3割特例から「特定少額資産の譲渡」を除く文言は2028年4月1日に動く(附則17条の単位は「資産の譲渡等」)
最終確認日: (数値は一次情報で照合)
3割特例(平成28年改正法附則51条の3第1項・第2項)は、特別控除税額の計算の対象から「特定少額資産の譲渡」に該当するものを除くと定めています。その「特定少額資産の譲渡」の定義は消費税法2条1項8号の6に置かれますが、この号があるのは2028年4月1日施行版で、2026年10月1日施行版の同条には8号の5までしかありません。この空白の期間について、令和8年改正法(令和8年法律第12号)附則90条2項が「令和八年十月一日から令和十年三月三十一日までの間における」3割特例の適用について、特定少額資産の譲渡に関する文言を読み替えると定めています。読み替えの末日である2028年3月31日は、8号の6が新設される2028年4月1日の前日です。そして読み替えが終わったあとを引き取る同附則17条は「令和十年四月一日以後に国内において事業者が行う資産の譲渡等…に係る消費税について適用し、同日前に国内において事業者が行った資産の譲渡等…については、なお従前の例による」と、資産の譲渡等を単位にして書かれています。課税期間を単位にした書き方ではありません。3割特例の対象となる課税期間は個人事業者の暦年ですので、2028年(令和10年)分は4月1日をまたぎます。御社のどの取引がどちらに当たるかの当てはめは、税理士または税務署にご確認ください。
この記事の要点
- 3割特例の特別控除税額は、課税資産の譲渡等に係る消費税額から売上げに係る対価の返還等の消費税額を控除した残額の**100分の70**に相当する金額とされ、その計算から「特定少額資産の譲渡」に該当するものを除くと書かれている(平成28年改正法附則51条の3第1項・第2項。e-Gov原文・確認日2026-10-03)。
- 「特定少額資産の譲渡」の定義(消費税法2条1項8号の6)は**2028年4月1日施行版**にあり、**2026年10月1日施行版の同条にはない**(e-Gov原文・確認日2026-10-03)。
- その空白を埋めるのが令和8年改正法附則90条2項で、読み替えの期間は「**令和八年十月一日から令和十年三月三十一日まで**」と書かれている(e-Gov原文・確認日2026-10-03)。
- 読み替えの後を引き取る同附則17条は「**令和十年四月一日以後に国内において事業者**(中略)**が行う資産の譲渡等**」に適用し、同日前に行った資産の譲渡等については、なお従前の例によるとしている。単位は資産の譲渡等であって、課税期間ではない(e-Gov原文・確認日2026-10-03)。
- 同じ附則の18条は、令和10年4月1日を含む課税期間について「新消費税法が当該課税期間の基準期間…の初日から施行されていたものとし」と、課税期間が施行日をまたぐ場合を明文で処理している。またぎの処理が必要な箇所には条文が置かれている(e-Gov原文・確認日2026-10-03)。
結論から
3割特例の計算には、「特定少額資産の譲渡」に該当するものを除くという文言が入っています。
ところが、その定義そのものが、まだ消費税法にありません。
定義が入るのは 2028年4月1日施行版です。それまでの間は、読み替えで穴を埋めています。
1. 3割特例の条文に、除外が書かれている
3割特例は、平成28年改正法(平成28年法律第15号)の附則51条の3にあります。消費税法の本則ではありません。
第1項は、対象をこう限っています。
消費税法第二条第一項第三号に規定する個人事業者である適格請求書発行事業者の令和九年及び令和十年に含まれる各課税期間
第2項が、特別控除税額の中身を定めています。
前項に規定する特別控除税額とは、当該適格請求書発行事業者の当該課税期間の課税資産の譲渡等(特定少額資産の譲渡(消費税法第二条第一項第八号の六に規定する特定少額資産の譲渡をいう。以下この項において同じ。)に該当するもの及び同法第七条第一項若しくは第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。)に係る課税標準である金額の合計額に対する消費税額から当該課税期間における消費税法第三十八条第一項に規定する売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額(特定少額資産の譲渡に係るものを除く。)の合計額を控除した残額の百分の七十に相当する金額をいう。
除外は、売上側と、売上げに係る対価の返還等の側の両方に書かれています。
2. ところが、その定義はまだ消費税法に無い
「特定少額資産の譲渡」の定義は、消費税法2条1項8号の6に置かれます。
当サイトで e-Gov 法令検索から両方の版を取得して確かめたところ、次のとおりでした(確認日 2026年10月3日)。
| 版 | 2条1項に8号の6があるか |
|---|---|
| 2026年10月1日施行版(現在の施行版) | ありません(8号の5までです) |
| 2028年4月1日施行版 | あります |
2028年4月1日施行版の原文は、次のとおりです。
八の六 特定少額資産の譲渡 資産の譲渡等のうち、通信販売の方法として政令で定める方法による国内以外の地域に所在する資産(一の資産について対価の額(…)が一万円以下であり、かつ、国内以外の地域から国内に宛てて発送されるものに限る。)の譲渡をいう。
この号を新設するのは、令和8年改正法の第三条の規定です。そして同附則1条9号イが、その施行日を令和10年4月1日と定めています。
九 次に掲げる規定 令和十年四月一日 イ 第三条の規定(同条中消費税法別表第二第十一号ロの改正規定を除く。)並びに附則第十七条から第十九条まで及び第二十条第一項の規定
3. 空白を埋めているのが附則90条2項
定義が無い期間に、除外の文言だけが残っていては読めません。そこを埋めているのが令和8年改正法附則90条2項です。
2 令和八年十月一日から令和十年三月三十一日までの間における新二十八年改正法附則第五十一条の三第一項及び第二項の規定の適用については、同項中「特定少額資産の譲渡(消費税法第二条第一項第八号の六に規定する特定少額資産の譲渡をいう。以下この項において同じ。)に該当するもの及び同法」とあるのは「消費税法」と、「(特定少額資産の譲渡に係るものを除く。)の合計額」とあるのは「の合計額」とする。
読み替えると、除外の文言が消えます。
そして読み替えの末日は 2028年3月31日です。これは、8号の6が施行される 2028年4月1日の前日にあたります。
4. 読み替えが終わったあとを引き取るのは附則17条
読み替えの期間が終わったあと、何を基準に適用するのか。それを定めているのが、同じ附則の17条です。
(消費税法の一部改正に伴う経過措置の原則)第十七条 この附則に別段の定めがあるものを除き、第三条の規定による改正後の消費税法(以下附則第二十一条までにおいて「新消費税法」という。)の規定は、令和十年四月一日以後に国内において事業者(中略)が行う資産の譲渡等…に係る消費税について適用し、同日前に国内において事業者が行った資産の譲渡等…に係る消費税については、なお従前の例による。
ここで基準になっているのは、個々の資産の譲渡等が行われた日です。
これは、課税期間を基準にした書き方とは違います。たとえば同じ附則90条でも、3項は「令和八年十月一日以後に開始する課税期間」、1項は「令和八年十月一日以後に終了する特例対象課税期間」と、課税期間を基準に書かれています(この2つの違いは[別記事](/articles/1oku-gendo-kani-todokede-tekiyo-jiki/)で扱いました)。
どちらの書き方が使われているかは、条文ごとに違います。
5. 3割特例の対象となる課税期間は、暦年です
附則51条の3第1項は、対象から除く課税期間をこう書いています。
前条第一項第二号から第四号までに掲げる課税期間を除く
その第4号(附則51条の2第1項4号)は、次のとおりです。
四 消費税法第十九条第一項第三号から第四号の二までの規定の適用を受ける課税期間及び同条第二項又は第四項の規定により一の課税期間とみなされる期間
消費税法19条1項3号から4号の2までは、課税期間を1か月や3か月に短縮する特例です(この点は[別記事](/articles/kazei-kikan-tanshuku-2wari-3wari/)で扱いました)。
そして同条1項1号は、個人事業者の課税期間を次のとおり定めています。
一 個人事業者(第三号又は第三号の二に掲げる個人事業者を除く。) 一月一日から十二月三十一日までの期間
したがって、3割特例の対象となる課税期間は暦年です。そして2028年(令和10年)分の暦年は、2028年4月1日をまたぎます。
6. またぎの処理は、必要な箇所には明文で置かれている
同じ附則の18条は、課税期間が2028年4月1日をまたぐ場合を、正面から書いています。
(小規模事業者の納税義務の免除の特例に関する経過措置)第十八条 …令和十年四月一日を含む課税期間…において、新消費税法が当該課税期間の基準期間…又は特定期間…の初日から施行されていたものとし、…当該課税期間の基準期間における課税売上高…又は特定期間における課税売上高…が千万円を超えるときは、当該事業者の同月一日から当該課税期間の末日までの間に行う課税資産の譲渡等…については、新消費税法第九条第一項本文の規定は、適用しない。
ここでは「同月一日から当該課税期間の末日までの間に行う」と、課税期間の途中で区切る書き方が明文で使われています。
つまり、またぎの処理が必要な箇所には、条文が置かれています。
7. この記事が断定していないこと
ここまでは、すべて e-Gov 法令検索で取得した条文の原文と、その施行日です。
いっぽうで、次の点については、当サイトでは国税庁が個別の当てはめを示した資料を確認できていません。
- 2028年4月1日をまたぐ令和10年分の暦年について、除外が具体的にどの取引から働くのか
- 御社の個々の通信販売が「特定少額資産の譲渡」に該当するかどうか
- 「通信販売の方法として政令で定める方法」の内容(この政令は当サイトで未確認です)
条文の文言と、御社の取引への当てはめは別のことです。判断の前に、税理士または税務署にご確認ください。
まとめ
- 3割特例の特別控除税額は100分の70で、計算から「特定少額資産の譲渡」に該当するものを除くと書かれている
- その定義(消費税法2条1項8号の6)は2028年4月1日施行版にあり、2026年10月1日施行版には無い
- 空白の期間は附則90条2項が読み替えで埋め、読み替えの末日は2028年3月31日=8号の6が施行される日の前日
- 読み替えの後を引き取る附則17条は「資産の譲渡等」を単位に書かれており、課税期間を単位にしていない
- 同じ附則の18条は、課税期間が施行日をまたぐ場合を明文で処理している
- 当てはめは、税理士または税務署にご確認ください
経営者の疑問と、制度の事実
答えるのは制度の事実だけです。有利・不利は事業ごとの事情で変わるため、判断は税理士・税務署にご確認ください。
経営者うちは個人で、ネット通販もやっている。2028年の春に何か変わるのか、はっきりしてほしい。
制度の事実条文の事実としてお伝えできるのは、次の3点です。第1に、消費税法2条1項8号の6(特定少額資産の譲渡の定義)は2028年4月1日施行版で新設され、2026年10月1日施行版にはありません。第2に、令和8年改正法附則90条2項が、3割特例について特定少額資産の譲渡に関する文言を読み替える期間を「令和八年十月一日から令和十年三月三十一日まで」と定めています。第3に、同附則17条が「令和十年四月一日以後に国内において事業者が行う資産の譲渡等」に改正後の規定を適用し、同日前に行った資産の譲渡等については、なお従前の例によるとしています。御社の取引がこれらのどこに当たるかという判断は、税理士または税務署にご確認ください。
経営者附則17条が「資産の譲渡等」と書いてあるのと、「課税期間」と書いてあるのとでは、何が違うのか。
制度の事実条文の文言の違いとしてご説明します。附則17条は「令和十年四月一日以後に国内において事業者が行う資産の譲渡等…に係る消費税について適用し、同日前に国内において事業者が行った資産の譲渡等…については、なお従前の例による」と書かれており、基準となっているのは個々の資産の譲渡等が行われた日です。これに対して、たとえば令和8年改正法附則90条3項は「令和八年十月一日以後に開始する課税期間」、同条1項は「令和八年十月一日以後に終了する特例対象課税期間」と、課税期間を基準に書かれています。どちらの書き方が使われているかは条文ごとに違います。御社の場合にどの条文のどの基準が働くかは、税理士または税務署にご確認ください。
経営者こちらで判断して、先に経理のやり方を決めてしまってよいか。
制度の事実この記事がお示しできるのは、e-Gov法令検索で取得した条文の原文と、その施行日です。附則17条や附則90条2項の当てはめ、および御社の個々の取引が特定少額資産の譲渡に該当するかどうかの判定については、国税庁が個別の設例を示した資料を当サイトでは確認できていません。経理の取扱いを決める前に、税理士または税務署にご確認ください。
よくある質問
- 3割特例の条文は、どこにありますか。
- 平成28年改正法(所得税法等の一部を改正する法律・平成28年法律第15号)の附則51条の3です。消費税法そのものの本則ではなく、改正法の附則に置かれています。e-Gov法令検索では、消費税法のページに添付された形で読めます。第1項は「消費税法第二条第一項第三号に規定する個人事業者である適格請求書発行事業者の令和九年及び令和十年に含まれる各課税期間」を対象とし、第2項が特別控除税額を課税資産の譲渡等に係る消費税額から売上げに係る対価の返還等の消費税額を控除した残額の100分の70に相当する金額と定めています。御社が対象に当たるかは、税理士または税務署にご確認ください。
- 「特定少額資産の譲渡」とは何ですか。
- 消費税法2条1項8号の6の定義です。2028年4月1日施行版の原文は「特定少額資産の譲渡 資産の譲渡等のうち、通信販売の方法として政令で定める方法による国内以外の地域に所在する資産(一の資産について対価の額…が一万円以下であり、かつ、国内以外の地域から国内に宛てて発送されるものに限る。)の譲渡をいう」としています。対価の額には、その譲渡につき課されるべき消費税額および地方消費税額に相当する額を含まないと同号の括弧書きが定めています。なお、この号は2026年10月1日施行版の同条にはありません。個別の取引が当たるかどうかは、税理士または税務署にご確認ください。
- 読み替えの末日が2028年3月31日なのは、課税期間の区切りだからですか。
- 条文の施行日から見ると、2028年3月31日は2028年4月1日の前日です。令和8年改正法附則1条9号イは「第三条の規定(同条中消費税法別表第二第十一号ロの改正規定を除く。)並びに附則第十七条から第十九条まで及び第二十条第一項の規定」を令和10年4月1日から施行するとしています。消費税法2条1項8号の6を新設するのがこの第三条の規定です。また3割特例の対象は、附則51条の3第1項が「前条第一項第二号から第四号までに掲げる課税期間を除く」としており、除かれる第4号は消費税法19条1項3号から4号の2までの規定の適用を受ける課税期間などです。消費税法19条1項1号は個人事業者の課税期間を「一月一日から十二月三十一日まで」と定めています。これらの条文の関係をどう当てはめるかは、税理士または税務署にご確認ください。
- 課税期間が2028年4月1日をまたぐ場合について、条文に書いてあるところはありますか。
- 同じ附則の18条がその例です。18条1項は、令和10年4月1日を含む課税期間について「新消費税法が当該課税期間の基準期間…又は特定期間…の初日から施行されていたものとし」と定め、そのうえで基準期間における課税売上高または特定期間における課税売上高が1,000万円を超えるときは「当該事業者の同月一日から当該課税期間の末日までの間に行う課税資産の譲渡等…については、新消費税法第九条第一項本文の規定は、適用しない」としています。小規模事業者の納税義務の免除の特例については、またぎの扱いが明文で置かれているということです。御社の課税期間での当てはめは、税理士または税務署にご確認ください。
個別の判断について
適用の可否や有利・不利は、事業区分・基準期間の課税売上高・過去の届出など個別の事情で変わります。実際の判断の前に、税理士等の専門家、または所轄の税務署にご相談ください。
出典(一次情報)
- e-Gov法令検索 消費税法(2026年10月1日施行版・版ID 363AC0000000108_20261001_507AC0000000070)に添付された所得税法等の一部を改正する法律(平成二八年三月三一日法律第一五号)附則第51条の3第1項・第2項の原文確認日 2026-10-03
- e-Gov法令検索 消費税法(2026年10月1日施行版)に添付された所得税法等の一部を改正する法律(令和八年三月三一日法律第一二号)附則第90条第2項の原文確認日 2026-10-03
- e-Gov法令検索 消費税法 第2条第1項第8号の6(特定少額資産の譲渡の定義・2028年4月1日施行版・版ID 363AC0000000108_20280401_508AC0000000012)の原文確認日 2026-10-03
- e-Gov法令検索 消費税法(2028年4月1日施行版)に添付された所得税法等の一部を改正する法律(令和八年三月三一日法律第一二号)附則第1条第9号イ・第17条・第18条の原文確認日 2026-10-03
- e-Gov法令検索 消費税法 第19条(課税期間)第1項(2026年10月1日施行版)の原文確認日 2026-10-03
法令・国税庁・省庁など公的機関の公表資料のみを参照しています(解説記事等の二次情報は使用していません)。