令和8年度税制改正に対応

税込1万円未満の仕入れは、インボイスの保存が要らない場合があります(少額特例)

最終確認日: (数値は一次情報で照合)

結論から

平成28年改正法附則53条の2および消費税法施行令等の一部を改正する政令(平成30年政令第135号)附則24条の2第1項は、基準期間における課税売上高が1億円以下、または特定期間における課税売上高が5千万円以下である事業者が、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に国内において行う課税仕入れについて、その課税仕入れに係る支払対価の額(税込み)が1万円未満である場合には、一定の事項が記載された帳簿のみの保存により仕入税額控除の適用を受けることができると定めています。これは少額特例と呼ばれる経過措置です。1万円未満かどうかは、一回の取引の課税仕入れに係る金額(税込み)で判定し、一商品ごとの金額では判定しません(国税庁インボイスQ&A 問112)。国税庁インボイスQ&A 問111の注2は、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れであっても、税込1万円未満であれば本経過措置の対象となると記載しています。同問の※3は、少額特例の特定期間における課税売上高については、納税義務の判定における場合と異なり、課税売上高に代えて給与支払額の合計額によることはできないと記載しています。自社が対象になるかどうかの判定や、個々の取引への当てはめは、税理士または税務署にご確認ください。

この記事の要点

  • 少額特例は、税込1万円未満の課税仕入れについて、帳簿のみの保存で仕入税額控除を認める経過措置である(28年改正法附則53条の2、改正令附則24条の2第1項)。
  • 対象は、基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5千万円以下の事業者。
  • 期間は令和5年10月1日から令和11年9月30日までに国内で行う課税仕入れに限られる。
  • 「1万円未満」は税込みで見る。条文が消費税法30条8項1号ニの支払対価の額を物差しに指定している。
  • 判定単位は一回の取引ごと。一商品ごとでも、月まとめ請求書の単位でもない(Q&A 問112)。
  • 特定期間の課税売上高は、納税義務の判定と異なり給与支払額で代えることはできない(問111 ※3)。
  • 適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れでも、税込1万円未満なら対象になる(問111 注2)。
  • 帳簿に「少額特例の適用がある旨」を記載する必要はない(問111 ※4)。

この特例は「保存の負担」だけを軽くするもの

令和5年10月1日から、仕入税額控除には帳簿と請求書等の両方の保存が要件とされています(適格請求書等保存方式)。少額の支払いまで一枚ずつインボイスを集めて綴じる作業は、事務量として無視できません。

そこに置かれたのが少額特例です。国税庁インボイスQ&A 問111は、次のように記載しています(原文の ※1〜※4 は、同じ問の中で基準期間・特定期間・課税売上高・帳簿の記載事項を補足する注です)。

基準期間※1における課税売上高が1億円以下又は特定期間※2における課税売上高※3が5千万円以下である事業者が、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に国内において行う課税仕入れについて、当該課税仕入れに係る支払対価の額(税込み)が1万円未満である場合には、一定の事項が記載された帳簿※4のみの保存により、当該課税仕入れについて仕入税額控除の適用を受けることができる経過措置(少額特例)が設けられています(28年改正法附則53の2、改正令附則24の2①)。

軽くなるのは請求書等を保存する要件です。帳簿は要ります。税額の計算方法が変わるわけでもありません。

対象になるのは誰か — 「1億円以下」または「5千万円以下」

条件は2つあり、「又は」で結ばれています。

見る期間課税売上高の線
基準期間(個人は前々年、法人は前々事業年度)1億円以下
特定期間(個人は前年1月1日〜6月30日、法人は前事業年度開始の日以後6月)5千万円以下

問111の※1・※2は、基準期間と特定期間の定義を消費税法2条1項14号・9条の2第4項として示しています。

新たに設立した法人については、注1が次のように記載しています。

新たに設立した法人における基準期間のない課税期間については、特定期間の課税売上高が5千万円超となった場合であっても、当該課税期間について、本経過措置の適用を受けることができます。

特定期間は、給与支払額で代えることができない

ここが混同しやすい箇所です。納税義務の判定では、特定期間の課税売上高に代えて給与等支払額の合計額によることができます(消費税法9条の2第3項)。少額特例の5千万円については、問111の※3が次のように記載しています。

特定期間における課税売上高については、納税義務の判定における場合と異なり、課税売上高に代えて給与支払額の合計額によることはできません。

同じ「特定期間」という言葉ですが、判定に使える材料が違う形で書かれています。

「1万円未満」は税込みである

条文をたどると、金額の物差しがどこで決まっているかが分かります。

平成28年改正法附則53条の2は「支払対価の額が少額である場合として政令で定める場合」と委任しました。その政令が、消費税法施行令等の一部を改正する政令(平成30年政令第135号)の附則24条の2第1項です。

二十八年改正法附則第五十三条の二に規定する政令で定める場合は、五年消費税法第三十条第八項第一号ニに規定する課税仕入れに係る支払対価の額が一万円未満である場合とする。

名指しされた消費税法30条8項1号ニは、支払対価の額を次のように定義しています。

課税仕入れに係る支払対価の額(当該課税仕入れの対価として支払い、又は支払うべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額とし、(中略)課されるべき消費税額及び当該消費税額を課税標準として課されるべき地方消費税額(これらの税額に係る附帯税の額に相当する額を除く。)に相当する額がある場合には、当該相当する額を含む。第三十二条第一項において同じ。)

つまり税込みで1万円未満です。税抜きで1万円未満、ではありません。

判定は「一回の取引ごと」

金額をどの単位で見るかは、条文には書かれていません。国税庁インボイスQ&A 問112が示しています。

ここでいう「課税仕入れに係る支払対価の額が1万円未満」に該当するか否かについては、一回の取引の課税仕入れに係る金額(税込み)が1万円未満かどうかで判定するため、課税仕入れに係る一商品ごとの金額により判定するものではありません。

そして、まとめて判定することも否定されています。

(注)月まとめ請求書のように複数の取引をまとめた単位により判定することとはならないことにご留意ください。

問112が挙げている4つの例をそのまま並べます。

例取引問112の結論
①5,000円の商品をXX月3日に購入、7,000円の商品をXX月10日に購入し、それぞれで請求・精算それぞれ1万円未満の取引となり、対象
②5,000円の商品と7,000円の商品(合計額12,000円)を同時に購入1万円以上の取引となり、対象外
③1回8,000円のクリーニングをXX月2日に1回、XX月15日に1回行い、それぞれで請求・精算それぞれ1万円未満の取引となり、対象
④月額100,000円の清掃業務(稼働日数:12日)1万円以上の取引となり、対象外

④に注意が要ります。稼働日数12日で割れば1日あたり約8,333円ですが、問112はこれを対象外としています。取引は月額契約という1本であり、日数で割った金額で見る形にはなっていません。

なお問112は、この考え方について「公共交通機関特例における『3万円未満の公共交通機関による旅客の運送』の判定と同様の考え方です」と記載し、問43を参照先として挙げています。

相手が免税事業者でも対象になる

問111の注2は、次のように記載しています。

適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れであっても、課税仕入れに係る支払対価の額(税込み)が1万円未満である場合には本経過措置の対象となります。

少額特例は帳簿の保存だけでよいとする措置であり、相手が登録事業者かどうかを条件にしていません。

ただし、免税事業者等からの課税仕入れについては、控除できる割合が経過措置で段階的に制限される規定が別にあります。こちらは少額特例とは別の話です(→ [免税事業者からの仕入れは何割控除できるか](/articles/menzei-shiire-kojo-wariai/))。

帳簿に書く事項と、書かなくてよい事項

保存する帳簿の記載事項について、問109は次の4つを挙げています。

記載事項
①課税仕入れの相手方の氏名又は名称
②課税仕入れを行った年月日
③課税仕入れに係る資産又は役務の内容(軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである旨)
④課税仕入れに係る支払対価の額

問109は参考として、相手方の氏名又は名称は取引先コード等の記号・番号による表示で差し支えないこと、資産又は役務の内容も商品コード等の記号・番号等による表示で差し支えないこと(ただし課税資産の譲渡等であるか、軽減対象課税資産の譲渡等に係るものであるかの判別が明らかとなるものである必要があること)を記載しています。

一方、書かなくてよい事項もあります。問111の※4です。

当該経過措置の適用に当たっては、帳簿に「経過措置(少額特例)の適用がある旨」を記載する必要はありません。

期間は令和11年9月30日まで

問111が示す期間は、令和5年10月1日から令和11年9月30日までに国内において行う課税仕入れです。令和11年9月30日は西暦2029年9月30日にあたります。

項目内容
始まり令和5年10月1日(2023年10月1日)
終わり令和11年9月30日(2029年9月30日)
見る時点その課税仕入れを行った日

期間の終わりが近づいたときの取扱いや、その後の事務については、その時点の法令に基づく確認が必要になります。税理士または税務署にご確認ください。

この記事の一次情報

  • 国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」Ⅳ-4 帳簿の保存 問109・問111・問112(分冊PDF `01-14.pdf` の原本を2026年8月28日に取得。問111【令和5年4月追加】【令和5年10月改訂】、問112【令和5年4月追加】【令和5年10月改訂】の記載に変更がないことを確認しました)
  • e-Gov法令検索 消費税法施行令 附則(平成30年3月31日政令第135号)第24条の2(2026年10月1日施行版の原文を取得)
  • e-Gov法令検索 消費税法 第30条第8項第1号ニ(同版の原文を取得)

この記事は制度の内容を一般的に説明したものであり、個別の事案についての税務相談ではありません。自社が少額特例の対象になるかどうか、個々の取引が一回の取引としてどの単位になるかの判定については、税理士または税務署にご確認ください。

経営者の疑問と、制度の事実

答えるのは制度の事実だけです。有利・不利は事業ごとの事情で変わるため、判断は税理士・税務署にご確認ください。

経営者うちは年商3億円だ。少額の領収書までインボイスを揃えるのは骨が折れる。この特例は使えるのか。

制度の事実国税庁インボイスQ&A 問111は、少額特例の対象を「基準期間における課税売上高が1億円以下又は特定期間における課税売上高が5千万円以下である事業者」と記載しています。基準期間とは、個人事業者についてはその年の前々年、法人についてはその事業年度の前々事業年度をいいます(消費税法2条1項14号)。特定期間とは、個人事業者についてはその年の前年1月1日から6月30日までの期間、法人についてはその事業年度の前事業年度開始の日以後6月の期間をいいます(消費税法9条の2第4項)。2つの要件は「又は」で結ばれており、いずれかを満たすかどうかで判定される形になっています。ご自身の基準期間・特定期間の課税売上高がいくらになるかを含めた判定は、税理士または税務署にご確認ください。

経営者納税義務の判定では特定期間を給与の支払額で見てもよかったはずだ。こちらも同じか。

制度の事実国税庁インボイスQ&A 問111の※3は「特定期間における課税売上高については、納税義務の判定における場合と異なり、課税売上高に代えて給与支払額の合計額によることはできません」と記載しています。納税義務の判定については消費税法9条の2第3項が課税売上高に代えて給与等支払額の合計額によることができる旨を定めていますが、少額特例の5千万円の判定について同じ扱いは記載されていません。同じ「特定期間」という言葉が使われていますが、判定の材料が異なる形で書かれています。ご自身のケースでの判定は、税理士または税務署にご確認ください。

経営者返還インボイスにも1万円の線があると聞いた。同じ話か。

制度の事実根拠となる条文が異なります。少額特例の1万円は平成28年改正法附則53条の2および改正令附則24条の2第1項に基づくもので、仕入側で請求書等の保存が不要になる範囲を定めています。返還インボイスの1万円は消費税法施行令70条の9第3項第2号に基づくもので、売上側で適格返還請求書の交付義務が免除される範囲を定めています。国税庁のパンフレット「少額な返還インボイスの交付義務免除の概要」は、返還インボイスのほうについて「適用期限や適用対象者について特段の制限はありません」と記載しています。少額特例のほうには、上に挙げた対象者の要件と令和11年9月30日までという期間があります。それぞれの適用関係については、税理士または税務署にご確認ください。

よくある質問

「1万円未満」は税込みですか、税抜きですか。
税込みです。改正令附則24条の2第1項は金額の物差しを「五年消費税法第三十条第八項第一号ニに規定する課税仕入れに係る支払対価の額」と指定しています。その消費税法30条8項1号ニは、支払対価の額について「課されるべき消費税額及び当該消費税額を課税標準として課されるべき地方消費税額(中略)に相当する額がある場合には、当該相当する額を含む」と定めています。国税庁インボイスQ&A 問111も「支払対価の額(税込み)が1万円未満」と記載しています。個別の取引での当てはめは、税理士または税務署にご確認ください。
5,000円の商品と7,000円の商品を同時に買った場合はどうなりますか。
国税庁インボイスQ&A 問112は、例②として「5,000円の商品と7,000円の商品(合計額12,000円)を同時に購入」を挙げ、「1万円以上の取引となり、本経過措置の対象外」としています。同じ問の例①は、5,000円の商品をXX月3日に購入し、7,000円の商品をXX月10日に購入して「それぞれで請求・精算」した場合で、こちらは「それぞれ1万円未満の取引となり、本経過措置の対象」とされています。実際の取引の単位をどう見るかについては、税理士または税務署にご確認ください。
月額10万円の清掃契約は、1日あたりで見れば1万円未満です。対象になりますか。
国税庁インボイスQ&A 問112は、例④として「月額100,000円の清掃業務(稼働日数:12日)」を挙げ、「1万円以上の取引となり、本経過措置の対象外」としています。稼働日数で割った金額ではなく、一回の取引の金額で判定するものとして記載されています。同問の注は「月まとめ請求書のように複数の取引をまとめた単位により判定することとはならないことにご留意ください」とも記載しています。契約の単位をどう捉えるかについては、税理士または税務署にご確認ください。
取引先が免税事業者でも、この特例は使えますか。
国税庁インボイスQ&A 問111の注2は「適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れであっても、課税仕入れに係る支払対価の額(税込み)が1万円未満である場合には本経過措置の対象となります」と記載しています。なお、免税事業者等からの課税仕入れについては経過措置による控除割合の制限が別に定められており、そちらは別の規定です。個別の適用関係は、税理士または税務署にご確認ください。
この特例はいつまで使えますか。
国税庁インボイスQ&A 問111は、対象を「令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に国内において行う課税仕入れ」と記載しています。令和11年9月30日は西暦2029年9月30日です。この日を過ぎた後の取扱いについては、その時点の法令に基づく確認が必要になりますので、税理士または税務署にご確認ください。
帳簿には何を書けばよいのですか。
国税庁インボイスQ&A 問109は、適格請求書等保存方式の下で保存すべき帳簿の記載事項として、①課税仕入れの相手方の氏名又は名称、②課税仕入れを行った年月日、③課税仕入れに係る資産又は役務の内容(軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである旨)、④課税仕入れに係る支払対価の額、の4つを挙げています。また問111の※4は「当該経過措置の適用に当たっては、帳簿に『経過措置(少額特例)の適用がある旨』を記載する必要はありません」と記載しています。自社の帳簿の記載方法については、税理士または税務署にご確認ください。

個別の判断について

適用の可否や有利・不利は、事業区分・基準期間の課税売上高・過去の届出など個別の事情で変わります。実際の判断の前に、税理士等の専門家、または所轄の税務署にご相談ください。

出典(一次情報)

法令・国税庁・省庁など公的機関の公表資料のみを参照しています(解説記事等の二次情報は使用していません)。

本ページは公表されている制度情報にもとづく解説と試算の補助であり、税務に関する助言ではありません。個別の判断は必ず税理士等の専門家にご確認ください(所轄の税務署でも確認できます)。

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