令和8年度税制改正に対応

売上割戻しを「行った日」は、返金した日とは限りません(消費税法基本通達14-1-9から14-1-11)

最終確認日: (数値は一次情報で照合)

結論から

売上割戻しを行った日は、消費税法基本通達14-1-9が2つの区分に分けています。(1)その算定基準が販売価額または販売数量によっており、かつ、当該算定基準が契約その他の方法により相手方に明示されている売上割戻しは「課税資産の譲渡等をした日」です。ただし、事業者が継続して売上割戻しの金額の通知または支払をした日に売上割戻しを行ったこととしている場合には、これを認めるとされています。(2)(1)に該当しない売上割戻しは「その売上割戻しの金額の通知又は支払をした日」です。こちらにも、各課税期間終了の日までに支払うことと算定基準が内部的に決定されている場合において、その基準により計算した金額を当該課税期間において未払金として計上するとともに確定申告書の提出期限までに相手方に通知したときは、継続適用を条件に当該課税期間において行った売上割戻しとして認める、というただし書きがあります。さらに消費税法基本通達14-1-10は、相手方名義の保証金等として預かるため相手方が実質的に利益を享受できないと認められる場合について、14-1-9にかかわらず現実に支払を行った日とする旨を定めています。14-1-11は、課税資産の譲渡等が無効であった場合または取消しをされた場合について、その課税資産の譲渡等はなかったものとすると定めています。自社の割戻しがどの区分に当たるかについては、税理士または税務署にご確認ください。

この記事の要点

  • 消費税法38条1項は「当該売上げに係る対価の返還等をした日の属する課税期間」で控除すると定めているが、売上割戻しについては「行った日」がいつかを消費税法基本通達14-1-9が別に定めている。
  • 14-1-9(1)は、算定基準が販売価額または販売数量によっており、かつ、その算定基準が契約その他の方法により相手方に明示されている売上割戻しについて「課税資産の譲渡等をした日」に行ったものとする。つまり売った日の側であり、返金した日ではない。
  • 14-1-9(1)にはただし書きがある。事業者が継続して、売上割戻しの金額の通知または支払をした日に売上割戻しを行ったこととしている場合には、これを認めるとされている。継続していることが条件になっている。
  • 14-1-9(2)は、(1)に該当しない売上割戻しについて「その売上割戻しの金額の通知又は支払をした日」とする。つまり、契約で明示しているかどうかで日が分かれる組み立てになっている。
  • 14-1-9(2)のただし書きは、未払金として計上し確定申告書の提出期限までに相手方に通知したときに、継続適用を条件として当該課税期間において行った売上割戻しとして認めるとしている。算定基準が内部的に決定されていることが前提とされている。
  • 消費税法基本通達14-1-10は、特約店契約の解約、災害の発生等の特別な事実が生ずるときまで、または5年を超える一定の期間が経過するまで相手方名義の保証金等として預かる場合について、14-1-9にかかわらず現実に支払を行った日とする。ただし4つの例外が挙げられている。
  • 消費税法基本通達14-1-11は、課税資産の譲渡等を行った後にそれが無効であった場合または取消しをされた場合について、その課税資産の譲渡等はなかったものとすると定めている。なお書きで、前の課税期間の譲渡等について消費税法38条1項を適用しているときはこれを認めるとしている。
  • 調整する課税期間がずれると、2割特例・3割特例の特別控除税額の計算と、基準期間における課税売上高の計算に使う金額も同じだけずれる。

条文は「した日」としか書いていない

消費税法38条1項は、控除する課税期間をこう定めています。

(前略)当該売上げに係る対価の返還等をした日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から(後略)

(e-Gov 法令検索・2026年4月1日施行版。2026年9月3日に取得)

返品や値引きなら、この「した日」はふつう返金や減額をした日です。

ところが売上割戻し(リベート)については、その「した日」がいつなのかを、国税庁が通達で別に定めています。消費税法基本通達の第14章第1節第2款が、そのための款です。款の名前がそのまま「対価の返還等を行った時期」となっています。

14-1-9 — 2つの区分に分かれている

原文は次のとおりです。

(売上割戻しを行った日) 14−1−9 課税資産の譲渡等に係る売上割戻しについては、次に掲げる区分に応じ、次に掲げる日に当該売上割戻しを行ったものとする。 (1) その算定基準が販売価額又は販売数量によっており、かつ、当該算定基準が契約その他の方法により相手方に明示されている売上割戻し 課税資産の譲渡等をした日。ただし、事業者が継続して売上割戻しの金額の通知又は支払をした日に売上割戻しを行ったこととしている場合には、これを認める。 (2) (1)に該当しない売上割戻し  その売上割戻しの金額の通知又は支払をした日。ただし、各課税期間終了の日までに、その課税資産の譲渡等の対価の額について売上割戻しを支払うこと及びその売上割戻しの算定基準が内部的に決定されている場合において、事業者がその基準により計算した金額を当該課税期間において未払金として計上するとともに確定申告書の提出期限までに相手方に通知したときは、継続適用を条件に当該課税期間において行った売上割戻しとしてこれを認める。

(2026年9月4日に取得)

(1) 契約で明示している割戻し

原則は「課税資産の譲渡等をした日」です。売った日の側であって、実際に払った日ではありません。

条件は2つ並んでいます。

  • 算定基準が販売価額または販売数量によっていること
  • その算定基準が契約その他の方法により相手方に明示されていること

両方を満たしたときに(1)になります。通達は「契約」に限っておらず、「その他の方法」も並べています。

ただし書きも押さえておく必要があります。継続して通知・支払の日に行ったこととしている場合には、それを認めるとされています。「継続して」が条件に書かれています。

(2) それ以外の割戻し

「その売上割戻しの金額の通知又は支払をした日」です。

こちらのただし書きは、条件が4つ並んだ長い文になっています。整理すると次のようになります。

#通達に書かれている条件
1各課税期間終了の日までに、売上割戻しを支払うこと及びその算定基準が内部的に決定されていること
2その基準により計算した金額を、当該課税期間において未払金として計上すること
3確定申告書の提出期限までに相手方に通知すること
4継続適用であること

これらを満たしたときに、当該課税期間において行った売上割戻しとして認めるとされています。

14-1-10 — 預かったままの割戻し

割戻しの金額を相手方に渡さず、預かっている場合の定めです。

(一定期間支払わない売上割戻しに係る売上割戻しを行った日) 14-1-10 事業者が売上割戻しの金額につき相手方との契約等により特約店契約の解約、災害の発生等の特別な事実が生ずるときまで又は5年を超える一定の期間が経過するまで当該相手方名義の保証金等として預かることとしているため、相手方がその利益の全部又は一部を実質的に享受することができないと認められる場合には、その売上割戻しの金額については、14-1-9にかかわらず、現実に支払(売掛金等への充当を含む。)を行った日における売上割戻しとして取り扱う。

(2026年9月4日に取得)

「14−1−9にかかわらず」と書かれています。14-1-9で(1)に当たる割戻しであっても、この条件に当てはまる場合は現実に支払を行った日になる、という組み立てです。

「5年を超える」という期間と、「特約店契約の解約、災害の発生等の特別な事実」という事由が、通達に明記されています。

4つの例外

14-1-10には、ただし書きが続きます。相手方がその日の前に実質的にその利益を享受できることとなったと認められる場合には、その享受できることとなった日に売上割戻しを行ったものとして取り扱う、というものです。通達は該当する場合として次の4つを挙げています。

(1) 相手方との契約等に基づいてその売上割戻しの金額に通常の金利を付けるとともに、その金利相当額については現実に支払っているか、又は相手方からの請求があれば支払うこととしている場合 (2) 相手方との契約等に基づいて保証金等に代えて有価証券その他の財産を提供することができることとしている場合 (3) 保証金等として預っている金額が売上割戻しの金額の概ね50%以下である場合 (4) 相手方との契約等に基づいて売上割戻しの金額を相手方名義の預金若しくは貯金又は有価証券として保管している場合

(3)には「概ね50%以下」という具体的な割合が書かれています。

14-1-11 — 取引が無効・取消しになったとき

(取引が無効又は取消しとなった場合の資産の譲渡等の取扱い) 14−1−11 課税資産の譲渡等を行った後に、当該課税資産の譲渡等が無効であった場合又は取消しをされた場合には、当該課税資産の譲渡等はなかったものとする。  なお、当該課税資産の譲渡等の時が当該無効であったことが判明した日又は取消しをされた日の属する課税期間前の課税期間である場合において、当該判明した日又は取消しをされた日に売上げに係る対価の返還等をしたものとして、法第38条第1項《売上げに係る対価の返還等をした場合の消費税額の控除》の規定を適用しているときは、これを認める。

(2026年9月4日に取得)

本文と、なお書きで扱いが分かれています。

  • 本文:課税資産の譲渡等がなかったものとする。返品や値引きのように「対価を返した」という組み立てではありません
  • なお書き:譲渡等の時が前の課税期間だった場合に、判明した日・取消しをされた日に売上げに係る対価の返還等をしたものとして消費税法38条1項を適用しているときは、これを認める

つまり、課税期間をまたぐ場合について、38条1項による処理も認める、という書き方です。

なぜ日付が問題になるのか

売上げに係る対価の返還等の金額は、消費税法38条1項の控除だけに使われるものではありません。

使われる場所どう入るか根拠
2割特例・3割特例課税標準額に対する消費税額から返還等に係る消費税額を控除した残額に80%または70%を乗じる。さらに返還等そのものも控除項目として引く平成28年改正法附則51条の2第2項・51条の3第2項、消費税法38条1項
納税義務の判定基準期間における課税売上高は、対価の額の合計額から売上げに係る税抜対価の返還等の金額の合計額を控除した残額消費税法9条2項1号

どの課税期間の金額として集計するかがずれれば、この2つの金額も同じだけずれます。

たとえば12月決算の法人が、令和8年中の販売について令和9年3月に割戻しを支払ったとします。14-1-9(1)に当たる割戻しであれば、原則としては課税資産の譲渡等をした日、つまり令和8年の側です。継続して通知・支払の日としているのであれば令和9年の側になります。どちらの課税期間の数字が動くかが変わります。

なお、これらの当てはめは契約の内容と実際の運用によります。個別の判断は税理士または税務署にご確認ください。

まとめ

  • 消費税法38条1項は「返還等をした日の属する課税期間」で控除すると定めるが、売上割戻しの「行った日」は消費税法基本通達14-1-9が別に定めている
  • 算定基準が販売価額・販売数量によっており、かつ契約その他の方法で相手方に明示されている割戻しは「課税資産の譲渡等をした日」。継続して通知・支払の日としている場合はその日も認められる
  • それ以外の割戻しは「通知又は支払をした日」。未払金計上と確定申告書の提出期限までの通知があれば、継続適用を条件にその課税期間で認められる
  • 保証金等として預かる場合は14-1-10、取引が無効・取消しとなった場合は14-1-11が、それぞれ別に定めている

経営者の疑問と、制度の事実

答えるのは制度の事実だけです。有利・不利は事業ごとの事情で変わるため、判断は税理士・税務署にご確認ください。

経営者年間の仕入高に応じて取引先にリベートを払っている。契約書に「年間1,000万円以上で3%」と書いてある。この場合、消費税はいつの分で引くことになるのか。

制度の事実消費税法基本通達14-1-9は、(1)として「その算定基準が販売価額又は販売数量によっており、かつ、当該算定基準が契約その他の方法により相手方に明示されている売上割戻し」を挙げ、これについては「課税資産の譲渡等をした日」に売上割戻しを行ったものとするとしています。ただし書きで「事業者が継続して売上割戻しの金額の通知又は支払をした日に売上割戻しを行ったこととしている場合には、これを認める」とも定められています。つまり、原則の日と、継続適用を条件に認められる日の2通りが通達に書かれている形です。御社の契約の書きぶりが(1)に当たるか、また継続適用の要件を満たしているかについては、税理士または税務署にご確認ください。

経営者期末になってから「今年はよく買ってもらったので」と決めて払う謝礼のようなものは、どちらになるのか。

制度の事実消費税法基本通達14-1-9は、(2)として「(1)に該当しない売上割戻し」を挙げ、これについては「その売上割戻しの金額の通知又は支払をした日」としています。そのうえで、ただし書きが置かれています。「各課税期間終了の日までに、その課税資産の譲渡等の対価の額について売上割戻しを支払うこと及びその売上割戻しの算定基準が内部的に決定されている場合において、事業者がその基準により計算した金額を当該課税期間において未払金として計上するとともに確定申告書の提出期限までに相手方に通知したときは、継続適用を条件に当該課税期間において行った売上割戻しとしてこれを認める」という定めです。要件として、課税期間終了の日までに支払うことと算定基準が内部的に決定されていること、未払金として計上すること、確定申告書の提出期限までに通知すること、継続適用であることが並んでいます。御社の運用がこれを満たすかどうかは、税理士または税務署にご確認ください。

経営者取引そのものが後で取り消しになった場合も、返品と同じように処理するのか。

制度の事実消費税法基本通達14-1-11は「課税資産の譲渡等を行った後に、当該課税資産の譲渡等が無効であった場合又は取消しをされた場合には、当該課税資産の譲渡等はなかったものとする」と定めています。返品や値引きは課税資産の譲渡等があったことを前提に対価を返す組み立てですが、こちらは譲渡等自体がなかったものとする書き方になっています。ただし同通達にはなお書きがあり、「当該課税資産の譲渡等の時が当該無効であったことが判明した日又は取消しをされた日の属する課税期間前の課税期間である場合において、当該判明した日又は取消しをされた日に売上げに係る対価の返還等をしたものとして、法第38条第1項の規定を適用しているときは、これを認める」とされています。御社の取引がどちらの扱いになるかは、税理士または税務署にご確認ください。

よくある質問

返品と売上割戻しで、調整する課税期間の考え方が違うのですか。
消費税法38条1項は、売上げに係る対価の返還等について「当該売上げに係る対価の返還等をした日の属する課税期間」の課税標準額に対する消費税額から控除すると定めています。この「した日」がいつかについて、売上割戻しには消費税法基本通達14-1-9が別に定めを置いています。14-1-9は、算定基準が販売価額または販売数量によっており、かつ、その算定基準が契約その他の方法により相手方に明示されている売上割戻しについては「課税資産の譲渡等をした日」に行ったものとするとしています。それ以外の売上割戻しは「その売上割戻しの金額の通知又は支払をした日」です。返品について、通達はこのような区分を置いていません。自社の取引がどちらに当たるかは、税理士または税務署にご確認ください。
「算定基準が相手方に明示されている」とは、どこまでを指しますか。
消費税法基本通達14-1-9(1)の文言は「その算定基準が販売価額又は販売数量によっており、かつ、当該算定基準が契約その他の方法により相手方に明示されている売上割戻し」です。条件は2つで、(a)算定基準が販売価額または販売数量によっていること、(b)その算定基準が契約その他の方法により相手方に明示されていること、が並んでいます。通達は「契約」だけでなく「その他の方法」も挙げています。個別の契約書や覚書がこれに当たるかどうかの当てはめは、税理士または税務署にご確認ください。
割戻しの金額を相手方に渡さず預かっている場合はどうなりますか。
消費税法基本通達14-1-10が定めています。事業者が売上割戻しの金額につき、相手方との契約等により特約店契約の解約、災害の発生等の特別な事実が生ずるときまで、または5年を超える一定の期間が経過するまで当該相手方名義の保証金等として預かることとしているため、相手方がその利益の全部または一部を実質的に享受することができないと認められる場合には、その売上割戻しの金額については、14-1-9にかかわらず、現実に支払(売掛金等への充当を含む)を行った日における売上割戻しとして取り扱うとされています。ただし、相手方がその日の前に実質的にその利益を享受できることとなったと認められる場合として4つが挙げられており、その場合は享受できることとなった日に売上割戻しを行ったものとして取り扱われます。自社の預り方がこれに当たるかは、税理士または税務署にご確認ください。
調整する課税期間がずれると、ほかの計算にも影響しますか。
売上げに係る対価の返還等の金額は、消費税法38条1項の控除だけに使われるものではありません。2割特例・3割特例の特別控除税額の計算では、課税標準額に対する消費税額から返還等に係る消費税額を控除した残額に80%または70%を乗じる形になっています(平成28年改正法附則51条の2第2項・51条の3第2項)。また、基準期間における課税売上高は、対価の額の合計額から売上げに係る税抜対価の返還等の金額の合計額を控除した残額とされています(消費税法9条2項1号)。どの課税期間の金額として集計するかがずれると、これらの金額も同じだけずれることになります。自社の数字への当てはめは、税理士または税務署にご確認ください。

個別の判断について

適用の可否や有利・不利は、事業区分・基準期間の課税売上高・過去の届出など個別の事情で変わります。実際の判断の前に、税理士等の専門家、または所轄の税務署にご相談ください。

出典(一次情報)

法令・国税庁・省庁など公的機関の公表資料のみを参照しています(解説記事等の二次情報は使用していません)。

本ページは公表されている制度情報にもとづく解説と試算の補助であり、税務に関する助言ではありません。個別の判断は必ず税理士等の専門家にご確認ください(所轄の税務署でも確認できます)。

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