等に係る対価の額を収入した日及びその課税仕入れに係る費用の額を支出した日とすることができる。

つまり、この特例を適用している個人事業者にとっては、支出した日が「課税仕入れを行った日」になります。令和8年9月に引渡しを受けて10月に支払った取引は、原則では9月(80%)ですが、この特例を適用している場合は10月(70%)ということになります。同じ取引で結論が反対に出ます。

条文が「することができる」と書いているとおり、これは選択制です。所得税で現金主義を選んでいれば消費税でも自動的にこうなる、というものではありません。適用の対象になるかどうか、また現に適用しているかどうかは、記帳の方法や過去の申告の内容によって決まります。ご自身が該当するかどうかの判断は、税理士または税務署にご確認ください。

なお、当サイトの試算ツールは課税期間ごとの納付税額を試算するもので、この80%・70%の割合判定は扱っていません。どちらの割合になるかは、この記事の考え方をもとにご自身の取引で確認するか、税理士または税務署にご確認ください。

「割合の境目」と「1億円の境目」は別

同じ令和8年10月が出てくるため混同されやすいのですが、起算が違います。

何が変わるかいつを基準に判定するか
控除割合が80%から70%へ課税仕入れを行った日が令和8年10月1日以後か
控除限度額が10億円から1億円へ令和8年10月1日以後に開始する課税期間か

12月決算法人や個人事業者の場合、令和8年10月1日から12月31日までは「割合は70%、限度額はまだ10億円」という状態になります。限度額の詳細は「[「1億円の控除限度額」とは何か](/articles/1oku-kojo-gendogaku/)」で扱っています。

帳簿にも「行った年月日」を書く

この経過措置の適用を受けるには、帳簿と請求書等の保存が要件になります。国税庁のQ&A問113が挙げる帳簿の記載事項には、② 課税仕入れを行った年月日が含まれています。

判定に使う日と、帳簿に書く日は同じものです。保存の要件は「[7・5・3割控除を受けるための帳簿・請求書の保存要件](/articles/keika-sochi-chobo-hozon/)」でまとめています。

確認しておきたいこと

  • 令和8年9月30日の前後にまたがる取引が、自社にどれだけあるか
  • その取引が、商品の仕入れ・請負・賃貸借の使用料等のどれに当たるか
  • 引渡しの日について、自社が継続して採用している基準は何か
  • 9月中に前払いした年間契約があるか

金額の見当は試算ツールでつけられます。個々の取引の当てはめと申告の取扱いは、税理士または税務署にご確認ください。

経営者の疑問と、制度の事実

答えるのは制度の事実だけです。有利・不利は事業ごとの事情で変わるため、判断は税理士・税務署にご確認ください。

経営者9月末で駆け込んで仕入れておけば80%で引ける、という理解でいいのか。

制度の事実国税庁の基本通達では、控除割合は「課税仕入れを行った日」が令和8年10月1日以後かどうかで判定するとされています。商品や材料の仕入れであれば引渡しのあった日が基準です。原則として請求日や支払日では判定しません。自社の取引がどの日に当たるかの判断は、税理士または税務署にご確認ください。

経営者うちは事務所の家賃と、会計ソフトの月額と、コピー機のリースがある。これも同じ考え方か。

制度の事実資産の賃貸借契約に基づく使用料等は、基本通達9-1-20により「契約又は慣習によりその支払を受けるべき日」が資産の譲渡等の時期とされています。役務が終わった日で判定するものではありません。ただし同通達は使用料等の額のうち「前受けに係る額を除く。」としており、前受けに当たる額は同通達の対象外です。その場合は基本通達9-1-27により、消費税法第18条の特例の適用を受ける事業者を除き、現実に資産の譲渡等を行った時とされています。なお、リース取引については基本通達11-3-2に別の定めがあります。契約ごとの当てはめは税理士または税務署にご確認ください。

経営者「引渡しの日」といっても、出荷した日と検収の日ではズレる。どちらで数えるんだ。

制度の事実基本通達9-1-2は、棚卸資産の引渡しの日について、出荷した日、相手方が検収した日、相手方において使用収益ができることとなった日などのうち、その資産の種類・性質や契約の内容に応じて合理的と認められる日で、事業者が継続して採用している日によるとしています。つまり制度側が一つの日を指定しているわけではありません。自社が継続して採用している基準の確認は、税理士または税務署にご相談ください。

よくある質問

9月中に納品されて、請求書が10月、支払いが11月です。どの割合になりますか?
国税庁の基本通達では、控除割合の判定に使う「課税仕入れを行った日」は、資産の譲受け・借受けをした日または役務の提供を受けた日とされており、原則として請求日や支払日で判定するものではありません。商品の仕入れであれば引渡しのあった日が基準になります。個々の取引でその日がいつに当たるかは、税理士または税務署にご確認ください。
毎月の家賃やクラウドサービスの月額料金は、いつの課税仕入れになりますか?
資産の賃貸借契約に基づいて支払を受ける使用料等については、基本通達9-1-20で「当該契約又は慣習によりその支払を受けるべき日」が資産の譲渡等の時期とされています。役務が終わった日ではありません。ただし同通達は、対象となる使用料等の額について「前受けに係る額を除く。」と括弧書きで限定しています。前受金・仮受金に係る資産の譲渡等の時期は、基本通達9-1-27により、消費税法第18条の特例の適用を受ける事業者を除き、現実に資産の譲渡等を行った時とされています。自社の契約が前受けに当たるかどうかを含め、当てはめは税理士または税務署にご確認ください。
令和8年9月に1年分をまとめて前払いした場合はどうなりますか?
基本通達11-3-8では、前払費用について所得税基本通達37-30の2または法人税基本通達2-2-14(短期前払費用)の取扱いの適用を受けている場合、その前払費用に係る課税仕入れは支出した日の属する課税期間に行ったものとして取り扱うとされています。この取扱いの適用を受けているかどうかの判断は、税理士または税務署にご確認ください。
現金主義で記帳しています。それでも「支払った日」は関係ないのですか?
消費税法第18条では、所得税法第67条第1項または第2項の適用を受ける個人事業者は、資産の譲渡等および課税仕入れを行った時期を、対価の額を収入した日および費用の額を支出した日とすることができるとされています。この特例を適用している場合は、支出した日で判定することになります。ご自身がこの特例の対象になるか、また適用しているかどうかの判断は、税理士または税務署にご確認ください。
帳簿には何を書けばよいのですか?
国税庁のQ&A問113では、この経過措置の適用を受けるための帳簿の記載事項として、相手方の氏名又は名称、課税仕入れを行った年月日、資産又は役務の内容および経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨、支払対価の額の4つが挙げられています。記載の具体的な方法は税務署にご確認ください。

個別の判断について

適用の可否や有利・不利は、事業区分・基準期間の課税売上高・過去の届出など個別の事情で変わります。実際の判断の前に、税理士等の専門家、または所轄の税務署にご相談ください。

出典(一次情報)

法令・国税庁・省庁など公的機関の公表資料のみを参照しています(解説記事等の二次情報は使用していません)。

本ページは公表されている制度情報にもとづく解説と試算の補助であり、税務に関する助言ではありません。個別の判断は必ず税理士等の専門家にご確認ください(所轄の税務署でも確認できます)。

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