特定期間の判定を給与等支払額で行う場合、何を集計するのか(通勤手当・未払・出向負担金の扱い)
最終確認日: (数値は一次情報で照合)
特定期間における課税売上高が1,000万円を超えるかどうかの判定は、課税売上高に代えて、特定期間中に支払った給与等の金額の合計額により行うことができます(消費税法第9条の2第3項)。いずれの基準で判定するかは納税者の任意です。この「給与等の金額」は、消費税法第9条の2第3項が財務省令に委ね、消費税法施行規則第11条の2が所得税法施行規則第100条第1項第1号に規定する給与等の金額と定めています。国税庁の質疑応答事例「特定期間の給与等支払額の範囲」および消費税法基本通達1-5-23 は、この給与等の金額には所得税の課税対象とされる給与、賞与等が該当し、所得税が非課税とされる通勤手当、旅費等は該当しないとしています。同じ質疑応答事例は、未払額は含まれないこと、出向契約に基づき出向先事業者が出向元事業者に対して支払う給与負担金は、出向元事業者が給与を支払いその支払明細書を交付する場合には出向元事業者の給与支払額となり、出向先事業者における特定期間の給与支払額には該当しないことも示しています。なお令和6年10月1日以後に開始する課税期間から、国外事業者はこの方法により判定することはできません。自社の集計と判定は、税理士または税務署にご確認ください。
この記事の要点
- 特定期間の1,000万円判定は、課税売上高に代えて特定期間中に支払った給与等の金額の合計額により行うことができ、どちらで判定するかは納税者の任意(消費税法第9条の2第3項、タックスアンサー No.6501)。
- 「給与等の金額」の中身は消費税法だけでは決まらない。消費税法第9条の2第3項が財務省令に委ね、消費税法施行規則第11条の2が所得税法施行規則第100条第1項第1号の給与等の金額と定めている。
- 該当するのは所得税の課税対象とされる給与、賞与等(質疑応答事例「特定期間の給与等支払額の範囲」、消費税法基本通達1-5-23)。
- 所得税が非課税とされる通勤手当、旅費等は該当しない。
- 未払額は含まれない。条文が「特定期間中に支払つた」としているため、集計は支払ったものが対象になる。
- 出向先事業者が出向元事業者に支払う給与負担金は、出向元事業者が給与を支払い支払明細書を交付する場合には出向元事業者の給与支払額となり、出向先事業者の特定期間の給与支払額には該当しない。
- 令和6年10月1日以後に開始する課税期間から、国外事業者(所得税法に規定する非居住者である個人事業者および法人税法に規定する外国法人)は、給与等支払額による判定を行うことができない。
特定期間には、金額の物差しが2つある
消費税の課税事業者になるかどうかの判定で使う 特定期間(個人事業者はその年の前年1月1日から6月30日まで、法人は原則として前事業年度開始の日以後6か月の期間)には、1,000万円という線が引かれています。
この線と比べる金額は、1種類ではありません。消費税法第9条の2第3項は、次のように定めています。
国外事業者以外の事業者が第一項の規定を適用する場合においては、前項の規定にかかわらず、当該事業者が第一項の特定期間中に支払つた所得税法第二百三十一条第一項(給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書)に規定する支払明細書に記載すべき同項の給与等の金額に相当するものとして財務省令で定めるものの合計額をもつて、第一項の特定期間における課税売上高とすることができる。
タックスアンサー No.6501 は、この点をひとことで書いています。「いずれの基準で判定するかは納税者の任意です。」
期間の考え方そのものは「[基準期間と特定期間とは何か](/articles/kijun-kikan-tokutei-kikan/)」で扱っています。ここでは、給与のほうを選んだときに何を集計するのかだけを見ます。
「給与等の金額」は、消費税法だけを読んでも決まらない
条文の書き方に注目してください。消費税法第9条の2第3項は、金額の中身を自分では決めず、「財務省令で定めるもの」と書いています。
その財務省令が、消費税法施行規則第11条の2(特定期間における給与等の金額)です。
法第九条の二第三項に規定する給与等の金額に相当するものとして財務省令で定めるものは、所得税法施行規則(昭和四十年大蔵省令第十一号)第百条第一項第一号(給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書)に規定する給与等の金額とする。
さらにその所得税法施行規則第100条第1項第1号は、支払明細書に記載する事項の1つとして、次を掲げています。
その支払に係る法第二百三十一条第一項に規定する給与等、退職手当等又は公的年金等の金額
つまり、範囲は次の3段でつながっています。
| 段 | 条文 | 何を決めているか |
|---|---|---|
| 1 | 消費税法第9条の2第3項 | 給与等支払額で判定できること。中身は財務省令に委ねること |
| 2 | 消費税法施行規則第11条の2 | その中身は所得税法施行規則第100条第1項第1号の給与等の金額であること |
| 3 | 所得税法施行規則第100条第1項第1号 | 支払明細書に記載する給与等の金額であること |
集計の出発点は、源泉徴収の対象として支払明細書に載せている給与等の金額です。会計帳簿の人件費の合計とは、範囲が一致するとは限りません。
入るもの・入らないものの一覧
国税庁の質疑応答事例「特定期間の給与等支払額の範囲」は、この点を正面から扱っています。回答を引用します。
この場合の給与等の金額とは、所得税法施行規則第100条第1項第1号《給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書》に規定する給与等の金額をいうことから、当該給与等の金額とは、所得税の課税対象とされる給与、賞与等が該当し、所得税が非課税とされる通勤手当、旅費等は該当せず、未払額は含まれません。
消費税法基本通達1-5-23 にも、同じ内容の留意事項が置かれています。
| 内容 | |
|---|---|
| 該当する | 所得税の課税対象とされる給与、賞与等 |
| 該当しない | 所得税が非課税とされる通勤手当、旅費等 |
| 該当しない | 未払額 |
| 該当しない | 出向先事業者が出向元事業者に支払う給与負担金(下記の条件による) |
なお、所得税法施行規則第100条第1項第1号は「給与等、退職手当等又は公的年金等の金額」と3つを並べていますが、消費税法第9条の2第3項が引いているのは「同項の給与等の金額」であり、質疑応答事例と通達はいずれも該当するものを「給与、賞与等」と説明しています。個々の支給が給与等に当たるかどうかは、税理士または税務署にご確認ください。
「支払った」金額であること
条文は「特定期間中に支払つた」と書いています。質疑応答事例も「未払額は含まれません」と明記しています。
したがって、次の2つは同じ金額になるとは限りません。
| 見方 | 何を集めるか |
|---|---|
| 特定期間中に支払った給与等の金額の合計額 | 消費税法第9条の2第3項が定める集計 |
| その期間に発生した人件費 | 未払分を含むため、上の金額と一致するとは限らない |
締め日と支払日がずれている場合、どちらの月分が入るかで合計額が変わります。自社の支払時期のあてはめは、税理士または税務署にご確認ください。
出向者がいる場合は、誰が支払っているかで決まる
質疑応答事例は、出向についても回答しています。
また、出向契約に基づき出向先事業者が出向元事業者に対して支払う給与負担金については、出向する使用人に対する給与を出向元事業者が支払い、その支払明細書を出向元事業者が交付する場合には、出向元事業者の給与支払額となるため、出向先事業者における特定期間の給与支払額には該当しません。
判断の分かれ目は、給与を支払っているのが誰かと、支払明細書を交付しているのが誰かです。
| 状況 | 給与負担金の扱い |
|---|---|
| 出向元が給与を支払い、出向元が支払明細書を交付している | 出向元の給与支払額。出向先の特定期間の給与支払額には該当しない |
出向の形は契約によって異なります。上に当てはまらない形をとっている場合の扱いは、税理士または税務署にご確認ください。
国外事業者は、この方法を使えない
消費税法第9条の2第3項は「国外事業者以外の事業者が」と書き出しています。タックスアンサー No.6501 にも、次の注記があります。
令和6年10月1日以後に開始する課税期間から、国外事業者(所得税法に規定する非居住者である個人事業者および法人税法に規定する外国法人をいいます。)については、特定期間における 1,000 万円の判定を、給与等支払額の合計額により行うことはできません。
始まりの目印は「令和6年10月1日以後に開始する課税期間」です。その日をまたぐ課税期間ではなく、その日以後に始まる課税期間から適用されます。
課税売上高のほうを選ぶ場合の定義
比較のために、もう一方の金額の定義も見ておきます。消費税法第9条の2第2項は、特定期間における課税売上高について次のように定めています。
前項に規定する特定期間における課税売上高とは、当該特定期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等の対価の額の合計額から、第一号に掲げる金額から第二号に掲げる金額を控除した金額の合計額を控除した残額をいう。
第1号は特定期間中に行った売上げに係る対価の返還等の金額、第2号はその返還等の金額に係る消費税額に78分の100を乗じて算出した金額です。
課税売上高のほうを選ぶ場合、返品や値引き(売上げに係る対価の返還等)を差し引いた残額が判定の対象になります。単純な売上の合計額ではありません。この計算の当てはめも、税理士または税務署にご確認ください。
確認しておきたいこと
- 判定したい年(事業年度)の特定期間がいつからいつまでか
- その期間に支払った給与等の金額の合計額はいくらか(未払額は含みません)
- その合計額から、所得税が非課税とされる通勤手当・旅費等を除いているか
- 出向者がいる場合、給与を支払い支払明細書を交付しているのはどちらの事業者か
- 自社が国外事業者に当たるかどうか(当たる場合、令和6年10月1日以後に開始する課税期間からこの方法は使えません)
- 課税売上高のほうを用いる場合、売上げに係る対価の返還等を差し引いているか
試算ツールでは、課税売上高と課税仕入れを入れて、課税期間ごとの納付税額の見当をつけられます。表示されるのは前提を置いた計算結果であり、納税義務の判定そのものではありません。判定は、税理士または税務署にご確認ください。
経営者の疑問と、制度の事実
答えるのは制度の事実だけです。有利・不利は事業ごとの事情で変わるため、判断は税理士・税務署にご確認ください。
経営者上半期の売上が1,100万円になった。もう課税事業者は決まりということか。
制度の事実課税売上高だけで決まるとは限りません。消費税法第9条の2第3項は、国外事業者以外の事業者について、特定期間中に支払った給与等の金額の合計額をもって特定期間における課税売上高とすることができると定めています。タックスアンサー No.6501 も、いずれの基準で判定するかは納税者の任意ですと記載しています。したがって、特定期間の課税売上高と給与等支払額という2つの金額があり、どちらを用いるかという選択が残っている状態です。自社がどちらを用いられるかは、税理士または税務署にご確認ください。
経営者給与といっても、通勤手当も社会保険料も払っている。全部足すのか。
制度の事実足す範囲は条文が絞っています。消費税法施行規則第11条の2 は、この場合の給与等の金額を所得税法施行規則第100条第1項第1号に規定する給与等の金額としています。これを受けて、質疑応答事例「特定期間の給与等支払額の範囲」と消費税法基本通達1-5-23 は、所得税の課税対象とされる給与、賞与等が該当し、所得税が非課税とされる通勤手当、旅費等は該当しないとしています。また同じ質疑応答事例は、未払額は含まれませんとしています。実際の集計にどの支給項目が入るかは、税理士または税務署にご確認ください。
経営者うちは外国法人だ。人件費が少ないから給与のほうで見てもらえるのか。
制度の事実消費税法第9条の2第3項は、この方法を用いることができる者を「国外事業者以外の事業者」としています。タックスアンサー No.6501 は、令和6年10月1日以後に開始する課税期間から、国外事業者(所得税法に規定する非居住者である個人事業者および法人税法に規定する外国法人をいいます)については、特定期間における1,000万円の判定を給与等支払額の合計額により行うことはできないと記載しています。自社が国外事業者に当たるかどうかと、どの課税期間から影響するかは、税理士または税務署にご確認ください。
よくある質問
- 課税売上高と給与等支払額の、どちらで判定するかは選べるのですか?
- タックスアンサー No.6501 は、特定期間における1,000万円の判定は課税売上高に代えて給与等支払額の合計額により判定することができるとしたうえで、いずれの基準で判定するかは納税者の任意ですと記載しています。消費税法第9条の2第3項も、国外事業者以外の事業者について、特定期間中に支払った給与等の金額の合計額をもって特定期間における課税売上高とすることが「できる」という書き方をしています。どちらの基準を用いるかは、税理士または税務署にご確認ください。
- 「給与等の金額」は、どの条文を見れば範囲が分かりますか?
- 3つの条文をたどります。消費税法第9条の2第3項が「所得税法第二百三十一条第一項…に規定する支払明細書に記載すべき同項の給与等の金額に相当するものとして財務省令で定めるもの」と書き、その財務省令である消費税法施行規則第11条の2が「所得税法施行規則(昭和四十年大蔵省令第十一号)第百条第一項第一号…に規定する給与等の金額とする」と定め、所得税法施行規則第100条第1項第1号が「その支払に係る法第二百三十一条第一項に規定する給与等、退職手当等又は公的年金等の金額」を掲げています。あてはめは、税理士または税務署にご確認ください。
- 通勤手当は給与等支払額に入れますか?
- 質疑応答事例「特定期間の給与等支払額の範囲」は、給与等の金額とは所得税の課税対象とされる給与、賞与等が該当し、所得税が非課税とされる通勤手当、旅費等は該当しないと回答しています。消費税法基本通達1-5-23 にも同じ内容の留意事項が置かれています。自社の手当が所得税で非課税とされる範囲に収まっているかどうかは、税理士または税務署にご確認ください。
- 6月分の給与を7月に支払っています。特定期間の集計にはどちらが入りますか?
- 質疑応答事例「特定期間の給与等支払額の範囲」は、未払額は含まれませんと回答しています。消費税法第9条の2第3項も「当該事業者が第一項の特定期間中に支払つた」給与等の金額の合計額と書いており、支払ったものを集計する形になっています。自社の支払時期のあてはめは、税理士または税務署にご確認ください。
- 出向者を受け入れています。出向元へ払う給与負担金は集計に入りますか?
- 質疑応答事例「特定期間の給与等支払額の範囲」は、出向契約に基づき出向先事業者が出向元事業者に対して支払う給与負担金について、出向する使用人に対する給与を出向元事業者が支払い、その支払明細書を出向元事業者が交付する場合には、出向元事業者の給与支払額となるため、出向先事業者における特定期間の給与支払額には該当しないと回答しています。誰が給与を支払い誰が支払明細書を交付しているかで結論が変わるため、自社の契約内容は税理士または税務署にご確認ください。
- 給与等支払額で判定できないのは、どういう事業者ですか?
- No.6501 は、令和6年10月1日以後に開始する課税期間から、国外事業者(所得税法に規定する非居住者である個人事業者および法人税法に規定する外国法人をいいます)については、特定期間における1,000万円の判定を給与等支払額の合計額により行うことはできないと記載しています。消費税法第9条の2第3項も「国外事業者以外の事業者が」と書き出しており、対象を限定しています。該当するかどうかは、税理士または税務署にご確認ください。
個別の判断について
適用の可否や有利・不利は、事業区分・基準期間の課税売上高・過去の届出など個別の事情で変わります。実際の判断の前に、税理士等の専門家、または所轄の税務署にご相談ください。
出典(一次情報)
- 国税庁 質疑応答事例「特定期間の給与等支払額の範囲」(令和7年8月1日現在)確認日 2026-08-21
- 国税庁 消費税法基本通達 第1章第5節 納税義務の免除の特例(1-5-23)確認日 2026-08-21
- 国税庁 タックスアンサー No.6501 納税義務の免除(令和8年4月1日現在法令等)確認日 2026-10-08
- e-Gov 法令検索 消費税法 第9条の2(令和8年10月1日施行版)確認日 2026-08-21
- e-Gov 法令検索 消費税法施行規則 第11条の2(特定期間における給与等の金額・令和8年10月1日施行版)確認日 2026-08-21
- e-Gov 法令検索 所得税法施行規則 第100条第1項(給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書・令和8年5月22日施行版)確認日 2026-08-21
法令・国税庁・省庁など公的機関の公表資料のみを参照しています(解説記事等の二次情報は使用していません)。