令和8年度税制改正に対応

特定非常災害の被災事業者には、消費税の届出等の特例があります(根拠は消費税法ではなく租税特別措置法86条の5)

最終確認日: (数値は一次情報で照合)

結論から

特定非常災害の被災事業者に関する消費税の届出等の特例は、消費税法ではなく租税特別措置法86条の5に置かれています。条文の見出しは「納税義務の免除の規定の適用を受けない旨の届出等に関する特例」です。被災事業者が消費税課税事業者選択届出書、同不適用届出書、消費税簡易課税制度選択届出書、同不適用届出書を「指定日」までに納税地を所轄する税務署長に提出したときは、適用を受けようとする課税期間の初日の前日に提出したものとみなすと定められています(同条1項・3項・10項・12項)。また同条2項は消費税法9条6項および7項を、同条11項は消費税法37条6項を適用しないとしています。さらに同条13項は、被災事業者である適格請求書発行事業者のうちその課税期間に係る基準期間における課税売上高が1,000万円以下である者が、指定日までに消費税法57条の2第10項1号の届出書を提出した場合には、その提出があった日の翌日に登録がその効力を失うと定めています。ただし、この「指定日」がいつなのかは条文にも国税庁告示にも日付として書かれていません。国税庁長官があとから出す別の告示で定まる仕組みで、令和6年能登半島地震では納税地の市町ごとに令和6年7月31日、令和7年1月31日、令和7年10月31日の3つに分かれました。熊本県にも先例が2つあり、平成28年熊本地震では平成28年10月17日に2本(平成28年11月30日・平成28年12月16日)、令和2年7月豪雨では令和2年12月1日に1本(令和3年2月1日)が出ています。本数も期間も災害ごとに異なります。令和8年熊本地震の指定期日は2026年10月10日時点で公表されていません。自社が被災事業者に当たるか、どの届出書を提出することになるかについては、税理士または税務署にご確認ください。

この記事の要点

  • 根拠は租税特別措置法86条の5である。消費税法の中には置かれていない。条文の見出しは「納税義務の免除の規定の適用を受けない旨の届出等に関する特例」で、全16項からなる。
  • 「特定非常災害」は、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律2条1項の規定により指定された非常災害をいう(租税特別措置法86条の5第1項)。同法2条1項は「政令で指定する」と定めている。
  • 税務署長の承認は条文の要件に出てこない。国が政令で特定非常災害を指定し、国税庁長官が指定日を定める、という組み立てになっている。
  • 指定日までに届出書を提出すれば、適用を受けようとする課税期間の初日の前日に提出したものとみなされる(1項・3項・10項・12項)。事業を開始した日の属する課税期間その他の政令で定める課税期間については、その課税期間の末日とされている。
  • 2項は消費税法9条6項および7項を、11項は消費税法37条6項を適用しないと定めている。いわゆる2年間・3年間の制限に当たる規定が、条文上外されている。
  • 13項は、被災事業者である適格請求書発行事業者(その課税期間に係る基準期間における課税売上高が1,000万円以下である者に限る)が指定日までに消費税法57条の2第10項1号の届出書を提出した場合、その提出があった日の翌日に登録が効力を失うと定めている。
  • 「指定日」は条文にも国税庁告示第22号にも日付として書かれていない。国税庁長官があとから出す別の告示で定まる。
  • 令和6年能登半島地震では、指定期日が3回に分かれた。国税庁告示第13号(令和6年6月14日公布)で令和6年7月31日、告示第22号(令和6年12月9日公布)で令和7年1月31日、令和7年国税庁告示第18号(令和7年9月12日公布)で令和7年10月31日である。納税地の市町ごとに異なる。
  • 熊本県には先例が2つある。平成28年熊本地震では延長の告示(平成28年4月22日・県全域)に対し期日を定めた告示が平成28年10月17日に2本出て、40市町村が平成28年11月30日、5市町村が平成28年12月16日とされた。令和2年7月豪雨では延長の告示(令和2年7月31日)に対し令和2年12月1日に1本出て、令和3年2月1日とされた。
  • 3つの先例は本数も期間も異なる。能登半島地震は3本(約5か月・約11か月・約1年9か月)、平成28年熊本地震は2本(約6か月)、令和2年7月豪雨は1本(約4か月)である。どれか1つから令和8年熊本地震の日付を見込むことはできない。
  • 令和8年熊本地震の指定期日は、2026年10月10日時点で国税庁告示一覧に掲載されていない。

消費税の特例が、消費税法にあるとは限らない

災害で届出書が期限に間に合わないときの仕組みとして、消費税法の中には次の2つがあります。

  • 消費税法9条9項・37条8項 — やむを得ない事情があるときの、税務署長の承認
  • 消費税法37条の2 — 災害等があった場合の、簡易課税制度の届出に関する特例(これも承認)

(→ [届出書が期限に間に合わなかったときの承認は2種類あります](/articles/yamuoenai-jijo-todokede-shonin/))

この2つとは別に、もう1つあります。それが 租税特別措置法86条の5 です。消費税法の中を探しても出てきません。

条文の見出しは「納税義務の免除の規定の適用を受けない旨の届出等に関する特例」で、全16項からなります。

用語は、この条文の中で定義されている

86条の5第1項は、この条だけで使う言葉を先に定義しています。

用語条文の定義
特定非常災害特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律2条1項の規定により特定非常災害として指定された非常災害
被災事業者特定非常災害の被災者である事業者(消費税法2条1項4号に規定する事業者)
被災日事業者が被災事業者となった日
指定日国税庁長官が、当該特定非常災害の状況および当該特定非常災害に係る国税通則法11条の規定による申告に関する期限の延長の状況を勘案して別に定める日

特定非常災害法2条1項は、著しく異常かつ激甚な非常災害について「当該非常災害を特定非常災害として政令で指定するものとする」と定めています。指定するのは政令です。

指定日までに出せば、初日の前日に出したものとみなされる

この特例の基本の形は、提出した日を巻き戻すというものです。

第八十六条の五 (前略)被災事業者(中略)で被災日(中略)の属する課税期間以後の課税期間につき消費税法第九条第四項の規定の適用を受けようとする者が、同項の規定による届出書を(中略)指定日(中略)までにその納税地を所轄する税務署長に提出したときは、当該届出書を同項の規定の適用を受けようとする課税期間の初日の前日(中略)に当該税務署長に提出したものとみなして、同項の規定を適用する。

(e-Gov 法令検索 租税特別措置法・版ID 332AC0000000026_20261001_508AC0000000012。2026年10月10日に取得。令和8年10月1日に新しい施行版へ移りましたが、第86条の5の条文は前の版と一字一句同じです)

同じ形が4か所にあります。

項対象の届出書
1項消費税法9条4項(課税事業者選択)
3項消費税法9条5項(課税事業者選択不適用)
10項消費税法37条1項(簡易課税制度選択)
12項消費税法37条5項(簡易課税制度選択不適用)

括弧書きで、事業を開始した日の属する課税期間その他の政令で定める課税期間であって、届出書がその課税期間の末日の翌日以後に提出された場合には、その課税期間の末日とされています。

条文に「税務署長の承認」は出てきません。提出したときは、みなす。それだけの書き方です。

2年・3年の制限に当たる規定が、条文上外されている

もう1つ、この条文が定めていることがあります。

2項は、消費税法9条4項の届出書を提出した事業者が被災事業者となった場合、または被災事業者が指定日までにその届出書を提出した場合について、その後の消費税法9条5項の届出書の提出には「同条第六項及び第七項の規定は、適用しない」としています。

11項は、簡易課税の側について「同条第六項の規定は、適用しない」としています。

外される規定一般に呼ばれている内容
消費税法9条6項課税事業者を選択した後、一定期間は不適用届出書を提出できない
消費税法9条7項調整対象固定資産を取得した場合の、さらに長い期間の制限
消費税法37条6項簡易課税制度を選択した後、一定期間は不適用届出書を提出できない

このほか、4項から9項までが、新設法人・特定新規設立法人(消費税法12条の2・12条の3)や高額特定資産(同法12条の4)に関する規定について、適用しないと定めています。これらの一部は、国税通則法11条の規定の適用を受けた者でない場合には、財務省令で定める事項を記載した届出書を一定の日までに提出した場合に限る、という条件が括弧書きで付いています。

登録の取消しは、期日の定め方も失効する日も違う

13項は、インボイス発行事業者の登録について定めています。

13 被災事業者である適格請求書発行事業者(中略)その課税期間に係る同法第九条第一項に規定する基準期間における課税売上高が千万円以下である者に限る。以下この項及び次項において同じ。)が、指定日までに同法第五十七条の二第十項第一号の規定による届出書をその納税地を所轄する税務署長に提出した場合には、その提出があつた日の翌日に、同条第一項の登録は、その効力を失う。

平時の取扱いは消費税法57条の2第10項1号によるもので、期日の定め方も、登録が効力を失う日も、条文が異なります(→ [インボイス登録の取消手順](/articles/invoice-cancel/))。

なお、13項には「その課税期間に係る同法第九条第一項に規定する基準期間における課税売上高が千万円以下である者に限る」という限定が付いています(原文は漢数字で、1,000万円を指します)。この基準期間における課税売上高そのものの計算方法は消費税法9条2項が定めており、返品・値引きなどの返還等を控除した残額とされています(→ [1,000万円の判定では返品も引きます](/articles/kijun-kikan-henkan-hikikata/))。

14項は、13項を3項の届出書(課税事業者選択不適用届出書)を提出した場合について準用しています。15項は、登録が効力を失ったときの公表について、消費税法57条の2第11項を読み替えて準用しています。

国税庁が令和8年熊本地震の被災事業者向けに公表している資料には、次の記載があります。

インボイス発行事業者の登録を受けてからその登録の取消しを受けるまでの間の取引について交付するインボイス等は有効なものとなります。したがって、取引先(買手)においては、その交付を受けたインボイス等に基づき仕入税額控除を行うことができます。

いちばん大事なところ ── 「指定日」には日付が書かれていない

ここまで「指定日までに」という言葉が何度も出てきました。その日がいつなのかは、条文には書かれていません。

令和8年熊本地震について国税庁長官が定める日を定めた 国税庁告示第22号(令和8年8月12日)を読んでも、本文に具体的な年月日は現れません。事業者の区分ごとに、次のような定義が置かれているだけです。

事業者の区分指定日
国税通則法施行令3条1項(地域指定)の適用を受けた事業者国税庁告示第21号に規定する「別途国税庁告示で定める期日」
同条3項(個別指定)の適用を受けた事業者同項の規定に基づき税務署長が指定した日
上記いずれでもない事業者その期日を勘案して別途国税庁告示で定める日

(国税通則法施行令3条の3つのルートについては → [災害で申告・納付ができないときの期限延長には3つのルートがあります](/articles/saigai-kigen-encho-3route/))

日付は、あとから出る別の告示で定まります。

令和6年能登半島地震では、市町ごとに3回に分かれた

では、その「あとから出る別の告示」はいつ出るのか。令和6年能登半島地震の実例を、告示の原本で並べます。

告示公布日対象定められた日
国税庁告示第13号令和6年6月14日富山県全域、石川県の13市町(金沢市・小松市・加賀市・羽咋市・かほく市・白山市・能美市・野々市市・能美郡川北町・河北郡津幡町・河北郡内灘町・羽咋郡宝達志水町・鹿島郡中能登町)令和6年7月31日
国税庁告示第22号令和6年12月9日石川県 七尾市・羽咋郡志賀町令和7年1月31日
令和7年国税庁告示第18号令和7年9月12日石川県 輪島市・珠洲市・鳳珠郡穴水町・鳳珠郡能登町令和7年10月31日

(いずれも国税庁告示の原本。2026年9月25日に再取得し、日付は全件一致しました)

また、地域指定にも個別指定にも当たらない被災事業者について定めた 国税庁告示第14号(令和6年6月14日)は、日を 令和6年7月31日 としています。第13号と同じ日に公布され、同じ日付を定めています。同じ日に2本の告示が出た形です。

読み取れることは3つです。

  • 同じ災害でも、日付は1つではありません。納税地の市町によって 令和6年7月31日・令和7年1月31日・令和7年10月31日 の3つに分かれました
  • 地震が起きたのは令和6年1月です。最も遅い4市町の日付は、そこから約1年9か月後にあたります
  • したがって、指定日は〈どの災害か〉と〈納税地がどこか〉が決まって、なお告示を待って初めて確定します

熊本県には、先例がさらに2つあります(平成28年・令和2年)

同じ「別途国税庁告示で定める期日」の仕組みは、熊本県でも過去に2回 使われています。告示の原本で並べます(2026年9月25日に取得)。

平成28年熊本地震

告示公布日対象定められた日
国税庁告示第9号平成28年4月22日熊本県(全域)。期限が平成28年4月14日以後に到来するものを「別途国税庁告示で定める期日」まで延長—
国税庁告示第15号平成28年10月17日熊本県の40市町村(八代市・人吉市・荒尾市ほか)平成28年11月30日
国税庁告示第16号平成28年10月17日熊本県の5市町村(熊本市・阿蘇郡西原村・阿蘇郡南阿蘇村・上益城郡御船町・上益城郡益城町)平成28年12月16日

期日を定めた告示は同じ日に2本 出ており、延長の告示(4月22日)からは約6か月後です。40市町村と5市町村を合わせると45で、熊本県の市町村の数と一致します。

令和2年7月豪雨

告示公布日対象定められた日
令和2年国税庁告示第14号令和2年7月31日熊本県の一部(人吉市・球磨郡球磨村ほか球磨郡の8町村・八代市坂本町)。期限が令和2年7月4日以後に到来するものを「別途国税庁告示で定める期日」まで延長—
令和2年国税庁告示第20号令和2年12月1日上記の地域(地域を分けずに1本)令和3年2月1日

期日を定めた告示は1本で、延長の告示(7月31日)からは約4か月後です。

3つの先例は、3つとも違います

災害期日を定めた告示本数延長の告示からの期間
平成28年熊本地震平成28年10月17日(第15号・第16号)2本(同日)約6か月
令和2年7月豪雨(熊本県)令和2年12月1日(第20号)1本約4か月
令和6年能登半島地震令和6年6月14日・令和6年12月9日・令和7年9月12日3本約5か月・約11か月・約1年9か月

本数も期間も、災害ごとに違います。能登半島地震の最も遅い日付は約1年9か月後ですが、熊本県の2つの先例はいずれも1本から2本で、約4か月から約6か月で期日が定められています。

🔴 ここから令和8年熊本地震の日付を見込むことはできません。平成28年は熊本県の全域が延長の対象でしたが、令和8年(告示第21号)の対象は八代市・宇土市・宇城市・八代郡氷川町の4市町です。令和2年は球磨川の流域が対象でした。対象の広さも被害の形も違います。

⚠️ 平成28年当時、租税特別措置法86条の5 はまだありませんでした(平成29年度の改正で設けられたものです)。上の3つの先例からたどれるのは、国税通則法施行令3条1項の延長に係る期日が「いつ・どういう形で公表されたか」までです。自社の指定日については、税理士または税務署にご確認ください。

令和8年熊本地震は、まだ公表されていない

令和8年熊本地震については、次の2本の告示が令和8年8月12日付で出ています。

  • 国税庁告示第21号 — 熊本県 八代市・宇土市・宇城市・八代郡氷川町について、期限が令和8年7月28日以後に到来するものを「別途国税庁告示で定める期日」まで延長するもの
  • 国税庁告示第22号 — 租税特別措置法86条の5第1項に基づき国税庁長官が定める日を定めるもの(上の表のとおり、日付は書かれていません)

その「別途国税庁告示で定める期日」を定めた告示は、2026年10月10日に国税庁の告示一覧を確認した時点でも掲載されていません。一覧の最新は国税庁告示第24号(令和8年10月1日)で、果実酒等の製法品質表示基準に関するものです。

先例は3つあり、本数も期間もそれぞれ違います。そこから熊本の日付を見込むことはできません。現時点で言えるのは、まだ決まっていないということだけです。

この記事のまとめ

  • 特定非常災害の被災事業者に関する消費税の届出等の特例は、租税特別措置法86条の5にある。消費税法の中にはない。
  • 税務署長の承認は条文の要件に出てこない。特定非常災害は政令で指定され、指定日は国税庁長官が定める。
  • 指定日までに届出書を提出すれば、適用を受けようとする課税期間の初日の前日に提出したものとみなされる(1項・3項・10項・12項)。
  • 2項・11項は、消費税法9条6項・7項・37条6項を適用しないと定めている。
  • 13項は、基準期間における課税売上高が1,000万円以下の被災事業者である適格請求書発行事業者について、指定日までに登録の取消しを求める旨の届出書を提出した場合、その提出があった日の翌日に登録が効力を失うと定めている。
  • 「指定日」には日付が書かれていない。条文にも、国税庁告示第22号にもない。あとから出る別の告示で決まる。
  • 令和6年能登半島地震では、納税地の市町ごとに3回に分かれた(令和6年7月31日/令和7年1月31日/令和7年10月31日)。最も遅い4市町は地震から約1年9か月後の日付である。
  • 熊本県には先例が2つある。平成28年熊本地震は平成28年10月17日に2本(平成28年11月30日/平成28年12月16日・延長の告示から約6か月)、令和2年7月豪雨は令和2年12月1日に1本(令和3年2月1日・同じく約4か月)である。
  • 3つの先例は本数も期間も異なる。どれか1つから令和8年熊本地震の日付を見込むことはできない。
  • 令和8年熊本地震の期日は、2026年10月10日時点で公表されていない。

この特例は、事業者ごとの事情と納税地、そして告示の公表状況によって当てはまり方が変わります。自社が被災事業者に当たるかどうか、どの届出書を提出することになるかについては、税理士または税務署にご相談ください。最新の告示は国税庁のウェブサイトの告示一覧に掲載されます。

経営者の疑問と、制度の事実

答えるのは制度の事実だけです。有利・不利は事業ごとの事情で変わるため、判断は税理士・税務署にご確認ください。

経営者うちの地域が災害の指定を受けた。消費税の届出書の期限も何か延びるのか。

制度の事実災害に関係して消費税の届出書の期限に効く仕組みは、条文の系統が複数あります。この記事で扱っているのは租税特別措置法86条の5で、特定非常災害の被災事業者について、消費税課税事業者選択届出書やその不適用届出書、消費税簡易課税制度選択届出書やその不適用届出書を「指定日」までに提出したときは、適用を受けようとする課税期間の初日の前日に提出したものとみなす、という定め方です。これとは別に、消費税法9条9項・37条8項による税務署長の承認の仕組みがあり、また消費税法37条の2は災害等があった場合の簡易課税制度の届出に関する特例を定めています。さらに、申告や納付の期限そのものについては国税通則法11条と同法施行令3条があります。御社の地域が受けた指定がどれに当たるか、どの仕組みが働くかについては、税理士または税務署にご確認ください。

経営者一度課税事業者を選ぶと2年間は戻れないと聞いていた。被災した場合もそうなのか。

制度の事実租税特別措置法86条の5第2項は、消費税法9条4項の規定による届出書を提出した事業者が被災事業者となった場合、または被災事業者が指定日までにその届出書を提出した場合について、被災日の属する課税期間以後の課税期間に係る消費税法9条5項の規定による届出書の提出については「同条第六項及び第七項の規定は、適用しない」と定めています。消費税法9条6項が2年間に関する規定、同条7項が調整対象固定資産に関する規定です。簡易課税の側については、同法86条の5第11項が消費税法37条6項を適用しないと定めています。いずれも条文上、適用しないと書かれているという事実です。御社が被災事業者に当たるか、また実際にどの届出書をいつ提出することになるかについては、税理士または税務署にご確認ください。

経営者「指定日までに出せばよい」と言われても、その日がいつか分からないと動きようがないのだが。

制度の事実租税特別措置法86条の5第1項は、指定日を「国税庁長官が当該特定非常災害の状況及び当該特定非常災害に係る国税通則法第十一条の規定による申告に関する期限の延長の状況を勘案して別に定める日」とだけ定義しており、日付は書かれていません。令和8年熊本地震について定めた国税庁告示第22号(令和8年8月12日)も、区分ごとの定義を置くだけで日付を記載していません。実際の日付は、あとから出る別の告示で定まります。令和6年能登半島地震では、その日付を定めた告示が3回に分かれて出ており、令和6年7月31日、令和7年1月31日、令和7年10月31日と、納税地の市町によって異なる日になりました。したがって、指定日は災害と納税地によって変わり、告示が出るまでは確定しないという性質のものです。御社について現時点でどの告示が出ているかは、国税庁のウェブサイトの告示一覧でご確認いただくか、税務署にご確認ください。

よくある質問

この特例は消費税法のどこに書いてありますか。
消費税法の中にはありません。租税特別措置法86条の5に置かれています。条文の見出しは「納税義務の免除の規定の適用を受けない旨の届出等に関する特例」で、全16項からなります。同条1項は、特定非常災害の被災者である事業者を「被災事業者」と定義したうえで、消費税法9条4項の規定による届出書を「指定日」までにその納税地を所轄する税務署長に提出したときは、適用を受けようとする課税期間の初日の前日に提出したものとみなして同項の規定を適用する、と定めています。自社に適用があるかどうかは、税理士または税務署にご確認ください。
税務署長の承認を受ける必要はありますか。
租税特別措置法86条の5の条文には、税務署長の承認という要件が出てきません。1項は「指定日までにその納税地を所轄する税務署長に提出したときは(中略)提出したものとみなして」という書き方です。仕組みの側では、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律2条1項により非常災害が政令で指定され、租税特別措置法86条の5第1項により国税庁長官が指定日を別に定める、という組み立てになっています。これは、消費税法9条9項・37条8項による承認や、消費税法37条の2による承認とは条文の系統が異なります。実際の手続については、税理士または税務署にご確認ください。
「指定日」とは、いつのことですか。
租税特別措置法86条の5第1項は、指定日を「国税庁長官が当該特定非常災害の状況及び当該特定非常災害に係る国税通則法第十一条の規定による申告に関する期限の延長の状況を勘案して別に定める日」と定義しています。具体的な日付は条文には書かれていません。令和8年熊本地震について国税庁長官が定める日を定めた国税庁告示第22号(令和8年8月12日)にも、日付は記載されていません。同告示は事業者の区分ごとに、国税庁告示第21号に規定する別途国税庁告示で定めることとされている期日、税務署長が指定した日、その期日を勘案して別途国税庁告示で定める日、という定義で書かれています。日付そのものは、あとから出る別の告示で定まります。自社の指定日については、税理士または税務署にご確認ください。
過去の災害では、指定日はどのくらいで決まりましたか。
令和6年能登半島地震では、国税通則法施行令3条1項の地域指定を受けた事業者に係る期日が3回に分かれて告示されました。国税庁告示第13号(令和6年6月14日公布)は、富山県全域と石川県の13市町について令和6年7月31日としています。国税庁告示第22号(令和6年12月9日公布)は、石川県七尾市および羽咋郡志賀町について令和7年1月31日としています。令和7年国税庁告示第18号(令和7年9月12日公布)は、石川県輪島市、珠洲市、鳳珠郡穴水町、鳳珠郡能登町について令和7年10月31日としています。いずれも原本に記載された日付です。同じ災害でも納税地の市町によって異なっており、最も遅い4市町は令和6年1月の地震から1年9か月後の日付になっています。熊本県にも先例が2つあります。平成28年熊本地震では、熊本県全域を対象とする延長の告示(国税庁告示第9号・平成28年4月22日)に対し、期日を定めた告示が平成28年10月17日に2本出ており、40市町村について平成28年11月30日(第15号)、5市町村について平成28年12月16日(第16号)とされています。令和2年7月豪雨では、延長の告示(令和2年国税庁告示第14号・令和2年7月31日)に対し、期日を定めた告示が令和2年12月1日に1本出ており(第20号)、令和3年2月1日とされています。本数も期間も災害ごとに異なり、能登半島地震は3本、平成28年熊本地震は2本、令和2年7月豪雨は1本です。ほかの災害でどうなるかは、それぞれの告示が出るまで分かりません。
令和8年熊本地震の指定期日はもう決まっていますか。
2026年10月10日に国税庁の告示一覧を確認した時点でも、掲載されていません。一覧の最新は国税庁告示第24号(令和8年10月1日・果実酒等の製法品質表示基準に関するもの)で、租税特別措置法86条の5に係るものでも申告期限等の指定に係るものでもありません。令和8年8月12日付の国税庁告示第21号(熊本県八代市、宇土市、宇城市、八代郡氷川町に係る申告期限等の延長)と同第22号(租税特別措置法86条の5第1項に基づき国税庁長官が定める日を定める件)は掲載されていますが、いずれも期日そのものは別途の告示に委ねる書き方です。最新の状況は国税庁のウェブサイトでご確認いただくか、税務署にご確認ください。
インボイス発行事業者の登録をやめる場合の期日も変わるのですか。
租税特別措置法86条の5第13項は、被災事業者である適格請求書発行事業者(その課税期間に係る消費税法9条1項に規定する基準期間における課税売上高が1,000万円以下である者に限る)が、指定日までに消費税法57条の2第10項1号の規定による届出書をその納税地を所轄する税務署長に提出した場合には「その提出があつた日の翌日に、同条第一項の登録は、その効力を失う」と定めています。あわせて、その提出があった日の属する課税期間に係る消費税法9条1項および15条6項について読替えを行うとしています。平時の取扱いは消費税法57条の2第10項1号によるもので、期日の定め方も効力を失う日も条文が異なります。自社が13項の要件に当たるかどうかは、税理士または税務署にご確認ください。
登録が効力を失った場合、それまでに交付したインボイスはどうなりますか。
国税庁が令和8年熊本地震の被災事業者向けに公表している「消費税の届出等に関する特例等について」には「インボイス発行事業者の登録を受けてからその登録の取消しを受けるまでの間の取引について交付するインボイス等は有効なものとなります。したがって、取引先(買手)においては、その交付を受けたインボイス等に基づき仕入税額控除を行うことができます」と記載されています。個別の取引の取扱いについては、税理士または税務署にご確認ください。

個別の判断について

適用の可否や有利・不利は、事業区分・基準期間の課税売上高・過去の届出など個別の事情で変わります。実際の判断の前に、税理士等の専門家、または所轄の税務署にご相談ください。

出典(一次情報)

法令・国税庁・省庁など公的機関の公表資料のみを参照しています(解説記事等の二次情報は使用していません)。

本ページは公表されている制度情報にもとづく解説と試算の補助であり、税務に関する助言ではありません。個別の判断は必ず税理士等の専門家にご確認ください(所轄の税務署でも確認できます)。

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