令和8年度税制改正に対応

届出書が期限に間に合わなかったときの承認は2種類あります(「やむを得ない事情」の4類型と、災害等の特例)

最終確認日: (数値は一次情報で照合)

結論から

消費税の届出書について「期限に間に合わなかったときの承認」は、条文の異なる2つの系統に分かれています。系統Aは、消費税法9条9項(課税事業者選択)と37条8項(簡易課税制度選択)が政令に委ねた「やむを得ない事情」の承認で、中身は消費税法施行令20条の2および57条の2にあります。承認を受けると、その課税期間の初日の前日に届出書を提出したものとみなされます。国税庁タックスアンサーNo.6630およびNo.6633は、いずれも「届出書の提出を忘れていた場合等は『やむを得ない事情』に当たりません」と明記しています。系統Bは、消費税法37条の2の「災害等があった場合」の特例で、災害によって簡易課税制度の適用を受ける必要が生じた場合、または受ける必要がなくなった場合に、すでに始まっているその課税期間について承認を受けるものです。系統Bには、選択被災課税期間の末日の翌日から2か月を経過する日までに承認も却下もなかったときは承認があったものとみなす規定(同条5項)があり、また消費税法37条3項(簡易課税制度選択届出書を提出できない期間)および37条6項(2年の継続適用)を適用しない旨が条文に書かれています。系統Aにはこれらの規定はありません。自社の事情がどちらに当たるか、また承認を受けられるかどうかについては、税理士または税務署にご確認ください。

この記事の要点

  • 「間に合わなかったときの承認」は1つの制度ではない。系統A=やむを得ない事情の承認(消費税法9条9項・37条8項、消費税法施行令20条の2・57条の2)と、系統B=災害等があった場合の特例(消費税法37条の2、消費税法施行令57条の3)に分かれている。
  • 国税庁タックスアンサーNo.6630・No.6633は、どちらも「届出書の提出を忘れていた場合等は『やむを得ない事情』に当たりません」と明記している。
  • 系統Aの「やむを得ない事情」は消費税法基本通達1-4-16が4つ列挙している。(1)天災・人的災害、(2)それに準ずる状況または責めに帰することができない状態、(3)課税期間の末日前おおむね1月以内の相続、(4)(1)から(3)に準ずる事情で税務署長がやむを得ないと認めた場合。
  • (3)の相続には、通達だけに書かれた読み替えがある。「この場合には、その課税期間の末日にやむを得ない事情がやんだものとして取り扱う」とされており、起算点が相続の日ではなく課税期間の末日になる。タックスアンサーの本文にはこの一文がない。
  • 系統Aの「2か月以内」は、法律にも政令にも書かれていない。政令の文言は「当該事情がやんだ後相当の期間内」までで、これを「やんだ日から2月以内の期間」としているのは消費税法基本通達1-4-17である。
  • 系統Bの提出期限には条文上の例外がある。消費税法37条の2第2項は「やんだ日から二月以内」としつつ、やんだ日が選択被災課税期間の末日の翌日以後に到来する場合は「当該選択被災課税期間に係る第四十五条第一項の規定による申告書の提出期限まで」と定めている。
  • 系統Bには、みなし承認の規定がある。消費税法37条の2第5項は、選択被災課税期間の末日の翌日から2か月を経過する日までに承認も却下もなかったときは、その日に承認があったものとみなすと定めている(ただし書による除外あり)。系統Aにこの規定はない。
  • 系統Bでは、簡易課税制度の2年・3年の制限が働かない。消費税法37条の2第1項後段は「同条第三項の規定は、適用しない」、同条6項後段は「同条第六項の規定は、適用しない」と定めている。系統Aでは、これらの制限はそのまま適用される。
  • 系統Aと系統Bでは、対象となる「事情」の列挙も違う。系統Aの通達1-4-16には相続が含まれるが、系統Bの通達13-1-7の列挙は自然現象の異変による災害・人為による異常な災害・これらに準ずる自己の責めに帰さないやむを得ない事実の3つで、相続は挙げられていない。
  • いずれの系統でも、申請書だけでは足りない。国税庁は「なお、その申請書と併せて、(課税事業者選択(不適用)/消費税簡易課税制度選択(不適用))届出書を提出してください」と記載している。

「間に合わなかったときの承認」は、1つの制度ではありません

消費税の届出書には、期限が決まっています。原則として、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までです。

その期限に間に合わなかったときの救済として、国税庁の案内には「承認を受けることにより、提出したものとみなされます」という説明が出てきます。

ところが条文をたどると、この「承認」は2つの別の系統に分かれています。根拠条文も、対象になる事情も、期限も、効果も違います。

系統A やむを得ない事情の承認系統B 災害等があった場合の特例
どんな場面か期限までに出せなかった災害で、簡易課税が必要になった/不要になった
法律消費税法9条9項(課税事業者選択)<br>消費税法37条8項(簡易課税制度選択)消費税法37条の2
政令消費税法施行令20条の2<br>消費税法施行令57条の2消費税法施行令57条の3
国税庁の案内No.6630(課税事業者選択)<br>No.6633(簡易課税制度選択)No.6632
通達1-4-16・1-4-17(13-1-5の2 が準用)13-1-7・13-1-8・13-1-9
みなし承認ありませんあります(37条の2第5項)
簡易課税の2年・3年の制限そのまま適用されます適用しない旨が条文にあります

以下、順に見ていきます。

系統A — 「忘れていた」は対象に入りません

国税庁が明記しています

国税庁タックスアンサー No.6630(課税事業者選択届出書)と No.6633(簡易課税制度選択届出書)は、まったく同じ一文を置いています。

上記の場合の「やむを得ない事情」とは、次のような場合をいいますので、届出書の提出を忘れていた場合等は「やむを得ない事情」に当たりません。

(いずれも[令和8年4月1日現在法令等]。2026年9月3日に取得)

まず、ここが出発点になります。

法律は「政令で定める」までしか書いていません

消費税法の側を見ると、条文はこう書かれています。

第九条⑨ やむを得ない事情があるため第四項又は第五項の規定による届出書を第四項の規定の適用を受けようとし、又は受けることをやめようとする課税期間の初日の前日までに提出できなかつた場合における同項又は前項の規定の適用の特例(中略)に関し必要な事項は、政令で定める。
第三十七条⑧ やむを得ない事情があるため第一項又は第五項の規定による届出書を第一項の規定の適用を受けようとし、又は受けることをやめようとする課税期間の初日の前日までに提出できなかつた場合における同項又は前項の規定の適用の特例については、政令で定める。

(e-Gov 法令検索・2026年4月1日施行版。2026年9月3日に取得)

  • 消費税法9条4項=課税事業者選択届出書/9条5項=課税事業者選択不適用届出書
  • 消費税法37条1項=簡易課税制度選択届出書/37条5項=簡易課税制度選択不適用届出書

中身は、消費税法施行令20条の2(課税事業者選択)と消費税法施行令57条の2(簡易課税)にあります。この2つの政令は、同じ構造・同じ文言で書かれています。

承認されると、「初日の前日に出した」ことになります

第二十条の二 法第九条第四項の規定の適用を受けようとする事業者が、やむを得ない事情があるため同項の規定による届出書(以下この条において「課税事業者選択届出書」という。)を同項の規定の適用を受けようとする課税期間の初日の前日(当該課税期間が前条に規定する課税期間である場合には、当該課税期間の末日。以下この項、第三項及び第四項において同じ。)までに提出できなかつた場合において、当該課税期間以後の課税期間につき法第九条第四項の規定の適用を受けることについてその納税地を所轄する税務署長の承認を受けたときは、当該事業者は課税事業者選択届出書を当該適用を受けようとする課税期間の初日の前日に当該税務署長に提出したものとみなす。

括弧書きに、事業を開始した日の属する課税期間などについては、そもそもの期限が「初日の前日」ではなく「その課税期間の末日」であることが書かれています。判定の基準になる日が、課税期間の種類で変わります。

一方、みなされる日は、どちらの場合も「初日の前日」です。

承認されなかった場合の定めも、同じ条文にあります。

④ 税務署長は、前項の申請書の提出があつた場合において、その申請をした事業者が課税事業者選択届出書又は課税事業者選択不適用届出書をその申請に係る課税期間の初日の前日までに提出できなかつたことについてやむを得ない事情がないと認めるときは、その申請を却下する。
⑤ 税務署長は、第三項の申請書の提出があつた場合において、その申請につき承認又は却下の処分をするときは、その申請をした事業者に対し、書面によりその旨を通知する。

「やむを得ない事情」の4類型

消費税法基本通達 1-4-16 が、4つを挙げています。簡易課税制度選択届出書についても、消費税法基本通達 13-1-5の2 が「その意義については、1-4-16による」としています。

#通達の文言
(1)震災、風水害、雪害、凍害、落雷、雪崩、がけ崩れ、地滑り、火山の噴火等の天災又は火災その他の人的災害で自己の責任によらないものに基因する災害が発生したことにより、届出書の提出ができない状態になったと認められる場合
(2)(1)に規定する災害に準ずるような状況又は当該事業者の責めに帰することができない状態にあることにより、届出書の提出ができない状態になったと認められる場合
(3)その課税期間の末日前おおむね1月以内に相続があったことにより、当該相続に係る相続人が新たに法第9条第4項の届出書を提出できる個人事業者となった場合
(4)(1)から(3)までに準ずる事情がある場合で、税務署長がやむを得ないと認めた場合

(2)の「責めに帰することができない状態」と、(4)の「税務署長がやむを得ないと認めた場合」は、条文や通達の文言だけでは当否が決まらない書き方になっています。個別の当てはめは、税理士または税務署にご確認ください。

相続には、通達だけに書かれた読み替えがあります

(3)の相続には、通達に続きの一文があります。

この場合には、その課税期間の末日にやむを得ない事情がやんだものとして取り扱う。

これは、申請書の提出期限の起算点に効きます。相続があった日ではなく、その課税期間の末日から数える、という取扱いです。

この一文は、国税庁タックスアンサーNo.6630・No.6633の本文には記載されていません。通達の側にだけ書かれています。

「2か月以内」は、法律にも政令にも書かれていません

よく目にする「2か月以内」ですが、政令の文言はそこまで書いていません。

消費税法施行令20条の2③ 前二項の承認を受けようとする事業者は、(中略)課税事業者選択届出書又は課税事業者選択不適用届出書を当該課税期間の初日の前日までに提出できなかつた事情その他財務省令で定める事項を記載した申請書を、当該事情がやんだ後相当の期間内に、その納税地を所轄する税務署長に提出しなければならない。

政令が書いているのは「当該事情がやんだ後相当の期間内」までです。これを具体化しているのが通達です。

消費税法基本通達1-4-17 令第20条の2第3項(中略)に規定する「当該事情がやんだ後相当の期間内」とは、法第9条第9項(中略)に規定する「やむを得ない事情」がやんだ日から2月以内の期間とする。

簡易課税制度選択届出書についても、消費税法基本通達13-1-5の2が「令第57条の2第3項(中略)に規定する『当該事情がやんだ後相当の期間内』の意義については、1-4-17による」としています。

つまり 「2か月以内」は通達に書かれた解釈であり、法律や政令の文言ではありません。

申請書だけでは足りません

申請書に記載することとされているのは、次の事項です(消費税法施行令20条の2第3項・57条の2第3項)。

  • 適用を受けようとし、又は受けることをやめようとする課税期間の初日の年月日
  • 初日の前日までに提出できなかった事情
  • その他財務省令で定める事項

そのうえで、国税庁タックスアンサーNo.6630は次のように記載しています。

なお、その申請書と併せて、課税事業者選択(不適用)届出書を提出してください。

No.6633も、消費税簡易課税制度選択(不適用)届出書について同じ記載を置いています。

系統B — 災害等があった場合の特例(消費税法37条の2)

これは「間に合わなかった」話ではありません

系統Bは、すでに始まっている課税期間が対象になります。

第三十七条の二 災害その他やむを得ない理由が生じたことにより被害を受けた事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者及び前条第一項の規定の適用を受ける事業者を除く。)が、当該被害を受けたことにより、当該災害その他やむを得ない理由の生じた日の属する課税期間(その基準期間における課税売上高が五千万円を超える課税期間及び分割等に係る課税期間を除く。以下この項、次項及び第五項において「選択被災課税期間」という。)につき同条第一項の規定の適用を受けることが必要となつた場合において、当該選択被災課税期間につき同項の規定の適用を受けることについてその納税地を所轄する税務署長の承認を受けたときは、当該事業者は同項の規定による届出書を当該承認を受けた選択被災課税期間の初日の前日に当該税務署長に提出したものとみなす。この場合においては、同条第三項の規定は、適用しない。

括弧書きで、次の4つが除かれています。

  • 消費税を納める義務が免除される事業者
  • すでに簡易課税制度の適用を受けている事業者
  • 基準期間における課税売上高が5,000万円を超える課税期間
  • 分割等に係る課税期間

国税庁タックスアンサーNo.6632は、適用される場面の例として次の2つを挙げています。

イ 災害等により、事業者の事務処理能力が低下したため、簡易課税制度を適用して申告する必要が生じた場合 ロ 災害等により、棚卸資産その他の業務用資産に相当な損失を受け、緊急な設備投資等を行うため、簡易課税制度の適用をやめる必要が生じた場合

事情の列挙が、系統Aとは違います

消費税法基本通達 13-1-7 は、「災害その他やむを得ない理由」を3つ挙げています。

(1) 地震、暴風、豪雨、豪雪、津波、落雷、地すべりその他の自然現象の異変による災害 (2) 火災、火薬類の爆発、ガス爆発、その他の人為による異常な災害 (3) (1)又は(2)に掲げる災害に準ずる自己の責めに帰さないやむを得ない事実

系統Aの4類型(通達1-4-16)には相続が含まれていましたが、系統Bの3類型には相続が挙げられていません。列挙の中身が違います。

簡易課税の3年・2年の制限を「適用しない」と条文に書かれています

消費税法37条の2には、後段が2か所あります。

条文後段の文言適用しないとされている規定
37条の2第1項この場合においては、同条第三項の規定は、適用しない消費税法37条3項=調整対象固定資産・高額特定資産の取得等により、簡易課税制度選択届出書を提出できない期間(3年)
37条の2第6項この場合においては、同条第六項の規定は、適用しない消費税法37条6項=翌課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、不適用届出書を提出できない(2年の継続適用)

参考までに、外される側の条文はこう書かれています。

第三十七条⑥ 前項の場合において、第一項の規定による届出書を提出した事業者は、事業を廃止した場合を除き、同項に規定する翌課税期間の初日から二年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、同項の規定の適用を受けることをやめようとする旨の届出書を提出することができない。

この「適用しない」は、系統Bにだけ書かれています。系統Aの根拠である消費税法施行令20条の2・57条の2には、これに当たる定めは置かれていません。

提出期限には、条文に例外が書かれています

第三十七条の二② 前項の承認を受けようとする事業者は、前条第一項の規定の適用を受けることが必要となつた事情その他財務省令で定める事項を記載した申請書を、前項に規定する災害その他やむを得ない理由のやんだ日から二月以内(当該災害その他やむを得ない理由のやんだ日がその申請に係る選択被災課税期間の末日の翌日以後に到来する場合には、当該選択被災課税期間に係る第四十五条第一項の規定による申告書の提出期限まで)に、その納税地を所轄する税務署長に提出しなければならない。

括弧書きが例外です。災害等がやんだのが課税期間の末日より後になる場合は、期限がその課税期間の確定申告書の提出期限まで、という組み立てになっています。

消費税法基本通達 13-1-8 は、これをさらに具体化しています。

申請書の提出期限は、災害その他やむを得ない理由のやんだ日(中略)から2月以内となるが、次に掲げる場合には、それぞれ次に掲げるとおりとなることに留意する。 (1) 災害等のやんだ日が(中略)選択被災課税期間又は(中略)不適用被災課税期間の末日の翌日(当該課税期間が、課税事業者に該当する法人の法第45条の2第1項若しくは第2項《法人の確定申告書の提出期限の特例》の規定の適用を受ける課税期間又は課税事業者に該当する個人事業者のその年の12月31日を含む課税期間である場合は、当該末日の翌日から1月を経過した日)以後に到来する場合 法第45条第1項《課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについての確定申告》の規定による申告書の提出期限 (2) (1)の場合で、通則法第11条《災害等による期限の延長》の規定により当該申告書の提出期限が延長された場合 当該延長された申告書の提出期限

国税庁タックスアンサーNo.6632の本文は、「災害等のやんだ日から原則2か月以内」までしか書いていません。この(1)(2)は通達と条文の側にあります。

返事が来ないまま期限が過ぎたときの定めがあります

系統Bには、みなし承認の規定があります。

第三十七条の二⑤ 第二項の申請書の提出があつた場合において、その申請に係る選択被災課税期間の末日の翌日から二月を経過する日までに承認又は却下の処分がなかつたときは、その日においてその承認があつたものとみなす。ただし、同項に規定する災害その他やむを得ない理由のやんだ日がその申請に係る選択被災課税期間の末日の翌日以後に到来する場合は、この限りでない。

系統Aには、この規定はありません。系統Aでは、承認または却下の処分について書面による通知がある、という定めまでです(消費税法施行令20条の2第5項・57条の2第5項)。

なお、消費税法37条の2第7項が、第2項から第5項までを不適用被災課税期間について準用しています(「選択被災課税期間」を「不適用被災課税期間」と読み替えるなどの読替え規定つき)。

やめる側は、1つの課税期間に限られます

消費税法施行令57条の3① 法第三十七条の二第六項に規定する政令で定める課税期間は、次に掲げる要件の全てに該当する課税期間のうちいずれか一の課税期間とする。 一 法第三十七条の二第六項に規定する災害その他やむを得ない理由の生じた日から当該災害その他やむを得ない理由のやんだ日までの間に開始した課税期間であること。 二 前号の災害その他やむを得ない理由の生じた日の属する課税期間(法第三十七条の二第六項の承認を受けた課税期間に限る。)の翌課税期間以後の課税期間でないこと。 三 法第三十七条第六項に規定する翌課税期間の初日から同日以後二年を経過する日までの間に開始した課税期間であること。

消費税法基本通達13-1-9は、この第2号について注を置いています。

(注) 災害等の生じた日の属する課税期間において法第37条の2第6項の承認を受けたときは、令第57条の3第1項第2号に規定する要件に該当しないことから、その災害等を理由とするこの特例の対象となる翌課税期間以後の課税期間はないこととなる。

期限そのものが延びる話とは、別の系統です

当サイトの別の記事で扱っているとおり、消費税の届出書の提出期限は、土日祝日に当たっても翌開庁日に延びないという取扱いがあります(国税庁タックスアンサーNo.6629の注2)。

これは期限そのものの数え方の話です。この記事で扱った承認は、期限を過ぎてしまった場合、または期限の時点では判断できなかった場合の手続であり、別の系統になります。

また、系統Bの通達13-1-8(2)に出てくる 国税通則法11条(災害等による期限の延長) は、申告・納付の期限を延ばす制度です。申告期限が延びると、それに連動して系統Bの申請期限も延びる、という書き方になっています。

数字と条文のまとめ

論点系統A(やむを得ない事情)系統B(災害等の特例)
根拠消費税法9条9項・37条8項/施行令20条の2・57条の2消費税法37条の2/施行令57条の3
事情の列挙通達1-4-16(4類型・相続を含む)通達13-1-7(3類型・相続を含まない)
「出し忘れ」当たりません(No.6630・No.6633)─
申請期限2か月以内(通達1-4-17。政令は「相当の期間内」まで)2か月以内。ただし条文の括弧書きにより申告書の提出期限までとなる場合あり
相続の起算点その課税期間の末日(通達1-4-16(3))─
みなし承認規定なしあり(37条の2第5項・ただし書あり)
3年の制限(37条3項)そのまま適用適用しない(37条の2第1項後段)
2年の制限(37条6項)そのまま適用適用しない(37条の2第6項後段)
みなされる提出日課税期間の初日の前日課税期間の初日の前日

この記事は、法令と国税庁の一次情報に書かれている内容を整理したものです。個別の事情が「やむを得ない事情」または「災害その他やむを得ない理由」に当たるかどうか、承認を受けられるかどうか、どの書類をいつ提出することになるかについては、税理士または税務署にご確認ください。

経営者の疑問と、制度の事実

答えるのは制度の事実だけです。有利・不利は事業ごとの事情で変わるため、判断は税理士・税務署にご確認ください。

経営者先月、工場が水につかった。簡易課税に切り替えたいが、届出はもう間に合わないのではないか。

制度の事実消費税法37条の2第1項は、災害その他やむを得ない理由が生じたことにより被害を受けた事業者が、その被害を受けたことにより、その災害等の生じた日の属する課税期間について簡易課税制度の適用を受けることが必要となった場合に、税務署長の承認を受けたときは、その課税期間の初日の前日に届出書を提出したものとみなすと定めています。つまり、すでに始まっている課税期間が対象になりうる組み立てです。国税庁タックスアンサーNo.6632は、適用される場面の例として「災害等により、事業者の事務処理能力が低下したため、簡易課税制度を適用して申告する必要が生じた場合」を挙げています。ただし同項の括弧書きは、消費税を納める義務が免除される事業者、すでに簡易課税制度の適用を受けている事業者、基準期間における課税売上高が5,000万円を超える課税期間、分割等に係る課税期間を除いています。御社が対象になるかどうかは、税理士または税務署にご確認ください。

経営者去年、大きな機械を入れたので簡易課税の届出は3年間出せないと言われた。災害でも同じか。

制度の事実消費税法37条3項は、調整対象固定資産や高額特定資産の取得等に該当する場合に、簡易課税制度選択届出書を提出できない期間を定めています。一方、消費税法37条の2第1項は、災害等の特例による承認を受けた場合について、末尾で「この場合においては、同条第三項の規定は、適用しない」と定めています。条文の上では、この特例による場合には37条3項が働かないという書き方になっています。ただし、これは災害等の特例(37条の2)の承認を受けた場合の定めであり、期限に間に合わなかったときの承認(消費税法施行令20条の2・57条の2)には同じ規定が置かれていません。御社の状況がどちらに当たるか、また承認を受けられるかどうかは、税理士または税務署にご確認ください。

経営者年末に父が亡くなって事業を引き継いだ。届出書を出す余裕がなかったが、これは救済の対象に入るのか。

制度の事実消費税法基本通達1-4-16は、「やむを得ない事情」の(3)として「その課税期間の末日前おおむね1月以内に相続があったことにより、当該相続に係る相続人が新たに法第9条第4項の届出書を提出できる個人事業者となった場合」を挙げています。そのうえで「この場合には、その課税期間の末日にやむを得ない事情がやんだものとして取り扱う」と書かれています。同じ通達を、簡易課税制度選択届出書についても消費税法基本通達13-1-5の2が準用しています。なお、この相続の類型は系統A(やむを得ない事情の承認)の列挙にあるもので、災害等の特例の「災害その他やむを得ない理由」を列挙した消費税法基本通達13-1-7には挙げられていません。御社の事情の当てはめと、申請書の提出期限の起算日については、税理士または税務署にご確認ください。

よくある質問

うっかり出し忘れた場合も、承認の対象になりますか。
国税庁タックスアンサーNo.6630およびNo.6633は、いずれも「上記の場合の『やむを得ない事情』とは、次のような場合をいいますので、届出書の提出を忘れていた場合等は『やむを得ない事情』に当たりません」と記載しています。個別の事情が「やむを得ない事情」に当たるかどうかの判断については、税理士または税務署にご確認ください。
「やむを得ない事情」として、どんな場合が挙げられていますか。
消費税法基本通達1-4-16は4つを挙げています。(1)震災、風水害、雪害、凍害、落雷、雪崩、がけ崩れ、地滑り、火山の噴火等の天災または火災その他の人的災害で自己の責任によらないものに基因する災害が発生したことにより、届出書の提出ができない状態になったと認められる場合。(2)(1)に規定する災害に準ずるような状況または当該事業者の責めに帰することができない状態にあることにより、届出書の提出ができない状態になったと認められる場合。(3)その課税期間の末日前おおむね1月以内に相続があったことにより、当該相続に係る相続人が新たに法第9条第4項の届出書を提出できる個人事業者となった場合。(4)(1)から(3)までに準ずる事情がある場合で、税務署長がやむを得ないと認めた場合。簡易課税制度選択届出書についても、消費税法基本通達13-1-5の2が1-4-16によるとしています。当てはめは税理士または税務署にご確認ください。
申請書は、いつまでに出すことになっていますか。
系統Aについて、消費税法施行令20条の2第3項および57条の2第3項の文言は「当該事情がやんだ後相当の期間内に」までです。これを消費税法基本通達1-4-17が「法第9条第9項に規定する『やむを得ない事情』がやんだ日から2月以内の期間とする」としています。つまり「2か月以内」は通達に書かれた解釈であり、法律や政令の文言ではありません。系統B(災害等の特例)については、消費税法37条の2第2項が「災害その他やむを得ない理由のやんだ日から二月以内」と条文で定めたうえで、括弧書きで例外を置いています。具体的な期限の当てはめは、税理士または税務署にご確認ください。
相続があった場合、2か月はいつから数えるのですか。
消費税法基本通達1-4-16の(3)には、続けて「この場合には、その課税期間の末日にやむを得ない事情がやんだものとして取り扱う」と書かれています。国税庁タックスアンサーNo.6630およびNo.6633の本文には、この一文は記載されていません。実際の起算日については、税理士または税務署にご確認ください。
承認されたら、いつ届出書を出したことになりますか。
消費税法施行令20条の2第1項は「当該事業者は課税事業者選択届出書を当該適用を受けようとする課税期間の初日の前日に当該税務署長に提出したものとみなす」と定めています。消費税法施行令57条の2第1項も、簡易課税制度選択適用届出書について同じ組み立てです。系統B(災害等の特例)では、消費税法37条の2第1項が「当該承認を受けた選択被災課税期間の初日の前日に当該税務署長に提出したものとみなす」と定めています。
承認されなかった場合は、どうなりますか。
消費税法施行令20条の2第4項は「税務署長は、前項の申請書の提出があつた場合において、その申請をした事業者が課税事業者選択届出書又は課税事業者選択不適用届出書をその申請に係る課税期間の初日の前日までに提出できなかつたことについてやむを得ない事情がないと認めるときは、その申請を却下する」と定めています。同条5項は、承認または却下の処分をするときは書面により通知するとしています。消費税法施行令57条の2第4項・第5項も同じ組み立てです。
承認の返事が来ないまま期限が過ぎたら、どうなりますか。
系統B(災害等の特例)には、みなし承認の規定があります。消費税法37条の2第5項は「第二項の申請書の提出があつた場合において、その申請に係る選択被災課税期間の末日の翌日から二月を経過する日までに承認又は却下の処分がなかつたときは、その日においてその承認があつたものとみなす」と定めています。ただし書により、災害その他やむを得ない理由のやんだ日がその申請に係る選択被災課税期間の末日の翌日以後に到来する場合は、この限りでないとされています。系統A(やむを得ない事情の承認)について、消費税法施行令20条の2および57条の2には、これに当たる規定は置かれていません。個別の取扱いは、税理士または税務署にご確認ください。
災害等の特例では、簡易課税の2年・3年の制限はどうなりますか。
消費税法37条の2第1項は、末尾で「この場合においては、同条第三項の規定は、適用しない」と定めています。同条3項は、調整対象固定資産や高額特定資産の取得等により簡易課税制度選択届出書を提出できない期間を定めた規定です。また消費税法37条の2第6項は、末尾で「この場合においては、同条第六項の規定は、適用しない」と定めています。同条6項は、簡易課税制度選択届出書を提出した事業者が、翌課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ不適用届出書を提出できないとする規定です。系統A(やむを得ない事情の承認)を定めた消費税法施行令20条の2・57条の2には、これらの規定を適用しない旨は書かれていません。自社への当てはめは、税理士または税務署にご確認ください。
申請書だけを提出すればよいのですか。
国税庁タックスアンサーNo.6630は「なお、その申請書と併せて、課税事業者選択(不適用)届出書を提出してください」と記載しています。No.6633およびNo.6632も、それぞれ「なお、その申請書と併せて、消費税簡易課税制度選択(不適用)届出書を提出してください」と記載しています。提出書類の確認は、税理士または税務署にご確認ください。

個別の判断について

適用の可否や有利・不利は、事業区分・基準期間の課税売上高・過去の届出など個別の事情で変わります。実際の判断の前に、税理士等の専門家、または所轄の税務署にご相談ください。

出典(一次情報)

法令・国税庁・省庁など公的機関の公表資料のみを参照しています(解説記事等の二次情報は使用していません)。

本ページは公表されている制度情報にもとづく解説と試算の補助であり、税務に関する助言ではありません。個別の判断は必ず税理士等の専門家にご確認ください(所轄の税務署でも確認できます)。

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