相続があったとき、みなし登録期間の末日と登録が効力を失う日は1日ずれる(消費税法57条の3)
最終確認日: (数値は一次情報で照合)
消費税法57条の3第3項は、みなし登録期間を「当該相続のあつた日の翌日から、当該相続人が前条第一項の登録を受けた日の前日又は当該相続に係る適格請求書発行事業者が死亡した日の翌日から四月を経過する日のいずれか早い日までの期間」と定めています。一方、同条第2項は、みなし登録期間の適用を受ける場合を除き、被相続人の登録が「前項の規定による届出書が提出された日の翌日又は当該死亡した日の翌日から四月を経過した日のいずれか早い日に、その効力を失う」と定めています。「経過する日」は期間の末日となる日、「経過した日」はその翌日ですので、この2つは1日ずれます。同条第4項は、みなし登録期間の適用を受けた場合について「当該相続人のみなし登録期間の末日の翌日以後は、その効力を失う」としており、末日の翌日から失効するという同じ形になっています。さらに消費税法45条2項・3項の申告期限は「その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から四月を経過した日の前日までに」と定められており、起算点が「死亡した日」ではなく「相続の開始があつたことを知つた日」です。相続があった場合の具体的な日付の当てはめは、税理士または税務署にご確認ください。
この記事の要点
- 消費税法57条の3第3項のみなし登録期間は「死亡した日の翌日から四月を経過する日」までで終わる。経過する日は期間の末日となる日である。
- 消費税法57条の3第2項は、被相続人の登録が「死亡した日の翌日から四月を経過した日」に効力を失うとしている。経過した日は期間の末日の翌日であり、第3項の末日とは1日ずれる。
- 消費税法57条の3第4項は、みなし登録期間の適用を受けた場合について「みなし登録期間の末日の翌日以後は、その効力を失う」と定めている。
- 第2項は「次項の規定の適用を受ける場合を除き」と書かれており、みなし登録期間の適用がある場合とない場合で、どちらの規定が働くかが分かれる。
- 消費税法45条2項・3項の申告期限は「その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から四月を経過した日の前日まで」であり、起算点が死亡した日ではない。
- 消費税法57条の3第3項の後段は、みなし登録期間中は被相続人の登録番号を相続人の登録番号とみなすと定めている。
インボイスの登録を受けていた個人事業者が亡くなったとき、関係する日付は1つではありません。
消費税法57条の3は、同じ「死亡した日の翌日から四月」という言い方を、条項ごとに別の語で書き分けています。その結果、みなし登録期間の末日と、登録が効力を失う日は1日ずれます。
さらに、申告の期限は起算点そのものが違います。この記事では、e-Gov の法令原文で3つの日付を並べます。2026年9月6日に取得した内容です。
条文は「経過する日」と「経過した日」を書き分けている
消費税法57条の3の該当部分です(原文ママ)。
2 適格請求書発行事業者が死亡した場合における前条第一項の登録は、次項の規定の適用を受ける場合を除き、前項の規定による届出書が提出された日の翌日又は当該死亡した日の翌日から四月を経過した日のいずれか早い日に、その効力を失う。 3 相続により適格請求書発行事業者の事業を承継した相続人(適格請求書発行事業者を除く。)の当該相続のあつた日の翌日から、当該相続人が前条第一項の登録を受けた日の前日又は当該相続に係る適格請求書発行事業者が死亡した日の翌日から四月を経過する日のいずれか早い日までの期間(次項において「みなし登録期間」という。)については、当該相続人を同条第一項の登録を受けた事業者とみなして、この法律(同条第十項(第一号に係る部分に限る。)を除く。)の規定を適用する。この場合において、当該みなし登録期間中は、当該適格請求書発行事業者に係る同条第四項の登録番号を当該相続人の登録番号とみなす。 4 前項の規定の適用を受けた相続人の被相続人に係る前条第一項の登録は、当該相続人のみなし登録期間の末日の翌日以後は、その効力を失う。
🔴 2項は「四月を経過した日」、3項は「四月を経過する日」です。1文字違いですが、指す日が違います。
国税庁の税務大学校の講本『国税通則法(基礎編)令和8年度版』8頁の用語の説明欄が、この2語を定義しています。
| 用語 | 講本の説明 |
|---|---|
| 経過する日 | 期間の末日となる日 |
| 経過した日 | 期間の末日の翌日 |
用語そのものの解説は、当サイトの別記事([「◯月◯日から2年」はいつ終わるのか](/articles/keika-suru-hi-otobi-rule/))で扱っています。この記事では、相続の場面で実際に日付がどう並ぶかを見ます。
3つの日付を並べる
死亡した日を2026年5月10日、相続の開始があったことを知った日も同じ日として、条文どおりに数えます。
起算日は「死亡した日の翌日」ですので、2026年5月11日です。国税通則法10条1項3号により、期間は起算日に応当する日の前日に満了します。四月後の応当日は2026年9月11日です。
| # | 条文 | 条文の言い方 | 日付 |
|---|---|---|---|
| ① | 消法57の3③ | 死亡した日の翌日から四月を経過する日 | 2026年9月10日(みなし登録期間の末日) |
| ② | 消法57の3④ | みなし登録期間の末日の翌日以後 | 2026年9月11日から効力を失う |
| ③ | 消法57の3② | 死亡した日の翌日から四月を経過した日 | 2026年9月11日に効力を失う |
🔴 ①と②③は1日ずれています。そして、ずれたまま連続しています。みなし登録期間は9月10日で終わり、登録は9月11日から効力を失う、という並びです。
2項と4項はどちらが働くのか
2項の書き出しに条件が付いています。「次項の規定の適用を受ける場合を除き」です。次項とは3項、すなわちみなし登録期間の規定です。
| 場面 | 働く条項 | 登録が効力を失う日 |
|---|---|---|
| 相続人が事業を承継し、みなし登録期間の適用を受ける | 消法57の3④ | みなし登録期間の末日の翌日以後 |
| みなし登録期間の適用を受けない | 消法57の3② | 届出書が提出された日の翌日、または死亡した日の翌日から四月を経過した日のいずれか早い日 |
⚠️ 2項には「届出書が提出された日の翌日」という、もう1つの候補があります。四月を待たずに届出書が提出されれば、そちらが早い日になります。四月という日数だけで決まるわけではありません。
なお、その届出書について消費税法57条の3第1項は「同号に掲げる場合に該当することとなつた旨を記載した届出書を、速やかに、当該適格請求書発行事業者の納税地を所轄する税務署長に提出しなければならない」と定めています。日数は書かれていません。
申告の期限は、起算点が違う
ここが取り違えやすい点です。消費税法45条2項・3項は次のように定めています(原文ママ)。
2 前項の規定による申告書を提出すべき個人事業者がその課税期間の末日の翌日から当該申告書の提出期限までの間に当該申告書を提出しないで死亡した場合には、その相続人は、政令で定めるところにより、その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から四月を経過した日の前日までに、税務署長に当該申告書を提出しなければならない。 3 個人事業者が課税期間の中途において死亡した場合において、その者の当該課税期間分の消費税について第一項の規定による申告書を提出しなければならない場合に該当するときは、その相続人は、政令で定めるところにより、その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から四月を経過した日の前日までに、税務署長に当該消費税について当該申告書を提出しなければならない。
🔴 起算点は「死亡した日」ではなく「相続の開始があつたことを知つた日」です。
| 条文 | 起算点 |
|---|---|
| 消法57の3②③ | 死亡した日の翌日 |
| 消法45②③ | 相続の開始があつたことを知つた日の翌日 |
この2つが同じ日とは限りません。知った日が後になれば、申告期限だけが後ろにずれ、みなし登録期間の末日は動きません。
「経過した日の前日まで」は、経過する日と同じ日
消費税法45条2項・3項は「四月を経過した日の前日まで」という書き方です。経過した日は期間の末日の翌日ですので、その前日は期間の末日そのものになります。
死亡した日と知った日がどちらも2026年5月10日である場合、四月を経過した日は2026年9月11日、その前日は2026年9月10日です。上の表の①と同じ日になります。
| 条文 | 言い方 | 日付 |
|---|---|---|
| 消法57の3③ | 四月を経過する日 | 2026年9月10日 |
| 消法45②③ | 四月を経過した日の前日 | 2026年9月10日 |
| 消法57の3② | 四月を経過した日 | 2026年9月11日 |
3通りの書き方が、2つの日付に落ちています。
みなし登録期間中の登録番号
消費税法57条の3第3項の後段は、みなし登録期間中の登録番号について定めています(原文ママ)。
この場合において、当該みなし登録期間中は、当該適格請求書発行事業者に係る同条第四項の登録番号を当該相続人の登録番号とみなす。
ここでいう同条第四項は消費税法57条の2第4項で、適格請求書発行事業者登録簿に登載される登録番号のことです。
このみなしが働くのは、みなし登録期間の間だけです。上の例では2026年9月10日までになります。
なお、同条第5項は、税務署長が登録を抹消し「当該登録がその効力を失つた旨及びその年月日を速やかに公表しなければならない」と定めています。公表サイトの表示については、当サイトの別記事([取引先の登録番号を公表サイトで確認する](/articles/kohyo-site-toroku-bango-kakunin/))で扱っています。
まとめ
- 消費税法57条の3は、同じ「死亡した日の翌日から四月」を、条項ごとに別の語で書き分けている
- 3項は「四月を経過する日」=みなし登録期間の末日。期間の末日となる日である
- 2項は「四月を経過した日」=登録が効力を失う日。期間の末日の翌日である。3項と1日ずれる
- 4項は、みなし登録期間の適用を受けた場合について「みなし登録期間の末日の翌日以後は、その効力を失う」としている
- 2項には「次項の規定の適用を受ける場合を除き」という条件が付いており、みなし登録期間の適用の有無で働く条項が分かれる
- 2項にはもう1つ「届出書が提出された日の翌日」という候補があり、いずれか早い日になる
- 消費税法45条2項・3項の申告期限は起算点が違う。「相続の開始があつたことを知つた日」の翌日から数える
- 45条の「四月を経過した日の前日」は、57条の3第3項の「四月を経過する日」と同じ日になる
相続があった場合の具体的な日付の当てはめは、税理士または税務署にご確認ください。
経営者の疑問と、制度の事実
答えるのは制度の事実だけです。有利・不利は事業ごとの事情で変わるため、判断は税理士・税務署にご確認ください。
経営者父が5月10日に亡くなり、私が事業を引き継いだ。父の登録番号はいつまで使えるのか。
制度の事実消費税法57条の3第3項は、みなし登録期間を「当該相続のあつた日の翌日から、当該相続人が前条第一項の登録を受けた日の前日又は当該相続に係る適格請求書発行事業者が死亡した日の翌日から四月を経過する日のいずれか早い日までの期間」と定め、同項の後段で「当該みなし登録期間中は、当該適格請求書発行事業者に係る同条第四項の登録番号を当該相続人の登録番号とみなす」としています。死亡した日が2026年5月10日であれば、その翌日は2026年5月11日です。国税通則法10条1項3号により、四月を経過する日は応当日である2026年9月11日の前日、すなわち2026年9月10日になります。ただし、相続人が自身の登録を受けた日の前日のほうが早ければ、そちらが末日です。御社の事案での日付の当てはめは、税理士または税務署にご確認ください。
経営者では、父の登録が効力を失うのも同じ9月10日なのか。
制度の事実消費税法57条の3第4項は「前項の規定の適用を受けた相続人の被相続人に係る前条第一項の登録は、当該相続人のみなし登録期間の末日の翌日以後は、その効力を失う」と定めています。みなし登録期間の末日が2026年9月10日であれば、その翌日は2026年9月11日です。また、みなし登録期間の適用を受けない場合について、同条第2項は「前項の規定による届出書が提出された日の翌日又は当該死亡した日の翌日から四月を経過した日のいずれか早い日に、その効力を失う」としており、死亡した日の翌日から四月を経過した日はやはり2026年9月11日です。条文は「経過する日」と「経過した日」を書き分けています。個別の事案の当てはめは、税理士または税務署にご確認ください。
経営者申告の期限も9月10日や9月11日で数えておけばよいのか。
制度の事実消費税法45条2項および3項は「その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から四月を経過した日の前日までに、税務署長に当該申告書を提出しなければならない」と定めています。起算点は死亡した日ではなく、相続の開始があつたことを知つた日です。この2つが同じ日であれば、翌日から四月を経過した日は2026年9月11日、その前日は2026年9月10日になりますが、知つた日が後であれば期限も後ろにずれます。また、消費税法57条の3第1項は、死亡した旨を記載した届出書を「速やかに」提出しなければならないと定めており、こちらには日数が書かれていません。御社の期限については、税理士または税務署にご確認ください。
よくある質問
- みなし登録期間はいつ終わりますか。
- 消費税法57条の3第3項は、みなし登録期間を「当該相続のあつた日の翌日から、当該相続人が前条第一項の登録を受けた日の前日又は当該相続に係る適格請求書発行事業者が死亡した日の翌日から四月を経過する日のいずれか早い日までの期間」と定めています。終わりの候補は2つあり、相続人自身が登録を受けた日の前日と、死亡した日の翌日から四月を経過する日のうち、早いほうです。具体的な日付の当てはめは、税理士または税務署にご確認ください。
- 「四月を経過する日」と「四月を経過した日」は、何が違うのですか。
- 国税庁の税務大学校の講本『国税通則法(基礎編)令和8年度版』8頁の用語の説明欄は、「経過する日」を「期間の末日となる日」、「経過した日」を「期間の末日の翌日」と定義しています。したがってこの2語は1日ずれます。消費税法57条の3は、第3項で「四月を経過する日」、第2項で「四月を経過した日」と書き分けています。用語そのものの解説は、当サイトの別記事「「◯月◯日から2年」はいつ終わるのか」で扱っています。
- 第2項と第4項は、どちらも登録が効力を失う規定に見えます。どう使い分けるのですか。
- 消費税法57条の3第2項は「次項の規定の適用を受ける場合を除き」という書き出しになっています。次項とは第3項、すなわちみなし登録期間の規定です。第4項は「前項の規定の適用を受けた相続人の被相続人に係る前条第一項の登録は、当該相続人のみなし登録期間の末日の翌日以後は、その効力を失う」と定めています。つまり、みなし登録期間の適用がある場合は第4項、ない場合は第2項が働く形になっています。自社の事案がどちらに当たるかは、税理士または税務署にご確認ください。
- みなし登録期間中は、どの登録番号を使うのですか。
- 消費税法57条の3第3項の後段は「この場合において、当該みなし登録期間中は、当該適格請求書発行事業者に係る同条第四項の登録番号を当該相続人の登録番号とみなす。」と定めています。ここでいう同条第四項とは消費税法57条の2第4項で、適格請求書発行事業者登録簿に登載される登録番号のことです。取引書類への記載など個別の実務については、税理士または税務署にご確認ください。
- 申告の期限も「死亡した日の翌日から四月」ですか。
- 消費税法45条2項および3項は「その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から四月を経過した日の前日までに、税務署長に当該申告書を提出しなければならない」と定めています。起算点は「死亡した日」ではなく「相続の開始があつたことを知つた日」です。同じ四月でも、起算する日が別に定められています。個別の期限については、税理士または税務署にご確認ください。
個別の判断について
適用の可否や有利・不利は、事業区分・基準期間の課税売上高・過去の届出など個別の事情で変わります。実際の判断の前に、税理士等の専門家、または所轄の税務署にご相談ください。
出典(一次情報)
- 消費税法(昭和63年法律第108号)第57条の3(適格請求書発行事業者が死亡した場合における手続等)/e-Gov 法令検索・版ID 363AC0000000108_20261001_428AC0000000015確認日 2026-09-06
- 消費税法(昭和63年法律第108号)第45条第2項・第3項(課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについての確定申告)/e-Gov 法令検索・版ID 363AC0000000108_20261001_428AC0000000015確認日 2026-09-06
- 国税通則法(昭和37年法律第66号)第10条第1項(期間の計算及び期限の特例)/e-Gov 法令検索・版ID 337AC0000000066_20260624_508AC0000000046確認日 2026-09-05
- 国税庁 税務大学校 講本『国税通則法(基礎編)令和8年度版』8頁【参考】期間の計算の具体例(用語の説明欄)確認日 2026-09-05
法令・国税庁・省庁など公的機関の公表資料のみを参照しています(解説記事等の二次情報は使用していません)。