令和8年度税制改正に対応

返品・値引きを売上から直接引く経理処理(純額処理)でも、帳簿の保存は要ります(消費税法基本通達14-1-8)

最終確認日: (数値は一次情報で照合)

結論から

消費税法基本通達14-1-8は、事業者が課税期間に国内において行った課税資産の譲渡等の税率の異なるごとの金額から、売上げに係る対価の返還等につき税率の異なるごとに合理的に区分した金額をそれぞれ控除する経理処理を「継続して行っているときは、これを認める」と定めています。売上から直接引く経理処理です。その注は「この場合、当該売上げに係る対価の返還等の金額については、別途法第38条第1項の規定の適用はないのであるが、同条第2項に規定する帳簿を保存する必要があることに留意する」としています。消費税法38条2項は、返還等をした金額の明細を記録した帳簿を保存しない場合には38条1項を適用しない、と定めた規定です。国税庁タックスアンサーNo.6359も、適用要件として「課税資産の譲渡等の金額からその売上げに係る対価の返還等の金額を控除する経理処理を行っている場合も同様です」と書いています。また通達14-1-8の本文の括弧書きは「免税事業者であった課税期間において行った課税資産の譲渡等に係るものを除く」としています。どちらの経理処理を採るかについては、税理士または税務署にご確認ください。

この記事の要点

  • 売上げに係る対価の返還等(返品・値引き・割戻し)の処理には、2つの経理処理がある。原則は消費税法38条1項により課税標準額に対する消費税額から控除する方法で、もう1つが売上そのものから直接引く経理処理である。
  • 後者を認めているのが消費税法基本通達14-1-8である。ただし条件が付いている。条文上の言葉は「継続して行っているときは、これを認める」で、継続適用が前提になっている。
  • 14-1-8の注は「別途法第38条第1項の規定の適用はないのであるが、同条第2項に規定する帳簿を保存する必要があることに留意する」と明記している。売上から直接引いても、帳簿の保存が不要になるという書き方ではない。
  • 消費税法38条2項は「前項の規定は、事業者が当該売上げに係る対価の返還等をした金額の明細を記録した帳簿を保存しない場合には、当該保存のない売上げに係る対価の返還等に係る消費税額については、適用しない」と定めている。ただし書として、災害その他やむを得ない事情により保存できなかったことを事業者において証明した場合を除いている。
  • 国税庁タックスアンサーNo.6359も、調整の方法として「課税資産の譲渡等の金額からその売上げに係る対価の返還等の金額を控除する経理処理を継続して行っているときは、この処理も認められます」と書き、適用要件として「この経理処理を行っている場合も同様です」(帳簿の保存が要る)と書いている。
  • 14-1-8の本文の括弧書きは、対象から「免税事業者であった課税期間において行った課税資産の譲渡等に係るもの」を除いている。経理処理の選び方によってこの区切りが動く、という書き方ではない。
  • 消費税法38条1項の本文も、適用主体を「事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)」としている。

返品の処理には、2つの書き方があります

返品や値引き、割戻しがあったとき、消費税の計算では売上げに係る対価の返還等として扱います。

その処理の仕方には、原則と、もう1つの経理処理があります。

原則は、消費税法38条1項です。

第三十八条 事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が、国内において行つた課税資産の譲渡等…につき、返品を受け、又は値引き若しくは割戻しをしたことにより、…税込価額…の全部若しくは一部の返還又は…売掛金その他の債権の額の全部若しくは一部の減額(…「売上げに係る対価の返還等」という。)をした場合には、当該売上げに係る対価の返還等をした日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から…百十分の七・八(…軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合には、百八分の六・二四)を乗じて算出した金額…の合計額を控除する。

(e-Gov 法令検索・消費税法・2026年10月1日施行版。2026年9月8日に取得。原文ママ・一部略)

課税標準額に対する消費税額から、返還等に係る消費税額を引くという書き方です。売上そのものは総額のまま置いておき、別の控除項目として引きます。

これに対して、実務では売上から直接引いて記帳している会社があります。返品が出たら、その月の売上を減らしてしまう方法です。

その経理処理を認めているのが、通達14-1-8です

売上から直接引く経理処理は、通達に根拠があります。

14-1-8 事業者が、その課税期間において売上げに係る対価の返還等(免税事業者であった課税期間において行った課税資産の譲渡等に係るものを除く。以下14-1-8において同じ。)を行った場合において、当該課税期間に国内において行った課税資産の譲渡等の税率の異なるごとの金額から当該売上げに係る対価の返還等につき税率の異なるごとに合理的に区分した金額をそれぞれ控除する経理処理を継続して行っているときは、これを認める。

(国税庁・消費税法基本通達 第14章第1節第1款。2026年9月8日に取得。原文ママ)

条文の文言を分けると、条件が3つ書かれています。

通達の文言
区分の方法課税資産の譲渡等の税率の異なるごとの金額から、返還等につき税率の異なるごとに合理的に区分した金額をそれぞれ控除する
継続性その経理処理を継続して行っているとき
対象から除くもの免税事業者であった課税期間において行った課税資産の譲渡等に係るもの

「これを認める」という結び方です。原則がまず38条1項にあり、それとは別の処理を認めるという順序で書かれています。

🔴 注が、帳簿について正面から書いています

14-1-8には、続けて注が置かれています。ここが、この通達でいちばん読み落としやすいところです。

(注) この場合、当該売上げに係る対価の返還等の金額については、別途法第38条第1項《売上げに係る対価の返還等をした場合の消費税額の控除》の規定の適用はないのであるが、同条第2項に規定する帳簿を保存する必要があることに留意する。

(国税庁・消費税法基本通達 第14章第1節第1款。2026年9月8日に取得。原文ママ)

1つの文の中に、2つのことが書かれています。

  • 38条1項の適用は、別途は無い — 売上から引いてしまっているので、そのうえさらに控除項目として引くわけではない、ということです
  • 38条2項に規定する帳簿は、保存する必要がある — こちらは「留意する」と念を押す書き方になっています

その38条2項は、次のように定めています。

2 前項の規定は、事業者が当該売上げに係る対価の返還等をした金額の明細を記録した帳簿を保存しない場合には、当該保存のない売上げに係る対価の返還等に係る消費税額については、適用しない。ただし、災害その他やむを得ない事情により当該保存をすることができなかつたことを当該事業者において証明した場合は、この限りでない。

(e-Gov 法令検索・消費税法・2026年10月1日施行版。2026年9月8日に取得。原文ママ)

条文が求めているのは「返還等をした金額の明細を記録した帳簿」です。売上から直接引く経理処理を採っていても、この帳簿は要る、というのが14-1-8の注の書き方です。

タックスアンサーも、同じ内容を2か所に置いています

国税庁のタックスアンサー No.6359 は、通達と同じ内容を調整の方法と適用要件の2か所に分けて書いています。

調整の方法 課税標準額に対する消費税額から売上げに係る対価の返還等に係る消費税額を控除します。 ただし、課税資産の譲渡等の金額からその売上げに係る対価の返還等の金額を控除する経理処理を継続して行っているときは、この処理も認められます。
適用要件 売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額について控除を受けるには、売上げに係る対価の返還等をした金額の明細等を記録した帳簿を保存する必要があります。 課税資産の譲渡等の金額からその売上げに係る対価の返還等の金額を控除する経理処理を行っている場合も同様です。

(国税庁タックスアンサー No.6359。2026年9月8日に取得。原文ママ)

「この処理も認められます」と「この場合も同様です」が、別の欄に置かれています。調整の方法の欄だけを読むと、帳簿の話に行き当たりません。

括弧書きは、免税だった期間の売上を除いています

14-1-8の本文には、括弧書きがあります。

(免税事業者であった課税期間において行った課税資産の譲渡等に係るものを除く。以下14-1-8において同じ。)

(国税庁・消費税法基本通達 第14章第1節第1款。2026年9月8日に取得。原文ママ)

消費税法38条1項の本文も、適用主体を「事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)」としています。

通達の側にも、条文の側にも、免税事業者であった期間についての区切りが置かれています。経理処理の選び方によってこの区切りが動く、という書き方ではありません。

免税事業者だったころの売上に返品があった場合の扱いは、別の記事で扱っています(「免税事業者だったころの売上に返品があった場合」)。

2つの処理は、税額の作られ方が違います

どちらの経理処理でも、返品や値引きが税額の計算に反映される点は変わりません。ただし、反映される場所が違います。

原則(消費税法38条1項)通達14-1-8の経理処理
課税資産の譲渡等の金額返還等を引かない総額返還等を引いた後の金額
消費税法38条1項の適用ある(控除項目になる)別途は無い(注)
消費税法38条2項の帳簿の保存要る要る(注が明記)
継続適用条文に定めなし要件(「継続して行っているとき」)

2割特例や3割特例の計算式は、「消費税法38条1項に規定する売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額」を控除項目として名指ししています。通達14-1-8の経理処理では38条1項の適用が別途無いため、この控除項目は生じません。代わりに、計算の出発点となる課税標準である金額そのものが返還等の分だけ小さくなります。

計算式そのものは、別の記事で扱っています(「返品・値引きは2割特例・3割特例の計算にどう入るか」)。

どちらの経理処理を採るかは、自社の売上の内容や税率の区分によって結果が変わります。自社の場合の当てはめについては、税理士または税務署にご確認ください。

まとめ

  • 返品・値引き・割戻しの処理には2つの方法があります。原則は消費税法38条1項による控除で、もう1つが売上から直接引く経理処理です
  • 後者を認めているのが消費税法基本通達14-1-8です。文言は「継続して行っているときは、これを認める」で、継続適用が条件です
  • 🔴 14-1-8の注は「別途法第38条第1項の規定の適用はないのであるが、同条第2項に規定する帳簿を保存する必要があることに留意する」と書いています
  • 消費税法38条2項が求めているのは「返還等をした金額の明細を記録した帳簿」です。ただし書に、災害その他やむを得ない事情により保存できなかったことを証明した場合の定めがあります
  • タックスアンサー No.6359 も、調整の方法と適用要件の2か所に分けて同じ内容を置いています
  • 14-1-8の本文の括弧書きは「免税事業者であった課税期間において行った課税資産の譲渡等に係るものを除く」としています

経営者の疑問と、制度の事実

答えるのは制度の事実だけです。有利・不利は事業ごとの事情で変わるため、判断は税理士・税務署にご確認ください。

経営者うちの経理は、返品が出たらその月の売上から引いて記帳しています。消費税の申告書では別に控除欄を使っていません。これで問題ないのでしょうか。

制度の事実消費税法基本通達14-1-8は、課税資産の譲渡等の税率の異なるごとの金額から、売上げに係る対価の返還等につき税率の異なるごとに合理的に区分した金額をそれぞれ控除する経理処理を「継続して行っているときは、これを認める」と定めています。同通達の注は、この場合「別途法第38条第1項の規定の適用はない」としています。自社の記帳がこの通達の要件を満たしているかどうかについては、税理士または税務署にご確認ください。

経営者売上から引いてしまえば、返品の明細を帳簿に残す手間は省けると考えていました。

制度の事実通達14-1-8の注は、続けて「同条第2項に規定する帳簿を保存する必要があることに留意する」と書いています。消費税法38条2項が求めているのは「当該売上げに係る対価の返還等をした金額の明細を記録した帳簿」です。国税庁タックスアンサーNo.6359も、適用要件として同じ内容を置いています。保存の具体的な方法については、税理士または税務署にご確認ください。

経営者2割特例を使っています。経理処理を変えると、納める税額の計算は変わりますか。

制度の事実計算の構造としては、原則の処理では消費税法38条1項による控除が生じ、通達14-1-8の経理処理では同項の適用が別途無い代わりに、課税標準である金額そのものが返還等の分だけ小さくなる、という違いがあります。どちらの経理処理を採るかによる税額への影響は、売上の内容や税率の区分によって変わります。自社の場合の当てはめについては、税理士または税務署にご確認ください。

よくある質問

売上から直接引く経理処理は、認められているのですか。
消費税法基本通達14-1-8が、課税資産の譲渡等の税率の異なるごとの金額から、売上げに係る対価の返還等につき税率の異なるごとに合理的に区分した金額をそれぞれ控除する経理処理を「継続して行っているときは、これを認める」と定めています。国税庁タックスアンサーNo.6359も「この処理も認められます」と書いています。
売上から直接引いているので、帳簿の保存は要らないのではありませんか。
通達14-1-8の注は「この場合、当該売上げに係る対価の返還等の金額については、別途法第38条第1項の規定の適用はないのであるが、同条第2項に規定する帳簿を保存する必要があることに留意する」と書いています。No.6359も、適用要件の欄で「課税資産の譲渡等の金額からその売上げに係る対価の返還等の金額を控除する経理処理を行っている場合も同様です」としています。
「継続して行っているとき」とは、何を意味しますか。
通達14-1-8の本文の文言が「経理処理を継続して行っているときは、これを認める」です。No.6359も「継続して行っているときは」と書いています。自社の経理処理がこの要件を満たしているかどうかについては、税理士または税務署にご確認ください。
免税事業者だったころの売上について返品があった場合はどうなりますか。
通達14-1-8の本文の括弧書きが、対象から「免税事業者であった課税期間において行った課税資産の譲渡等に係るもの」を除いています。消費税法38条1項の本文も、適用主体を「事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)」としています。免税事業者であった期間の売上に係る返還等の詳しい扱いは、別の記事で扱っています。
帳簿を保存できなかった場合の定めはありますか。
消費税法38条2項のただし書が「災害その他やむを得ない事情により当該保存をすることができなかつたことを当該事業者において証明した場合は、この限りでない」と定めています。個別の事情がこれに当たるかどうかについては、税理士または税務署にご確認ください。

個別の判断について

適用の可否や有利・不利は、事業区分・基準期間の課税売上高・過去の届出など個別の事情で変わります。実際の判断の前に、税理士等の専門家、または所轄の税務署にご相談ください。

出典(一次情報)

法令・国税庁・省庁など公的機関の公表資料のみを参照しています(解説記事等の二次情報は使用していません)。

本ページは公表されている制度情報にもとづく解説と試算の補助であり、税務に関する助言ではありません。個別の判断は必ず税理士等の専門家にご確認ください(所轄の税務署でも確認できます)。

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