令和8年度税制改正に対応

令和8年9月30日をまたぐ対価は、期間で按分するのか(国税庁の設例は役務の提供について「全額70%」としています)

最終確認日: (数値は一次情報で照合)

結論から

免税事業者等からの仕入れに係る経過措置の割合について、国税庁インボイスQ&A問113-3【令和8年4月追加】は「本経過措置の適用に当たって用いる割合は、適用しようとする課税仕入れの時期で判断することとなります」と記載しています。同問が挙げている役務の提供の設例は、令和8年9月21日から提供を受けている役務が同年10月20日に完了し同月31日に代金を支払う場合について、「令和8年 10 月 20 日が課税仕入れを行った日となることから」仕入税額相当額の70%の割合を用いて計算することとなるとしています。9月21日から9月30日までの期間に対応する部分を80%で計算する、という記載はありません。他方、同問は商品の仕入れ(資産の譲受け)については課税仕入れの時期が原則としてその引渡しのあった日となるため、9月21日から9月30日までの仕入れは80%、10月1日から10月20日までの仕入れは70%になると記載しています。つまり割合は「課税仕入れを行った日」によって決まり、国税庁の設例で割合が分かれているのは、その日が複数ある場合です。自社の取引について課税仕入れを行った日がいつに当たるか、またどの割合で計算することになるかは、税理士または税務署にご確認ください。

この記事の要点

  • 経過措置の割合は「適用しようとする課税仕入れの時期で判断する」(インボイスQ&A問113-3)。請求日や支払日で判定するものではない。
  • 問113-3の役務の提供の設例は、令和8年9月21日から提供を受け10月20日に完了、10月31日支払という事案について「令和8年 10 月 20 日が課税仕入れを行った日となることから」70%の割合を用いるとしている。期間に応じて80%と70%に分ける記載はない。
  • 同じ問113-3の商品の仕入れの設例では、課税仕入れの時期が引渡しのあった日となるため、9月21日から9月30日までが80%、10月1日から10月20日までが70%と分かれる。
  • つまり国税庁の2つの設例で結果が違うのは、課税仕入れを行った日が1つか複数かの違いである。対価が対応する期間そのもので按分する、という記載は問113-3にはない。
  • 資産の賃貸借契約に基づく使用料等の資産の譲渡等の時期は「当該契約又は慣習によりその支払を受けるべき日」(消費税法基本通達9-1-20。前受けに係る額を除く)。
  • 国税庁は、登録日という別の境目について、問77-2で「課税資産の譲渡等がその支払を受けるべき日に行われたこととなるため」「日割計算などは行わず、全額を課税売上げとして」と記載している。ただしこの問の境目は登録日であり、80%から70%への切り替えの日ではない。
  • 前受けに係る額は9-1-20の対象外で、資産の譲渡等の時期は原則として現実に資産の譲渡等を行った時となる(消費税法基本通達9-1-27)。

免税事業者などインボイス発行事業者以外の相手からの課税仕入れについて、控除できる割合が 80% から 70% に下がる境目は 令和8年10月1日 です。

では、9月から10月にまたがって続いた取引はどうなるのか。日数で9月分と10月分に割るのか、それとも片方の割合で全部を通すのか。

国税庁は、この問いを正面から扱った設例を公表しています。

国税庁が挙げている設例は、2つで答えが違う

問113-3【令和8年4月追加】の見出しは「令和8年 10 月1日前後の取引に係る免税事業者等からの仕入れに係る経過措置の適用」です。設問は次のとおりです。

当社は免税事業者と取引を行っています。例えば、令和8年9月 21 日から提供を受けている役務について同年 10 月 20 日に完了し、同月 31 日に代金を支払う場合、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置の適用に当たっては、80%と 70%のどちらの割合を用いて計算すればよいでしょうか。また、役務の提供ではなく、商品の仕入れである場合はどうなりますか。

9月21日から10月20日まで。境目をまたいでいます。そして同じ設問が、役務の提供の場合と商品の仕入れの場合の両方を聞いています。

まず、答えの出発点になる1文です。

本経過措置の適用に当たって用いる割合は、適用しようとする課税仕入れの時期で判断することとなります。

役務の提供 —— 全額70%

役務の提供を受けた場合の課税仕入れの時期は、原則として、その約した役務の全部が完了した日になります。したがって、ご質問の場合、令和8年 10 月 20 日が課税仕入れを行った日となることから、経過措置の適用に当たっては、仕入税額相当額の 70%の割合を用いて計算することとなります。

9月21日から始まっているのに、全額が70%です。

9月21日から9月30日までの10日分を80%で計算する、という記載はありません。

商品の仕入れ —— 80%と70%に分かれる

他方、商品の仕入れ(資産の譲受け)の場合の課税仕入れの時期は、原則として、その引渡しのあった日となります。そのため、令和8年9月 21 日から同月 30 日までの仕入れについては、仕入税額相当額の 80%、令和8年 10 月1日から同月 20 日までの仕入れについては、仕入税額相当額の 70%の割合を用いて計算することとなります。

同じ9月21日から10月20日までの区間なのに、こちらは分かれます。

違いは「課税仕入れを行った日」が1つか複数か

2つの答えを並べると、分かれ方の理由が見えます。

設例対価が対応する期間課税仕入れを行った日国税庁の答え
役務の提供9月21日〜10月20日(境目をまたぐ)10月20日(役務の全部が完了した日)全額70%
商品の仕入れ9月21日〜10月20日(同じ)引渡しの日がそれぞれにある9月21日〜9月30日は80%、10月1日〜10月20日は70%

対価が対応している期間は、どちらも同じです。違うのは課税仕入れを行った日の数だけです。

📌 問113-3が割合を決めるのに使っているのは「課税仕入れを行った日」であり、対価が対応する期間そのものではありません。役務の提供の設例で割合が1つになっているのは、その日が1日しかないからです。

「課税仕入れを行った日」は通達で決まる

消費税法基本通達 11-3-1 は、課税仕入れを行った日を「資産の譲受け若しくは借受けをした日又は役務の提供を受けた日」とし、その日がいつであるかについては、別に定めるものを除き第9章の取扱いに準ずるとしています。

第9章の主な定めは次のとおりです。

取引資産の譲渡等の時期通達
棚卸資産の譲渡引渡しのあった日9-1-1
物の引渡しを要しない請負約した役務の全部を完了した日9-1-5
賃貸借契約に基づく使用料等(前受けに係る額を除く)契約又は慣習によりその支払を受けるべき日9-1-20
前受金・仮受金現実に資産の譲渡等を行った時9-1-27

家賃のような「毎月分」はどうなるか

事務所の家賃やコピー機のリース料のように、毎月分をまとめて払う取引はどうなるのか。

9-1-20には次の定めがあります。

資産の賃貸借契約に基づいて支払を受ける使用料等の額(前受けに係る額を除く。)を対価とする資産の譲渡等の時期は、当該契約又は慣習によりその支払を受けるべき日とする。

支払を受けるべき日の1日です。

ただし、80%から70%への切り替えの日をまたぐ家賃について、国税庁がその割合を当てはめた設例は、当サイトが2026年10月13日に確認した時点では見当たりませんでした。

国税庁が、別の境目について書いていること

いっぽう国税庁は、登録日という別の境目について、賃貸借の使用料等を正面から扱っています。問77-2【令和6年4月追加】【令和8年4月改訂】です。

月の中途に適格請求書発行事業者の登録を受けた場合について、次のとおりです。

資産の賃貸借契約に基づいて支払を受ける使用料等の額(前受けに係る額を除きます。)を対価とする資産の譲渡等の時期は、当該契約又は慣習によりその支払を受けるべき日とすることとされています。そのため、ある月の中途に適格請求書発行事業者の登録を受けた場合においても、月末にその月分の支払を受けることとしているなど、使用料等の支払を受けるべき日が登録日以後となるのであれば、その月分の使用料等の全額につき適格請求書を交付することとなります(基通9-1-20)。

そして、この問には注が付されています。

(注) この場合、課税資産の譲渡等がその支払を受けるべき日に行われたこととなるため、その登録を受けた月分の使用料等については、適格請求書発行事業者の登録前の期間に係るものについて日割計算などは行わず、全額を課税売上げとして消費税の申告を行うこととなります。

「日割計算などは行わず、全額を」と書かれています。そして「その支払を受けるべき日に行われたこととなるため」という理由が示されています。

⚠️ ただし、この問の境目は「登録日」です。80%から70%への切り替えの日について書かれたものではありません。国税庁が9月分の家賃を10月に払う場合の割合を示したものではない、という点はご注意ください。同じ構造の境目について国税庁がどう処理しているかを示す記載として読めるにとどまります。

前払いしている分は、同じ扱いにならない

9-1-20には括弧書きがあります。「前受けに係る額を除く。」です。

前受けに当たる額は9-1-20の対象外で、資産の譲渡等の時期は9-1-27により、消費税法第18条の特例の適用を受ける事業者を除き、現実に資産の譲渡等を行った時とされています。

問77-2も、前受けの場合については別に記載しています。

他方、前受けに係るもの(翌月分を前払で受けるようなもの)である場合には、その資産の譲渡等の時期は、原則として現実に資産の譲渡等を行った時となるため、登録日前の取引と登録日以後の取引に区分するなどの対応が必要となります(基通9-1-27)。

こちらは「区分するなどの対応が必要」とされています。翌月分を前払いしている契約は、月末払いの契約と同じ形にはなりません。

まとめ

国税庁が記載していること
割合を決めるもの適用しようとする課税仕入れの時期(問113-3)
役務の提供(9月21日〜10月20日・10月20日完了)全額70%(問113-3)
商品の仕入れ(同じ区間)9月分80%・10月分70%(引渡しの日ごと・問113-3)
賃貸借の使用料等の時期契約又は慣習によりその支払を受けるべき日(9-1-20。前受けに係る額を除く)
登録日をまたぐ月の使用料等「日割計算などは行わず、全額を」(問77-2。境目は登録日)
前受けに係る額現実に資産の譲渡等を行った時(9-1-27)。区分するなどの対応が必要(問77-2)

確認しておきたいこと

  • その取引が、商品の仕入れ・請負・役務の提供・賃貸借の使用料等のどれに当たるか
  • 課税仕入れを行った日が、1つなのか複数なのか
  • 毎月分の支払いが、後払いなのか前受けなのか

いずれも割合の判定に直結します。自社の取引の当てはめについては、税理士または税務署にご確認ください。


  • 問113-3が割合の判定に使っているのは「課税仕入れを行った日」であり、対価が対応する期間ではない
  • 同問の役務の提供の設例は、9月21日から始まる取引について全額70%としている
  • 同問で割合が分かれているのは商品の仕入れの設例であり、理由は引渡しの日がそれぞれにあること
  • 問77-2の「日割計算などは行わず」は登録日についての記載であり、80%から70%への切り替えの日について書かれたものではない

最終確認日: 2026年10月13日

経営者の疑問と、制度の事実

答えるのは制度の事実だけです。有利・不利は事業ごとの事情で変わるため、判断は税理士・税務署にご確認ください。

経営者9月から始まって10月に終わった工事がある。経理には「日数で9月分と10月分に割っておけ」と言ってあるのだが、それでいいのか。

制度の事実国税庁 インボイス Q&A 問113-3【令和8年4月追加】の役務の提供の設例は、令和8年9月21日から提供を受けている役務が同年10月20日に完了する場合について、「令和8年 10 月 20 日が課税仕入れを行った日となることから」仕入税額相当額の70%の割合を用いて計算することとなると記載しています。同問に、期間に応じて日数で割るという記載はありません。割合は「適用しようとする課税仕入れの時期で判断する」とされています。ただし自社の契約が役務の提供に当たるのか、物の引渡しを要する請負に当たるのかによって、課税仕入れを行った日の考え方は変わります。当てはめは税理士または税務署にご確認ください。

経営者同じ9月21日から10月20日までの取引なのに、工事と商品の仕入れで答えが違うのが納得できない。なぜ分かれるんだ。

制度の事実問113-3は、割合は「適用しようとする課税仕入れの時期で判断することとなります」と記載しています。そのうえで、役務の提供の課税仕入れの時期は原則としてその約した役務の全部が完了した日、商品の仕入れの課税仕入れの時期は原則としてその引渡しのあった日としています。役務の提供の設例では完了した日が令和8年10月20日の1日であり、商品の仕入れの設例では引渡しの日が9月21日から10月20日までのそれぞれにあります。つまり設例で割合が分かれているのは、課税仕入れを行った日が複数あるためです。自社の取引でその日がいつに当たるかの判断は、税理士または税務署にご確認ください。

経営者うちは事務所の家賃を毎月末払いにしている。9月分を10月に払う分は、70%でいいということか。

制度の事実80%から70%への切り替えの日をまたぐ家賃について、国税庁がその割合を当てはめた設例は、当サイトが令和8年10月13日に確認した時点では見当たりませんでした。制度の定めとしては、消費税法基本通達9-1-20が、資産の賃貸借契約に基づいて支払を受ける使用料等の額(前受けに係る額を除く)を対価とする資産の譲渡等の時期を「当該契約又は慣習によりその支払を受けるべき日」としています。また国税庁は、登録日という別の境目について問77-2で「課税資産の譲渡等がその支払を受けるべき日に行われたこととなるため」「日割計算などは行わず、全額を課税売上げとして」と記載しています。ただしこれは登録日についての記載です。自社の家賃がどちらの割合になるかの判断は、税理士または税務署にご確認ください。

よくある質問

9月21日から10月20日までの工事が終わりました。9月分と10月分に分けて計算するのですか。
国税庁 インボイス Q&A 問113-3【令和8年4月追加】は、令和8年9月21日から提供を受けている役務について同年10月20日に完了し同月31日に代金を支払う場合について、「役務の提供を受けた場合の課税仕入れの時期は、原則として、その約した役務の全部が完了した日になります」としたうえで、「令和8年 10 月 20 日が課税仕入れを行った日となることから、経過措置の適用に当たっては、仕入税額相当額の 70%の割合を用いて計算することとなります」と記載しています。同問に、9月21日から9月30日までの期間に対応する部分を80%で計算するという記載はありません。ただし自社の契約がこの設例と同じ形かどうかの判断は、税理士または税務署にご確認ください。
では商品の仕入れも、最後の納品日でまとめて判定するのですか。
問113-3は商品の仕入れについては別に記載しています。「商品の仕入れ(資産の譲受け)の場合の課税仕入れの時期は、原則として、その引渡しのあった日となります」としたうえで、「令和8年9月 21 日から同月 30 日までの仕入れについては、仕入税額相当額の 80%、令和8年 10 月1日から同月 20 日までの仕入れについては、仕入税額相当額の 70%の割合を用いて計算することとなります」と記載しています。引渡しの日がそれぞれにあるため、割合もそれぞれの日で決まる形になっています。
毎月の家賃についても、国税庁は70%と答えているのですか。
80%から70%への切り替えの日をまたぐ家賃について、国税庁がその割合を当てはめた設例は、当サイトが令和8年10月13日に確認した時点では見当たりませんでした。ただし国税庁は、登録日という別の境目について問77-2で記載しています。資産の賃貸借契約に基づく使用料等の支払を受けるべき日が登録日以後となる場合について「課税資産の譲渡等がその支払を受けるべき日に行われたこととなるため、その登録を受けた月分の使用料等については、適格請求書発行事業者の登録前の期間に係るものについて日割計算などは行わず、全額を課税売上げとして消費税の申告を行うこととなります」としています。これは登録日についての記載であり、経過措置の割合の切り替えの日について書かれたものではありません。自社の家賃の当てはめは、税理士または税務署にご確認ください。
「課税仕入れを行った日」は、どの通達で決まるのですか。
消費税法基本通達11-3-1は、課税仕入れを行った日について「資産の譲受け若しくは借受けをした日又は役務の提供を受けた日」とし、その日がいつであるかについては別に定めるものを除き第9章の取扱いに準ずるとしています。第9章では、棚卸資産の譲渡は引渡しのあった日(9-1-1)、物の引渡しを要しない請負は約した役務の全部を完了した日(9-1-5)、資産の賃貸借契約に基づく使用料等は契約又は慣習によりその支払を受けるべき日(9-1-20)とされています。
前払いしている家賃や月額料金はどうなりますか。
消費税法基本通達9-1-20は、対象となる使用料等の額について「前受けに係る額を除く。」と括弧書きで限定しています。前受金・仮受金に係る資産の譲渡等の時期は、消費税法基本通達9-1-27により、消費税法第18条の特例の適用を受ける事業者を除き、現実に資産の譲渡等を行った時とされています。問77-2も、前受けに係るものである場合には「登録日前の取引と登録日以後の取引に区分するなどの対応が必要となります」と記載しています。自社の契約が前受けに当たるかどうかを含め、当てはめは税理士または税務署にご確認ください。

個別の判断について

適用の可否や有利・不利は、事業区分・基準期間の課税売上高・過去の届出など個別の事情で変わります。実際の判断の前に、税理士等の専門家、または所轄の税務署にご相談ください。

出典(一次情報)

法令・国税庁・省庁など公的機関の公表資料のみを参照しています(解説記事等の二次情報は使用していません)。

本ページは公表されている制度情報にもとづく解説と試算の補助であり、税務に関する助言ではありません。個別の判断は必ず税理士等の専門家にご確認ください(所轄の税務署でも確認できます)。

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