令和8年度税制改正に対応

課税期間の初日にさかのぼって登録できる場合は3つあります(開業だけではない — 消費税法施行令70条の4・消費税法施行規則26条の4)

最終確認日: (数値は一次情報で照合)

結論から

消費税法施行令70条の4は「登録を受けようとする事業者が、事業を開始した日の属する課税期間その他の財務省令で定める課税期間の初日から登録を受けようとする旨を記載した法第五十七条の二第二項の申請書を当該課税期間の末日までに提出した場合において、同条第三項の規定による登録がされたときは、当該課税期間の初日から登録を受けたものとみなす」と定めています。委任先である消費税法施行規則26条の4は、この「財務省令で定める課税期間」を3つ挙げています。1号は事業者(消費税法57条の3第3項の規定の適用を受ける事業者を除く)が国内において課税資産の譲渡等に係る事業を開始した日の属する課税期間、2号は法人が合併(合併により法人を設立する場合を除く)により消費税法57条の2第1項の登録を受けていた被合併法人の事業を承継した場合における当該合併があつた日の属する課税期間、3号は法人が吸収分割により同項の登録を受けていた分割法人の事業を承継した場合における当該吸収分割があつた日の属する課税期間です。つまり開業だけの特例ではありません。提出期限は「当該課税期間の末日まで」と書かれており、免税事業者の登録希望日に関する「15日前の日」(消費税法施行令70条の2第1項)とは別の定めです。自社の課税期間がこの3号のいずれかに当たるかは、税理士または税務署にご確認ください。

この記事の要点

  • 消費税法施行令70条の4の効果は「当該課税期間の初日から登録を受けたものとみなす」であり、課税期間の初日にさかのぼる形である(e-Gov 法令検索・2026年10月1日施行版)。
  • ただし条文は「同条第三項の規定による登録がされたときは」と書いており、登録がされることが前提に置かれている。
  • 委任先の消費税法施行規則26条の4が挙げる課税期間は3つある。1号が事業を開始した日の属する課税期間、2号が合併があつた日の属する課税期間、3号が吸収分割があつた日の属する課税期間である。
  • 2号には「合併により法人を設立する場合を除く。」という括弧書きが付いており、新設合併は入らない。3号は「吸収分割」と書かれており、新設分割は挙げられていない。
  • 2号・3号はどちらも「消費税法57条の2第1項の登録を受けていた被合併法人」「同項の登録を受けていた分割法人」と書かれている。承継元が登録を受けていたことが条文上の書き方である。
  • 1号には「法第五十七条の三第三項の規定の適用を受ける事業者を除く。」という括弧書きが付いている。相続によるみなし登録期間の適用を受ける事業者の側である。
  • 提出期限は消費税法施行令70条の4本文の「当該課税期間の末日まで」である。免税事業者の登録希望日に関する「15日前の日」(消費税法施行令70条の2第1項)とは別の定めである。

インボイスの登録は、原則として登録された日から効力を持ちます。

ただし、課税期間の初日にさかのぼって登録を受けたものとみなされる場合が定められています。消費税法施行令70条の4です。

この特例は「開業した年の特例」として紹介されることが多いのですが、条文の委任先を開くと、対象となる課税期間は3つあります。

この記事では、e-Gov の法令原文で3つの号を並べます。2026年9月16日に取得した内容です。

効果は「課税期間の初日から登録を受けたものとみなす」

まず消費税法施行令70条の4(原文ママ)。条文は1項だけです。

(登録の時期等に関する特例) 第七十条の四 登録を受けようとする事業者が、事業を開始した日の属する課税期間その他の財務省令で定める課税期間の初日から登録を受けようとする旨を記載した法第五十七条の二第二項の申請書を当該課税期間の末日までに提出した場合において、同条第三項の規定による登録がされたときは、当該課税期間の初日から登録を受けたものとみなす。

条文の要素を分けると、次のようになります。

要素条文の書き方
対象の課税期間事業を開始した日の属する課税期間その他の財務省令で定める課税期間
申請書に書くことその課税期間の初日から登録を受けようとする旨
提出期限当該課税期間の末日まで
条件消費税法57条の2第3項の規定による登録がされたとき
効果当該課税期間の初日から登録を受けたものとみなす

🔴 「登録がされたときは」という条件が付いています。提出したことだけを条件にした書き方ではありません。

財務省令が挙げる課税期間は3つ

「その他の財務省令で定める課税期間」の中身が、消費税法施行規則26条の4です(原文ママ)。

(事業を開始した日の属する課税期間等の範囲) 第二十六条の四 令第七十条の四に規定する財務省令で定める課税期間は、次に掲げる課税期間とする。 一 事業者(法第五十七条の三第三項の規定の適用を受ける事業者を除く。)が国内において課税資産の譲渡等に係る事業を開始した日の属する課税期間 二 法人が合併(合併により法人を設立する場合を除く。)により法第五十七条の二第一項の登録を受けていた被合併法人の事業を承継した場合における当該合併があつた日の属する課税期間 三 法人が吸収分割により法第五十七条の二第一項の登録を受けていた分割法人の事業を承継した場合における当該吸収分割があつた日の属する課税期間

🔴 号は3つあります。見出しも「事業を開始した日の属する課税期間等の範囲」で、「等」が付いています。

号対象の課税期間条文に付いている限定
1号事業を開始した日の属する課税期間消費税法57条の3第3項の規定の適用を受ける事業者を除く
2号合併があつた日の属する課税期間合併により法人を設立する場合を除く/被合併法人が登録を受けていたこと
3号吸収分割があつた日の属する課税期間分割法人が登録を受けていたこと

2号・3号は「新設」を含まない

🔴 2号の括弧書きは「合併により法人を設立する場合を除く。」です。合併には、存続する法人が相手を吸収する形と、新しい法人を設立する形がありますが、条文は後者を除いています。

3号は、そもそも「吸収分割」と書かれています。新設分割は同条のいずれの号にも挙げられていません。

類型消費税法施行規則26条の4に挙げられているか
吸収合併2号に挙げられている
新設合併括弧書きで除かれている
吸収分割3号に挙げられている
新設分割挙げられていない

2号・3号は「承継元が登録を受けていたこと」を書いている

もう1つ、2号・3号に共通する書き方があります。

  • 2号 — 「法第五十七条の二第一項の登録を受けていた被合併法人の事業を承継した場合」
  • 3号 — 「法第五十七条の二第一項の登録を受けていた分割法人の事業を承継した場合」

どちらも、事業を渡す側が登録を受けていたことが条文に書き込まれています。

なお、消滅する側の登録がいつ効力を失うかは別の条文の話です。そちらは当サイトの別記事([廃業・合併でインボイス登録の効力が失われる日は、届出書を出した場合に限られています](/articles/haigyo-gappei-toroku-koryoku-soshitsu/))で扱っています。

1号の括弧書きは、相続の側を指している

1号には「事業者(法第五十七条の三第三項の規定の適用を受ける事業者を除く。)」という括弧書きが付いています。

消費税法57条の3第3項は、相続により適格請求書発行事業者の事業を承継した相続人についてのみなし登録期間の規定です。みなし登録期間の詳細は、当サイトの別記事([相続があったとき、みなし登録期間の末日と登録が効力を失う日は1日ずれる](/articles/sozoku-minashi-toroku-kikan-1nichi-zure/))で扱っています。

相続の側には相続の側の仕組みがあるため、1号からは外されているという並びです。

提出期限は「末日まで」— 15日前の日ではない

ここが混ざりやすい点です。インボイスの登録まわりには「15日前の日」という期限がいくつかありますが、消費税法施行令70条の4はそれとは別です。

条文場面期限の書き方
消費税法施行令70条の4本記事の3つの課税期間の初日から登録を受ける当該課税期間の末日まで
消費税法施行令70条の2第1項免税事業者が課税期間の初日から登録を受ける(登録希望日)その初日から起算して15日前の日まで
消費税法施行令70条の5第3項登録の取消しを求める旨の届出翌課税期間の初日から起算して15日前の日まで

🔴 同じ「登録」まわりでも、3つは別の規定です。

なお「15日前の日」という数え方そのものは、当サイトの別記事([「◯日前までに」と「◯日前の日までに」は数え方が1日違います](/articles/nichi-mae-made-ni-kazoekata/))で扱っています。

個人事業者の「課税期間の初日」

1号に当たる場合、さかのぼる先は「当該課税期間の初日」です。

個人事業者の課税期間は、消費税法19条1項1号により1月1日から12月31日までと定められています。したがって課税期間の初日は1月1日であり、事業を開始した日ではありません。

国税庁の資料にも同じ注記があり、当サイトの別記事([インボイス発行事業者の登録申請はどう進めるか](/articles/invoice-toroku-shinsei/))で扱っています。

まとめ

  • 消費税法施行令70条の4の効果は「当該課税期間の初日から登録を受けたものとみなす」=さかのぼる
  • ただし条文は「同条第三項の規定による登録がされたときは」と書いており、登録がされることが前提に置かれている
  • 🔴 委任先の消費税法施行規則26条の4が挙げる課税期間は3つ。1号 開業/2号 合併があつた日/3号 吸収分割があつた日
  • 🔴 2号は「合併により法人を設立する場合を除く。」=新設合併は入らない。3号は「吸収分割」で、新設分割は挙げられていない
  • 2号・3号はどちらも「登録を受けていた被合併法人/分割法人」=承継元が登録を受けていたことが条文の書き方である
  • 1号には「法第五十七条の三第三項の規定の適用を受ける事業者を除く。」という括弧書きが付く(相続のみなし登録期間の側)
  • 提出期限は「当該課税期間の末日まで」。消費税法施行令70条の2第1項・70条の5第3項の「15日前の日」とは別の規定である
  • 個人事業者の「課税期間の初日」は消費税法19条1項1号により1月1日であり、事業を開始した日ではない

自社の課税期間がこの3つの号のいずれかに当たるか、申請書をいつ提出するかについては、税理士または税務署にご確認ください。

経営者の疑問と、制度の事実

答えるのは制度の事実だけです。有利・不利は事業ごとの事情で変わるため、判断は税理士・税務署にご確認ください。

経営者来期に子会社を吸収合併する。消えるほうの会社はインボイス登録している。うちの登録はいつからになるのか。

制度の事実消費税法施行規則26条の4第2号は、財務省令で定める課税期間の1つとして「法人が合併(合併により法人を設立する場合を除く。)により法第五十七条の二第一項の登録を受けていた被合併法人の事業を承継した場合における当該合併があつた日の属する課税期間」を挙げています。この課税期間の初日から登録を受けようとする旨を記載した消費税法57条の2第2項の申請書を、消費税法施行令70条の4により当該課税期間の末日までに提出した場合において、同条3項の規定による登録がされたときは、当該課税期間の初日から登録を受けたものとみなされます。なお、消滅する側の登録がいつ効力を失うかは消費税法57条の2第10項3号の話で、当サイトの別記事で扱っています。御社の日程の当てはめは、税理士または税務署にご確認ください。

経営者分社化して事業を移す話も出ている。分割でも同じ扱いになるのか。

制度の事実条文は分割の類型を限定しています。消費税法施行規則26条の4第3号は「法人が吸収分割により法第五十七条の二第一項の登録を受けていた分割法人の事業を承継した場合における当該吸収分割があつた日の属する課税期間」と書かれており、挙げられているのは吸収分割です。新設分割は同条のいずれの号にも挙げられていません。また2号も「合併により法人を設立する場合を除く。」という括弧書きで新設合併を除いています。実際の組織再編がどの類型に当たるかの判断は、税理士または税務署にご確認ください。

経営者申請書を出せば登録日は初日に決まるのだから、期日ぎりぎりでも問題ないということか。

制度の事実条文の条件を確認します。消費税法施行令70条の4は「…申請書を当該課税期間の末日までに提出した場合において、同条第三項の規定による登録がされたときは、当該課税期間の初日から登録を受けたものとみなす」と定めています。みなしが働くのは「登録がされたとき」であり、提出したことだけを条件にした書き方ではありません。また、消費税法57条の2第3項は、税務署長が同条5項の規定に該当する場合を除き登録簿に登載して登録するものとしており、5項は登録を拒否する場合の定めです。実際の申請の時期と手続については、税理士または税務署にご確認ください。

よくある質問

課税期間の初日にさかのぼって登録できるのは、開業した年だけですか。
消費税法施行規則26条の4は、対象となる課税期間を3つ挙げています。1号が事業を開始した日の属する課税期間、2号が合併(合併により法人を設立する場合を除く)により消費税法57条の2第1項の登録を受けていた被合併法人の事業を承継した場合における当該合併があつた日の属する課税期間、3号が吸収分割により同項の登録を受けていた分割法人の事業を承継した場合における当該吸収分割があつた日の属する課税期間です。開業だけの特例ではありません。自社がどの号に当たるかは、税理士または税務署にご確認ください。
新設合併や新設分割でも使えますか。
条文の書き方を確認します。消費税法施行規則26条の4第2号は「法人が合併(合併により法人を設立する場合を除く。)により」と書かれており、括弧書きで新設合併が除かれています。同条3号は「法人が吸収分割により」と書かれており、新設分割は挙げられていません。個別の組織再編がどの類型に当たるかの判断は、税理士または税務署にご確認ください。
承継する相手の登録状況は関係ありますか。
消費税法施行規則26条の4第2号は「消費税法57条の2第1項の登録を受けていた被合併法人の事業を承継した場合」、3号は「同項の登録を受けていた分割法人の事業を承継した場合」と書かれています。どちらも承継元が登録を受けていたことが条文上の書き方になっています。具体的な事案の当てはめは、税理士または税務署にご確認ください。
申請書はいつまでに出すのですか。15日前の日ですか。
消費税法施行令70条の4本文は「当該課税期間の末日までに提出した場合」と定めています。15日前の日ではありません。「15日前の日」が出てくるのは、免税事業者が課税期間の初日から登録を受けようとする場合の登録希望日に関する消費税法施行令70条の2第1項と、登録の取消しを求める旨の届出に関する消費税法施行令70条の5第3項です。この3つは別の規定です。自社に適用される期限については、税理士または税務署にご確認ください。
申請書を期限内に出せば、それだけで課税期間の初日から登録されるのですか。
消費税法施行令70条の4は「…提出した場合において、同条第三項の規定による登録がされたときは、当該課税期間の初日から登録を受けたものとみなす」と定めています。条文は「登録がされたときは」という条件付きの書き方をしており、登録がされることが前提に置かれています。なお、消費税法57条の2第5項は登録の拒否について定めを置いています。個別の申請の見通しについては、税理士または税務署にご確認ください。

個別の判断について

適用の可否や有利・不利は、事業区分・基準期間の課税売上高・過去の届出など個別の事情で変わります。実際の判断の前に、税理士等の専門家、または所轄の税務署にご相談ください。

出典(一次情報)

法令・国税庁・省庁など公的機関の公表資料のみを参照しています(解説記事等の二次情報は使用していません)。

本ページは公表されている制度情報にもとづく解説と試算の補助であり、税務に関する助言ではありません。個別の判断は必ず税理士等の専門家にご確認ください(所轄の税務署でも確認できます)。

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