令和8年度税制改正に対応

売上税額の計算には2つの方式があります。原則は総額割戻し、積上げは消費税法45条5項の特例です

最終確認日: (数値は一次情報で照合)

結論から

売上税額(消費税法45条1項2号の「税率の異なるごとに区分した課税標準額に対する消費税額」)の計算方法は、法律の中に2つあります。原則は、同項1号の課税標準額に税率の異なるごとに標準税率または軽減税率を乗じて合計する方法で、消費税法基本通達15-2-1の2 がこれを「総額割戻し方式」と呼んでいます。特例は同条5項で、その課税期間中に行った課税資産の譲渡等につき交付した適格請求書または適格簡易請求書の写しを57条の4第6項の規定により保存している場合に、適格請求書に記載した消費税額等を基礎として政令で定めるところにより計算した金額とすることが「できる」と定めています。消費税法施行令62条1項は、その計算を「各号に定める金額の合計額に百分の七十八を乗じて算出した金額」としています。同通達はこちらを「適格請求書等積上げ方式」と呼びます。ただし45条5項ただし書と同令62条2項が4つの適用除外を定めており、そのうち1つは消費税法18条1項(小規模事業者等に係る資産の譲渡等の時期等の特例=現金主義)です。また、方式の選択は端数だけの問題ではありません。国税庁「消費税及び地方消費税の申告書(一般用)の書き方」の設例では、同じ取引について課税標準額が1,000円、消費税額が468円変わります。自社がどちらの方式によることができるか、また実際の申告書の記載については、税理士または税務署にご確認ください。

この記事の要点

  • 売上税額の計算方法は法律の中に2つある。原則は総額割戻し方式(消費税法45条1項2号)、特例は適格請求書等積上げ方式(同条5項・消費税法施行令62条1項)である。名前は消費税法基本通達15-2-1の2 が定義している。
  • 積上げの条件は「交付した適格請求書または適格簡易請求書の写しを消費税法57条の4第6項の規定により保存している場合」であり、条文は「することができる」と書いている。原則から特例へ移るための保存の要件が付いている。
  • 積上げの計算は、適格請求書等に記載した消費税額等の合計額に100分の78を乗じた金額である(消費税法施行令62条1項)。
  • 45条5項ただし書と同令62条2項が4つの適用除外を定めている。16条1項(延払条件付譲渡)・17条1項および2項本文(工事の請負)・18条1項(現金主義)・28条1項ただし書(法人が資産を役員に著しく低い対価で譲渡した場合)である。
  • 適用税率のみを記載して交付した適格簡易請求書は、消費税額等の記載がないため積上げの材料がない(基本通達15-2-1の2 注1)。
  • 方式の選択は端数だけの問題ではない。国税庁の設例は積上げを適用する法人の対価の額を「308,960,000円-28,086,600円=280,873,400円」と計算しており、税込金額に100分の110を乗じて割り戻す方法ではない。同じ取引を原則で通すと課税標準額が1,000円、消費税額が468円変わる。
  • 売上税額については総額割戻し方式と適格請求書等積上げ方式の併用が認められている(同通達本文)。ただし併用する場合を含めて積上げによる場合は、仕入税額について消費税法施行令46条3項の割り戻す方法によることはできない(同通達注2)。
  • 端数の切捨ては2か所あり単位が違う。課税標準額は千円未満切捨て(国税通則法118条1項)、確定金額は100円未満切捨て(同法119条1項)である。

売上の消費税を出す方法は、法律の中に2つあります

確定申告書に書く売上側の消費税額のことを、消費税法45条1項2号は「税率の異なるごとに区分した課税標準額に対する消費税額」と呼んでいます。

この金額の出し方には、原則と特例の2つがあります。名前を付けているのは国税庁の消費税法基本通達 15-2-1の2 です。

名前根拠条文の書き方
原則総額割戻し方式消費税法45条1項2号課税標準額に税率ごとの税率を乗じて合計する
特例適格請求書等積上げ方式消費税法45条5項・消費税法施行令62条1項一定の保存をしている場合に「することができる」

条文の側から見ていきます。

原則は、課税標準額に税率を掛ける

消費税法45条1項は、確定申告書に記載する事項を1号から8号まで並べています。最初の2つが売上側です。

一 その課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等(中略)に係る税率の異なるごとに区分した課税標準である金額の合計額及びその課税期間中に国内において行つた特定課税仕入れに係る課税標準である金額の合計額並びにそれらの合計額(次号において「課税標準額」という。) 二 税率の異なるごとに区分した課税標準額に対する消費税額

(e-Gov 法令検索・消費税法・令和8年10月1日施行版。2026年9月13日に取得)

この2号の金額を、基本通達15-2-1の2 は次のように説明しています。

その課税期間に係る法第45条第1項第2号(中略)に掲げる「税率の異なるごとに区分した課税標準額に対する消費税額」は、原則として、同項第1号に掲げる課税標準額につき、税率の異なるごとに標準税率又は軽減税率を乗じて算出した金額を合計する方法(以下15-2-1の2において「総額割戻し方式」という。)により算出した金額となるのであるが、(後略)

(国税庁 消費税法基本通達 15-2-1の2。2026年9月13日に取得)

軽減税率が混ざっている場合は、税率ごとに区分することが条文に書かれています。国税庁の「書き方」は、標準税率を消費税率 7.8%(地方消費税率2.2%)、軽減税率を消費税率 6.24%(地方消費税率1.76%)と示したうえで、課税売上高等を取引に適用される税率ごとに区分する必要があると記載しています。

特例は、交付したインボイスの消費税額等を積み上げる

45条5項が特例です。条文の全文を引きます。

5 第一項の規定による申告書を提出する事業者が、当該申告書に係る課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等につき交付した適格請求書又は適格簡易請求書の写しを第五十七条の四第六項の規定により保存している場合(同項の規定により同項の電磁的記録を保存している場合を含む。)には、当該課税資産の譲渡等に係る第一項第二号に掲げる税率の異なるごとに区分した課税標準額に対する消費税額については、同号の規定にかかわらず、当該適格請求書に記載した同条第一項第五号に掲げる消費税額等その他の政令で定める金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額とすることができる。 ただし、第十六条第一項、第十七条第一項若しくは第二項本文又は第十八条第一項の規定その他政令で定める規定の適用を受ける課税資産の譲渡等については、この限りでない。

(e-Gov 法令検索・消費税法・令和8年10月1日施行版。2026年9月13日に取得)

読み取れることが3つあります。

  • 条件は「保存している場合」です。交付した適格請求書または適格簡易請求書の写しを、57条の4第6項の規定により保存していることが前提に置かれています
  • 「することができる」と書かれています。選べる側の規定です
  • ただし書があります。4つの規定の適用を受ける課税資産の譲渡等は、この特例の対象から外れます

「政令で定めるところにより計算した金額」の中身は、消費税法施行令62条1項です。

第六十二条 法第四十五条第五項に規定する政令で定める金額は、次の各号に掲げる課税資産の譲渡等(中略)の区分に応じ当該各号に定める金額とし、法第四十五条第五項に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、当該各号に定める金額の合計額に百分の七十八を乗じて算出した金額とする。 一 適格請求書を交付した課税資産の譲渡等 当該適格請求書に記載した法第五十七条の四第一項第五号に掲げる消費税額等 二 適格簡易請求書を交付した課税資産の譲渡等 当該適格簡易請求書に記載した法第五十七条の四第二項第五号に掲げる消費税額等 三 適格請求書又は適格簡易請求書に記載すべき事項に係る法第五十七条の四第五項に規定する電磁的記録を提供した課税資産の譲渡等 当該電磁的記録に記録した同条第一項第五号又は第二項第五号に掲げる消費税額等

(e-Gov 法令検索・消費税法施行令・令和8年10月1日施行版。2026年9月13日に取得)

交付した書類に書いた消費税額等(消費税と地方消費税の合計)を集計し、そこに 100分の78 を乗じると、国税である消費税の額になる、という作りです。

国税庁の設例で、2つの方式を最後まで通してみます

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。

「積上げ計算」という名前から、税抜きの売上高も1件ずつ積み上げるのだと読むと、金額が合わなくなります。積み上げるのは消費税額等のほうで、対価の額は税込金額からその消費税額等を差し引いて求められています。

国税庁「法人用 消費税及び地方消費税の申告書(一般用)の書き方」27~29ページの設例を見ます。12月決算の法人で、インボイス発行事業者であり、売上税額および仕入税額の計算について積上げ計算を適用している、という設定です。旧税率が適用された取引はなく、課税売上高はすべて税率7.8%適用分です。

項目金額
課税売上高(税込み)308,960,000円
適格請求書等の消費税額等積上げ合計額28,086,600円
特定課税仕入れの金額2,400,000円

この設例について、国税庁は対価の額を次のように計算しています。

308,960,000円-28,086,600円=280,873,400円

(国税庁 法人用 消費税及び地方消費税の申告書(一般用)の書き方 28ページ。2026年9月13日に取得)

税込金額から、積み上げた消費税額等を差し引いています。税込金額に100分の110を乗じて割り戻す計算ではありません。

そのうえで29ページは、課税標準額を 280,873,400円 + 2,400,000円 = 283,273,400円 ⇒ 283,273,000円(千円未満切捨て) とし、消費税額を 28,086,600円 × 78/100 = 21,907,548円(適格請求書等積上げ計算分)と 2,400,000円 × 7.8/100 = 187,200円(特定課税仕入れ分)の合計 22,094,748円 としています。

同じ取引を、原則である総額割戻し方式で最後まで通すと、こうなります。

積上げ(国税庁の設例そのもの)割戻し(同じ取引を原則で計算)
対価の額308,960,000 − 28,086,600 = 280,873,400円308,960,000 × 100/110 = 280,872,727円
+ 特定課税仕入れ2,400,000円2,400,000円
課税標準額(千円未満切捨て)283,273,000円283,272,000円
消費税額28,086,600 × 78/100 + 187,200 = 22,094,748円283,272,000 × 7.8% = 22,095,216円

課税標準額で1,000円、消費税額で468円ずれます。方式の選択は端数だけの問題ではなく、申告書に載る金額そのものが変わります。

条文の上では、45条5項が「かかわらず」と書き換えているのは45条1項2号(消費税額)のほうで、1号(課税標準額)ではありません。けれども1号は「税率の異なるごとに区分した課税標準である金額の合計額」としか書いておらず、その課税標準=対価の額(消費税法28条1項)をどう集計するかまでは書いていません。国税庁の設例は、積上げを適用する法人について「税込金額から積上げた消費税額等を差し引く」という集計をしています。その結果、課税標準額も動きます。

なお、設例の注1は「金額の計算過程において生じた1円未満の端数については、その都度切り捨てます」と記載しています。上の割戻し側の 280,872,727円 は、この切捨てによる金額です。

積上げが使えない4つの場合

45条5項ただし書と消費税法施行令62条2項が、名指しで除いている規定は4つあります。同令62条2項は「法第四十五条第五項ただし書に規定する政令で定める規定は、法第二十八条第一項ただし書の規定とする。」と定めています。

#除かれる課税資産の譲渡等根拠条文見出し(e-Gov 原文)
1消費税法16条1項の適用を受けるもの45条5項ただし書個人事業者の山林所得又は譲渡所得の基因となる資産の延払条件付譲渡に係る資産の譲渡等の時期の特例
2消費税法17条1項・2項本文の適用を受けるもの45条5項ただし書工事の請負に係る資産の譲渡等の時期の特例
3消費税法18条1項の適用を受けるもの45条5項ただし書小規模事業者等に係る資産の譲渡等の時期等の特例
4消費税法28条1項ただし書の適用を受けるもの消費税法施行令62条2項課税標準(法人が資産を役員に著しく低い対価で譲渡した場合のみなし譲渡)

3番目の18条1項は、条文見出しのとおり小規模事業者等に係る資産の譲渡等の時期等の特例で、いわゆる現金主義の規定です。インボイス発行事業者であるかどうかではなく、その譲渡等がこれらの規定の適用を受けるかどうかで決まる書き方になっています。現金主義そのものの仕組みは [現金主義(消費税法第18条)を選んでいる個人事業者は、課税仕入れを「支出した日」で判定します](/articles/genkin-shugi-kazei-shiire-jiki/) をご覧ください。

この4つは、条文とその委任先の政令を開かないと出てきません。タックスアンサーの解説ページには載っていない範囲です。

適用税率しか書いていない領収書では、積上げの材料がない

もう1つ、レシートを出す事業で起きる話があります。

適格簡易請求書の記載事項について、消費税法57条の4第2項5号は「適用税率又は税率ごとに区分した消費税額等」と、どちらかを書けばよい形にしています。ここで「適用税率」のほうだけを書いて交付すると、消費税額等が書かれていないことになります。

基本通達15-2-1の2 の注1が、この点を定めています。

(注)1 法第57条の4第2項第5号に掲げる事項につき、適用税率のみを記載した適格簡易請求書には、消費税額等の記載がないため、適格請求書等積上げ方式によることはできない。

(国税庁 消費税法基本通達 15-2-1の2 注1。2026年9月13日に取得)

インボイスを交付しているかどうかではなく、そこに何を書いて交付したかで決まります。

併用は認められている。ただし仕入側に効く

基本通達15-2-1の2 の本文は、売上税額について次のように書いています。

また、取引先ごと又は事業ごとにそれぞれ別の方式によるなど、総額割戻し方式と適格請求書等積上げ方式を併用することとしても差し支えない。

売上側は併用できます。ただし、その次の注2に続きがあります。

2 その課税期間に係る法第45条第1項第2号に掲げる課税標準額に対する消費税額の計算につき、適格請求書等積上げ方式による場合(総額割戻し方式と適格請求書等積上げ方式を併用する場合を含む。)には、法第30条第1項《仕入れに係る消費税額の控除》に規定する課税仕入れに係る消費税額の計算につき、令第46条第3項《課税仕入れに係る支払対価の合計額から割り戻す方法による消費税額の計算》に規定する計算の方法によることはできない。

(国税庁 消費税法基本通達 15-2-1の2 注2。2026年9月13日に取得)

併用した場合も「積上げ方式による場合」に含まれると書かれています。そして効いてくる先は、消費税法30条1項の課税仕入れに係る消費税額の計算です。

なお、簡易課税制度を適用する場合の控除税額は、消費税法37条1項が「第三十条から前条までの規定により課税標準額に対する消費税額から控除することができる課税仕入れ等の税額の合計額は、これらの規定にかかわらず、次に掲げる金額の合計額とする」と定める別の計算によります。簡易課税制度の計算そのものは [2種類以上の事業をやっている場合の簡易課税の計算(75%特例と、区分していない売上げの扱い)](/articles/fukusu-jigyo-kani-kazei-75/) をご覧ください。

端数の切捨ては2か所あり、単位が違います

売上税額の計算では、切捨てが2回出てきます。根拠はどちらも国税通則法です。

第百十八条 国税(印紙税及び附帯税を除く。以下この条において同じ。)の課税標準(中略)を計算する場合において、その額に千円未満の端数があるとき、又はその全額が千円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てる。 第百十九条 国税(自動車重量税、印紙税及び附帯税を除く。以下この条において同じ。)の確定金額に百円未満の端数があるとき、又はその全額が百円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てる。

(e-Gov 法令検索・国税通則法・令和8年6月24日施行版。2026年9月13日に取得)

どこ単位根拠
課税標準額千円未満切捨て国税通則法118条1項
確定金額(納付する税額)100円未満切捨て国税通則法119条1項

同じ「切捨て」でも単位が違います。切上げでも四捨五入でもありません。

なお、基本通達15-2-5は、消費税額が100円未満となって119条1項により全額が切り捨てられる課税期間であっても、課税資産の譲渡等または特定課税仕入れがあるときは確定申告書を提出しなければならないと定めています。税額が0円になることと、申告書を出すかどうかは別という念押しです。

申告書の「特例の適用」欄は、この特例の欄ではありません

最後に、名前が紛らわしい欄について触れておきます。

申告書第一表の「付記事項」欄には「課税標準額に対する消費税額の計算の特例の適用」という欄が実在します。名称が、消費税法施行令62条の見出し(課税標準額に対する消費税額の算出方法の特例)とよく似ています。

ただ、国税庁の「書き方」21ページは次のように記載しています。

イ 「課税標準額に対する消費税額の計算の特例の適用」欄は、使用しないでください。

(国税庁 法人用 消費税及び地方消費税の申告書(一般用)の書き方 21ページ。2026年9月13日に取得)

45条5項を選んだことを示す欄ではありません。記載方法については税務署にご確認ください。

この記事のまとめ

  • 売上税額の計算方法は2つある。原則=総額割戻し方式(消費税法45条1項2号)、特例=適格請求書等積上げ方式(同条5項・消費税法施行令62条1項)。名前は基本通達15-2-1の2 が定義している。
  • 特例の条件は、交付した適格請求書等の写しを消費税法57条の4第6項の規定により保存している場合。条文は「することができる」と書いている。
  • 積上げの計算は、適格請求書等に記載した消費税額等の合計額 × 100分の78。
  • 適用除外が4つある(16条1項/17条1項・2項本文/18条1項/28条1項ただし書)。条文と政令を開かないと出てこない範囲である。
  • 適用税率のみを記載した適格簡易請求書は、消費税額等の記載がないため積上げの材料がない(注1)。
  • 方式で申告書の金額が変わる。国税庁の設例では課税標準額が1,000円、消費税額が 468円 ずれる。
  • 売上側は併用できるが、併用を含めて積上げによる場合は、仕入税額について消費税法施行令46条3項の割り戻す方法によることはできない(注2)。
  • 端数の切捨ては課税標準額が千円未満(国税通則法118条1項)、確定金額が100円未満(同法119条1項)。

この記事に載せた試算ツールは、原則である総額割戻し方式による計算です。適格請求書等積上げ方式を適用している場合、上の設例のとおり金額が変わります。

自社がどちらの方式によることができるか、実際の申告書にいくらと記載するかについては、税理士または税務署にご相談ください。

経営者の疑問と、制度の事実

答えるのは制度の事実だけです。有利・不利は事業ごとの事情で変わるため、判断は税理士・税務署にご確認ください。

経営者うちはインボイスを出している。売上の消費税は、売上高に税率を掛けて出すものだと思っていたが、別のやり方があるのか。

制度の事実消費税法45条1項2号の「税率の異なるごとに区分した課税標準額に対する消費税額」について、消費税法基本通達15-2-1の2 は、原則として課税標準額に税率の異なるごとに標準税率または軽減税率を乗じて合計する方法によるとし、これを「総額割戻し方式」と呼んでいます。そのうえで、交付した適格請求書または適格簡易請求書の写しを消費税法57条の4第6項の規定により保存している場合には、適格請求書等に記載した消費税額等の合計額に100分の78を乗じる方法によることが「できる」とし、これを「適格請求書等積上げ方式」と呼んでいます。どちらの方式によることができるかは、保存の状況や取引の内容によって決まります。自社の当てはめは、税理士または税務署にご確認ください。

経営者端数の話だろう。数百円の違いなら気にしなくていいのでは。

制度の事実国税庁「法人用 消費税及び地方消費税の申告書(一般用)の書き方」の設例では、積上げを適用する法人について対価の額を「308,960,000円-28,086,600円=280,873,400円」と計算しており、税込金額を割り戻す方法ではありません。同じ取引を総額割戻し方式で通すと、課税標準額で1,000円、消費税額で468円の差が出ます。これは設例の数値であり、実際の差額は取引の内容によって変わります。自社の場合にどう計算するかは、税理士または税務署にご確認ください。

経営者青色申告で現金主義を選んでいる知り合いの個人事業者がいる。その人も積上げでいいのか。

制度の事実消費税法45条5項ただし書は、16条1項、17条1項もしくは2項本文または18条1項の規定その他政令で定める規定の適用を受ける課税資産の譲渡等については「この限りでない」と定めています。18条1項の条文見出しは「小規模事業者等に係る資産の譲渡等の時期等の特例」です。個々の事業者がこの規定の適用を受けているかどうかは申告の内容によって決まります。当てはめについては、税理士または税務署にご確認ください。

よくある質問

総額割戻し方式と適格請求書等積上げ方式は、どちらが原則ですか。
消費税法基本通達15-2-1の2 は、45条1項2号の「税率の異なるごとに区分した課税標準額に対する消費税額」について、「原則として」同項1号の課税標準額に税率の異なるごとに標準税率または軽減税率を乗じて算出した金額を合計する方法によると定め、この方法を「総額割戻し方式」と呼んでいます。適格請求書等積上げ方式は、45条5項が「することができる」と定める特例の側です。
積上げ方式を使うには何が必要ですか。
消費税法45条5項は「当該申告書に係る課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等につき交付した適格請求書又は適格簡易請求書の写しを第五十七条の四第六項の規定により保存している場合(同項の規定により同項の電磁的記録を保存している場合を含む。)」を条件としています。計算する金額は、消費税法施行令62条1項により、適格請求書等に記載した消費税額等の合計額に100分の78を乗じた金額です。自社の保存の状況がこの条件を満たすかについては、税理士または税務署にご確認ください。
インボイスを交付していれば、いつでも積上げ計算ができるのですか。
消費税法45条5項ただし書と消費税法施行令62条2項が、4つの規定の適用を受ける課税資産の譲渡等を除いています。16条1項(個人事業者の山林所得または譲渡所得の基因となる資産の延払条件付譲渡に係る資産の譲渡等の時期の特例)、17条1項および2項本文(工事の請負に係る資産の譲渡等の時期の特例)、18条1項(小規模事業者等に係る資産の譲渡等の時期等の特例)、28条1項ただし書(法人が資産を役員に著しく低い対価で譲渡した場合のみなし譲渡)です。また、適用税率のみを記載して交付した適格簡易請求書には消費税額等の記載がないため、基本通達15-2-1の2 注1は積上げ方式によることはできないとしています。
方式が違うと、申告書に載る金額はどのくらい変わりますか。
国税庁「法人用 消費税及び地方消費税の申告書(一般用)の書き方」の設例(課税売上高(税込み)308,960,000円、適格請求書等の消費税額等積上げ合計額28,086,600円、特定課税仕入れ2,400,000円)では、課税標準額が283,273,000円、消費税額が22,094,748円と計算されています。同じ取引を総額割戻し方式で通すと課税標準額は283,272,000円、消費税額は22,095,216円です。課税標準額で1,000円、消費税額で468円の差になります。金額はこの設例の数値によるものであり、実際の金額は取引の内容によって変わります。
売上税額を積上げにすると、仕入税額の計算に影響はありますか。
消費税法基本通達15-2-1の2 注2は、適格請求書等積上げ方式による場合(総額割戻し方式と適格請求書等積上げ方式を併用する場合を含みます)には、消費税法30条1項に規定する課税仕入れに係る消費税額の計算につき、消費税法施行令46条3項に規定する計算の方法(課税仕入れに係る支払対価の合計額から割り戻す方法)によることはできないと定めています。なお、簡易課税制度を適用する場合の控除税額は、消費税法37条1項が「第三十条から前条までの規定により…これらの規定にかかわらず」と定める別の計算によります。自社の計算方法については、税理士または税務署にご確認ください。
申告書の「課税標準額に対する消費税額の計算の特例の適用」欄に○を付ければよいのですか。
国税庁「法人用 消費税及び地方消費税の申告書(一般用)の書き方」21ページは、付記事項欄について「イ 「課税標準額に対する消費税額の計算の特例の適用」欄は、使用しないでください。」と記載しています。欄の名称は消費税法施行令62条の見出し(課税標準額に対する消費税額の算出方法の特例)と似ていますが、書き方はこの欄を使用しないとしています。記載方法の詳細は税務署にご確認ください。

個別の判断について

適用の可否や有利・不利は、事業区分・基準期間の課税売上高・過去の届出など個別の事情で変わります。実際の判断の前に、税理士等の専門家、または所轄の税務署にご相談ください。

出典(一次情報)

法令・国税庁・省庁など公的機関の公表資料のみを参照しています(解説記事等の二次情報は使用していません)。

本ページは公表されている制度情報にもとづく解説と試算の補助であり、税務に関する助言ではありません。個別の判断は必ず税理士等の専門家にご確認ください(所轄の税務署でも確認できます)。

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