1億円の上限は「開始する課税期間」から、簡易課税の届出期限の特例は「終了する課税期間」から(令和8年改正法附則90条)
最終確認日: (数値は一次情報で照合)
令和8年改正法(所得税法等の一部を改正する法律・令和8年法律第12号)の附則90条は、1つの条の中で消費税の2つの見直しの適用時期を定めていますが、その基準となる軸が異なります。同条3項は、1億円の控除限度額(平成28年改正法附則52条1項の控除対象課税仕入れに係る部分)について「令和八年十月一日以後に開始する課税期間…から適用し、同日前に開始した課税期間については、なお従前の例による」としています。同条1項は、2割特例を受けた事業者の簡易課税制度選択届出書の提出期限の特例(平成28年改正法附則51条の2第6項)について「令和八年十月一日以後に終了する特例対象課税期間…から適用し、同日前に終了する特例対象課税期間については、なお従前の例による」としています。一方は課税期間が開始する日を見て、他方は課税期間が終了する日を見ます。そのため、暦年を課税期間とする個人事業者の令和8年分(2026年1月1日から12月31日まで)は、開始日で見る1億円の上限については同日前に開始した課税期間に当たりますが、終了日で見る届出期限の特例については同日以後に終了する課税期間に当たります。また1億円を超えるかどうかの集計は、平成28年改正法附則52条1項の括弧書きにより「個人事業者にあってはその年、法人にあってはその事業年度」の単位で行われ、適用開始を判定する課税期間の単位とは別に書かれています。自社の課税期間での当てはめは、税理士または税務署にご確認ください。
この記事の要点
- 令和8年改正法附則90条3項は、1億円の控除限度額について「令和八年十月一日以後に開始する課税期間」から適用し、同日前に開始した課税期間については、なお従前の例によるとしている(e-Gov原文・確認日2026-09-22)。
- 同条1項は、2割特例を受けた事業者の簡易課税制度選択届出書の提出期限の特例について「令和八年十月一日以後に終了する特例対象課税期間」から適用し、同日前に終了する特例対象課税期間については、なお従前の例によるとしている(e-Gov原文・確認日2026-09-22)。
- 同じ条の中で、一方は「開始する」、他方は「終了する」と書かれている。基準となる日が逆である。
- そのため暦年を課税期間とする個人事業者の令和8年分(2026年1月1日開始・2026年12月31日終了)は、1億円の上限については「同日前に開始した課税期間」に当たり、届出期限の特例については「同日以後に終了する特例対象課税期間」に当たる。
- 1億円を超えるかどうかの集計単位は、平成28年改正法附則52条1項の括弧書きにより「個人事業者にあってはその年、法人にあってはその事業年度」である。適用開始を判定する課税期間の単位とは別に書かれている。
- 附則90条3項の括弧書きは、消費税法19条2項または4項の規定により一の課税期間とみなされる期間を、ここでいう課税期間に含めると明記している。
- 同条2項は、令和8年10月1日から令和10年3月31日までの間における3割特例(平成28年改正法附則51条の3第1項・第2項)の適用について、特定少額資産の譲渡に関する文言を読み替える形で定めている。
令和8年の改正で、消費税の取扱いがいくつか変わります。
変わること自体はご存じでも、「いつの期から変わるのか」で迷う場面があります。
その適用時期を定めているのが、令和8年改正法(令和8年法律第12号)の附則90条です。
この条には、1つの条の中に3つの項があり、そのうち2つで基準となる日が逆になっています。
3項 — 1億円の上限は「開始する課税期間」から
免税事業者などからの仕入れについて、控除の対象から一定額を超える部分を除く規定があります。その上限が10億円から1億円に引き下げられました。この上限そのものの内容は、当サイトの別記事([「1億円の控除限度額」とは何か](/articles/1oku-kojo-gendogaku/))で扱いました。
ここで扱うのは、その上限がいつの期から効くのかです。
附則90条3項の原文を引きます。
3 新二十八年改正法附則第五十二条第一項(同項に規定する控除対象課税仕入れに係る部分に限る。)の規定は、令和八年十月一日以後に開始する課税期間(消費税法第十九条第一項に規定する課税期間(同条第二項又は第四項の規定により一の課税期間とみなされる期間を含む。)をいう。以下この項において同じ。)から適用し、同日前に開始した課税期間については、なお従前の例による。
見るのは、その課税期間が始まった日です。
| 事業者 | 令和8年10月1日以後に最初に開始する課税期間 |
|---|---|
| 暦年を課税期間とする個人事業者 | 2027年1月1日開始の令和9年分 |
| 12月決算の法人 | 2027年1月1日開始の期 |
| 3月決算の法人 | 2027年4月1日開始の期 |
| 9月決算の法人 | 2026年10月1日開始の期 |
9月決算の法人だけ、2026年のうちに始まります。10月1日がそのまま期首だからです。
1項 — 簡易課税の届出期限の特例は「終了する課税期間」から
2割特例を受けた事業者が、その翌期から簡易課税で計算したい場合、届出書の提出期限が延びる特例があります。この特例の内容は、当サイトの別記事([簡易課税の届出は、あとから出せる場合があります](/articles/kani-todokede-kigen-tokurei/))で扱いました。
同じ附則90条の、1項です。
第九十条 …新二十八年改正法(中略)附則第五十一条の二第六項の規定は、令和八年十月一日以後に終了する特例対象課税期間(同項に規定する特例対象課税期間をいう。以下この項において同じ。)から適用し、同日前に終了する特例対象課税期間については、なお従前の例による。
こちらが見るのは、その課税期間が終わる日です。
「特例対象課税期間」が何かは、平成28年改正法附則51条の2第6項に書かれています。
6 第一項の規定の適用を受けた適格請求書発行事業者が、消費税法第三十七条第一項の規定による届出書を当該適用を受けた課税期間の翌課税期間(以下この項において「特例対象課税期間」という。)に係る同法第四十五条第一項の規定による申告書の提出期限までにその納税地を所轄する税務署長に提出した場合において、当該届出書に当該特例対象課税期間について同法第三十七条第一項の規定の適用を受ける旨を記載したときは、当該届出書を当該特例対象課税期間の初日の前日に当該税務署長に提出したものとみなして、同項の規定を適用する。
2割特例を受けた課税期間の、翌課税期間のことです。
同じ期でも、片方は当たり、片方は当たらない
暦年を課税期間とする個人事業者の令和8年分で並べてみます。
| 期間 | 附則90条3項(開始で見る) | 附則90条1項(終了で見る) | |
|---|---|---|---|
| 令和8年分 | 2026年1月1日〜2026年12月31日 | 10月1日前に開始した課税期間 | 10月1日以後に終了する課税期間 |
同じ1年が、一方では「前」、他方では「以後」になります。
見ている日が、始まりと終わりで別だからです。
なお、附則90条1項が対象とするのは特例対象課税期間ですので、そもそも前の期に2割特例を受けているかどうかが先の前提になります。この点は条文に書かれているとおりで、当てはめは税理士または税務署にご確認ください。
1億円を数える単位は、課税期間ではない
もう1つ、書き分けられている箇所があります。
適用がいつ始まるかは課税期間で判定します(附則90条3項)。しかし1億円を超えたかどうかを数える期間は、別の条文に書かれています。
平成28年改正法附則52条1項の括弧書きです。
(当該事業者が、消費税法第二条第一項第三号に規定する個人事業者にあってはその年、法人にあってはその同項第十三号に規定する事業年度において一の者から行う当該課税仕入れに係る支払対価の額…の合計額が一億円を超える場合における当該超える部分の課税仕入れを除く。…)
数えるのは、個人事業者はその年、法人はその事業年度です。
課税期間の特例(3か月ごと・1か月ごと)を選んでいない事業者であれば、この2つは同じ期間になります。選んでいる場合は、1年の中に課税期間が複数並びます。
条文としては、はじめから別の単位で書かれています。
課税期間の短縮そのものについては、当サイトの別記事([課税期間を1か月・3か月に短縮すると、2割特例・3割特例は適用できない課税期間になる](/articles/kazei-kikan-tanshuku-2wari-3wari/))で扱いました。
みなし課税期間も「課税期間」に含まれます
附則90条3項の括弧書きには、次の一文が入っています。
(消費税法第十九条第一項に規定する課税期間(同条第二項又は第四項の規定により一の課税期間とみなされる期間を含む。)をいう。…)
消費税法19条2項は、課税期間を短縮・変更する届出をしたとき、その年や事業年度の一部が一の課税期間とみなされる場合を定めています。
2 前項第三号から第四号の二までの規定による届出の効力は、これらの規定による届出書の提出があつた日…の属するこれらの規定に定める期間の翌期間…の初日以後に生ずるものとする。この場合において、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める期間をそれぞれ一の課税期間とみなす。
この「みなされる期間」も、開始日を見る対象に入ると、附則90条3項が明記しています。
2項 — 3割特例の文言の読替え
附則90条には2項もあります。3割特例に関するものです。
2 令和八年十月一日から令和十年三月三十一日までの間における新二十八年改正法附則第五十一条の三第一項及び第二項の規定の適用については、同項中「特定少額資産の譲渡(消費税法第二条第一項第八号の六に規定する特定少額資産の譲渡をいう。以下この項において同じ。)に該当するもの及び同法」とあるのは「消費税法」と、「(特定少額資産の譲渡に係るものを除く。)の合計額」とあるのは「の合計額」とする。
3割特例の計算から特定少額資産の譲渡に係る部分を除くという文言を、この期間については読み替えるという内容です。
特定少額資産の譲渡は、消費税法2条1項8号の6に定義が置かれます。この号が入るのは2028年4月1日施行版からで、2026年10月1日施行版の同条にはまだありません。
3割特例そのものの対象と除外については、当サイトの別記事([3割特例が使えない8つのケース](/articles/3wari-tsukaenai-8-cases/))で扱いました。
この記事のまとめ
- 令和8年改正法附則90条は、1つの条の中で3つの適用時期を定めている
- 3項(1億円の上限)は「令和8年10月1日以後に開始する課税期間」から。同日前に開始した課税期間は、なお従前の例による
- 1項(簡易課税の届出期限の特例)は「令和8年10月1日以後に終了する特例対象課税期間」から。同日前に終了する期間は、なお従前の例による
- 開始と終了で、見る日が逆である。暦年の個人事業者の令和8年分は、3項では「前に開始した課税期間」、1項では「以後に終了する課税期間」に当たる
- 1億円を数える単位は「その年・その事業年度」(附則52条1項の括弧書き)で、適用開始を判定する課税期間とは別に書かれている
- 3項の課税期間には、消費税法19条2項・4項でみなされる期間も含まれる
この記事は制度の内容を一般的に説明したものであり、個別の事案についての税務相談ではありません。自社の課税期間がどの区分に当たるか、いつから新しい取扱いになるかについては、税理士または税務署にご確認ください。
経営者の疑問と、制度の事実
答えるのは制度の事実だけです。有利・不利は事業ごとの事情で変わるため、判断は税理士・税務署にご確認ください。
経営者うちは3月決算だ。1億円の上限は令和8年10月1日からと聞いたが、10月から始まる期などない。どう考えればいいのか。
制度の事実令和8年改正法附則90条3項は、令和8年10月1日という日そのものではなく、その日以後に開始する課税期間を基準にしています。原文は「令和八年十月一日以後に開始する課税期間…から適用し、同日前に開始した課税期間については、なお従前の例による」です。3月決算の法人であれば、2026年4月1日に開始した期は令和8年10月1日より前に開始していますので、この規定の対象外となり、なお従前の例によることになります。次に開始する期は2027年4月1日ですので、そこからが対象になります。なお国税庁のQ&A問130も、控除限度額の見直しは令和8年10月1日以後に開始する課税期間から適用されるとしています。御社の期の当てはめは、税理士または税務署にご確認ください。
経営者同じ改正の同じ条なのに、片方は開始で片方は終了というのは書き間違いではないのか。
制度の事実条文原本ではそのように書き分けられています。附則90条1項は「令和八年十月一日以後に終了する特例対象課税期間…から適用し」、同条3項は「令和八年十月一日以後に開始する課税期間…から適用し」です。1項が対象とする平成28年改正法附則51条の2第6項は、届出書の提出期限を翌課税期間の申告書提出期限まで延ばす規定で、その翌課税期間そのものを特例対象課税期間と呼んでいます。3項が対象とする附則52条1項は、控除の対象から一定額を超える部分を除く規定です。規定の性質が違うため基準も別になっている、という以上のことは条文には書かれていません。どちらが御社に当てはまるかは、税理士または税務署にご確認ください。
経営者1億円は年間の取引先ごとの合計でいいのか。期の途中で決算が変わったらどう数えるのか。
制度の事実集計の範囲について、平成28年改正法附則52条1項の括弧書きは、個人事業者にあってはその年、法人にあってはその事業年度において、一の者から行う課税仕入れに係る支払対価の額の合計額としています。取引先ごとに数える点と、税込みの支払対価の額で数える点は、この括弧書きに書かれているとおりです。他方、この規定がいつから適用されるかを判定する単位は課税期間であり、附則90条3項の括弧書きは、消費税法19条2項または4項により一の課税期間とみなされる期間もそこに含めるとしています。事業年度の変更などで期間の区切りが動く場合の具体的な当てはめについては、税理士または税務署にご確認ください。
よくある質問
- 1億円の上限は、いつの課税期間から適用されますか。
- 令和8年改正法附則90条3項は「新二十八年改正法附則第五十二条第一項(同項に規定する控除対象課税仕入れに係る部分に限る。)の規定は、令和八年十月一日以後に開始する課税期間…から適用し、同日前に開始した課税期間については、なお従前の例による」としています。基準は課税期間が開始する日です。暦年を課税期間とする個人事業者であれば、令和9年分(2027年1月1日開始)が最初の課税期間になります。12月決算の法人も同じく2027年1月開始の期からです。3月決算の法人であれば、2026年4月1日に開始した期は同日前に開始した課税期間に当たり、2027年4月1日に開始する期からとなります。自社の当てはめは、税理士または税務署にご確認ください。
- 簡易課税の届出期限の特例は、いつの課税期間から適用されますか。
- 令和8年改正法附則90条1項は「新二十八年改正法附則第五十一条の二第六項の規定は、令和八年十月一日以後に終了する特例対象課税期間…から適用し、同日前に終了する特例対象課税期間については、なお従前の例による」としています。基準は課税期間が終了する日です。ここでいう特例対象課税期間は、平成28年改正法附則51条の2第6項により、2割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間を指します。個別の当てはめは、税理士または税務署にご確認ください。
- 同じ令和8年分なのに、片方は適用されて片方は適用されないということが起きますか。
- 条文の書き方からは、そのように読める組み合わせがあります。暦年を課税期間とする個人事業者の令和8年分は、2026年1月1日に開始し、2026年12月31日に終了します。開始日で見る附則90条3項の基準では「令和8年10月1日前に開始した課税期間」に当たります。終了日で見る附則90条1項の基準では「令和8年10月1日以後に終了する課税期間」に当たります。ただし附則90条1項が対象とするのは特例対象課税期間、つまり2割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間ですので、その前提を満たしているかどうかが先に問題になります。自社がどちらに当たるかの判定は、税理士または税務署にご確認ください。
- 1億円は、どの期間で合計するのですか。
- 平成28年改正法附則52条1項の括弧書きは「当該事業者が、消費税法第二条第一項第三号に規定する個人事業者にあってはその年、法人にあってはその同項第十三号に規定する事業年度において一の者から行う当該課税仕入れに係る支払対価の額…の合計額が一億円を超える場合における当該超える部分の課税仕入れを除く」としています。集計の単位は個人事業者であればその年、法人であればその事業年度です。これに対して適用開始を判定する単位は、附則90条3項が定める課税期間です。課税期間の特例を選んでいない事業者であれば両者は一致しますが、条文としては別に書かれています。自社の集計方法は、税理士または税務署にご確認ください。
- 課税期間を3か月や1か月に短縮している場合はどうなりますか。
- 消費税法19条1項3号から4号の2までは、課税期間を3か月ごと・1か月ごとに短縮または変更する届出書を提出した事業者の課税期間を定めています。この場合、1年の中に複数の課税期間が並びます。一方で1億円の集計は、附則52条1項の括弧書きによりその年またはその事業年度の単位で行われます。また附則90条3項の括弧書きは、消費税法19条2項または4項の規定により一の課税期間とみなされる期間も、ここでいう課税期間に含めるとしています。課税期間の特例を選んでいる場合の当てはめは、税理士または税務署にご確認ください。
- 附則90条2項には何が書かれていますか。
- 附則90条2項は「令和八年十月一日から令和十年三月三十一日までの間における新二十八年改正法附則第五十一条の三第一項及び第二項の規定の適用については、同項中「特定少額資産の譲渡(消費税法第二条第一項第八号の六に規定する特定少額資産の譲渡をいう。以下この項において同じ。)に該当するもの及び同法」とあるのは「消費税法」と、「(特定少額資産の譲渡に係るものを除く。)の合計額」とあるのは「の合計額」とする」としています。3割特例の計算から特定少額資産の譲渡に係る部分を除くという文言を、この期間については読み替える形です。個別の当てはめは、税理士または税務署にご確認ください。
個別の判断について
適用の可否や有利・不利は、事業区分・基準期間の課税売上高・過去の届出など個別の事情で変わります。実際の判断の前に、税理士等の専門家、または所轄の税務署にご相談ください。
出典(一次情報)
- e-Gov法令検索 消費税法(2026年10月1日施行版・版ID 363AC0000000108_20261001_428AC0000000015)に添付された所得税法等の一部を改正する法律(令和八年三月三一日法律第一二号)附則第90条の原文確認日 2026-09-22
- e-Gov法令検索 消費税法(2026年10月1日施行版)に添付された所得税法等の一部を改正する法律(平成二八年三月三一日法律第一五号)附則第52条第1項・第51条の2第6項の原文確認日 2026-09-22
- e-Gov法令検索 消費税法 第19条(課税期間)第1項・第2項(2026年10月1日施行版)の原文確認日 2026-09-22
- 国税庁 消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問130【令和4年4月追加・令和8年4月改訂】(PDF原本)確認日 2026-09-22
法令・国税庁・省庁など公的機関の公表資料のみを参照しています(解説記事等の二次情報は使用していません)。