登録した年のように2つの方式が混ざる課税期間では、千円未満切捨ての土台が欄ごとに違います(国税庁の設例4)
最終確認日: (数値は一次情報で照合)
課税期間の途中でインボイス発行事業者の登録を受けた場合、1つの課税期間の中で売上税額の計算方式が分かれることがあります。国税庁「課税期間の中途にインボイス発行事業者の登録を受けた場合の消費税申告書の計算・記載方法」の設例4は、令和6年1月1日から12月31日までを課税期間とする法人が令和6年10月1日から適格請求書発行事業者となった場合について、9月30日までを総額割戻し、10月1日以後を適格請求書等積上げで計算しています。ここで土台が2つに分かれます。付表の課税標準額の欄は、割戻し分と積上げ分を合計した金額について千円未満を切り捨てます(設例では3,502,749円が3,502,000円)。一方、消費税額の欄の割戻し分は、その課税標準額ではなく、割戻し分だけの対価の額2,285,370円を千円未満切り捨てた2,285,000円に6.24パーセントを乗じて142,584円としています。積上げ分は千円未満切捨てを通らず、適格請求書等に記載した消費税額等96,121円に100分の78を乗じて74,974円と別に計算し、最後に合算しています。当サイトが設例の数値で計算したところ、消費税額の欄を課税標準額から出すと総額で3,610円の差が生じました。なお、課税期間の全体が1つの方式である場合には、この分かれ方は生じません。自社の申告書の記載方法については、税理士または税務署にご確認ください。
この記事の要点
- 課税期間の途中で登録を受けると、1つの課税期間の中で売上税額の計算方式が割戻しと積上げに分かれることがある。国税庁の設例4は、令和6年10月1日登録の法人について9月30日までを割戻し、10月1日以後を積上げで計算している。
- 付表の課税標準額の欄は、割戻し分と積上げ分を合計してから千円未満を切り捨てる。設例の税率6.24パーセント適用分では、2,285,370円と1,217,379円の合計3,502,749円が3,502,000円になる。
- 消費税額の欄の割戻し分は、課税標準額ではなく割戻し分だけの対価の額を千円未満切り捨てた金額に税率を乗じる。設例は2,285,370円を2,285,000円としたうえで6.24パーセントを乗じ142,584円としている。
- 積上げ分は千円未満切捨てを通らない。適格請求書等に記載した消費税額等に100分の78を乗じて算出する(消費税法施行令62条1項)。設例では96,121円に100分の78を乗じて74,974円である。
- 設例の消費税額は税率6.24パーセント適用分が217,558円、7.8パーセント適用分が1,986,278円、合計2,203,836円である。
- 当サイトが設例の数値で計算したところ、消費税額の欄を課税標準額から出した場合は218,524円と1,988,922円で合計2,207,446円となり、設例の金額と3,610円の差が出た。
- 課税期間の全体が1つの方式である場合、この分かれ方は生じない。設例5は課税期間の全体が割戻しで、課税標準額に税率を乗じる形になっている。
- 課税標準額の千円未満切捨ての根拠は国税通則法118条1項である。確定金額の100円未満切捨ては同法119条1項で、単位が異なる。
登録した年は、1つの課税期間に2つの計算方式が入ります
売上側の消費税をどう計算するかには、2つの方式があります。原則が総額割戻し方式、特例が適格請求書等積上げ方式です。この2つの違いそのものは [売上税額の計算には2つの方式があります。原則は総額割戻し、積上げは消費税法45条5項の特例です](/articles/uriage-zeigaku-warimodoshi-tsumiage/) に書きましたので、ここでは繰り返しません。
ここで取り上げるのは、1つの課税期間の中に両方が入ってしまう場合です。
積上げの特例を定める消費税法45条5項は、交付した適格請求書等の写しを保存している場合について定めています。登録前の期間には適格請求書を交付していませんから、課税期間の途中で登録を受けた年は、前半と後半で方式が分かれることになります。
国税庁は、この場合の申告書の書き方を設例で示しています。そのうちの設例4は、次の前提です。
(設例4)簡易課税 令和 6 年 1 月 1 日~9 月30日までの期間 ⇒ 売上税額は割戻し計算 令和 6 年10月 1 日~12月31日までの期間 ⇒ 売上税額は積上げ計算
〇 なお、㈱国税商事は令和 6 年10月 1 日から適格請求書発行事業者となり、それまでの間は課税事業者である。
(国税庁「課税期間の中途にインボイス発行事業者の登録を受けた場合の消費税申告書の計算・記載方法」設例4。2026年9月15日に取得・原文ママ)
課税標準額の欄は、合計してから千円未満を切り捨てます
まず、付表の課税標準額の欄です。ここは素直です。
税率6.24パーセント適用分について、設例は次のように計算しています。
| 計算 | 金額 | |
|---|---|---|
| イ 割戻し分 | `2,468,200円×100/108` | 2,285,370円 |
| ロ 積上げ分 | `1,313,500円-96,121円` | 1,217,379円 |
| ハ イ+ロ | 3,502,749円 |
そのうえで、ハを千円未満切捨てします。
3,502,749 円 ⇒ 3,502,000 円
税率7.8パーセント適用分も同じで、`16,917,272円`(割戻し分)と `8,582,309円`(積上げ分)を足した 25,499,581円を切り捨てて 25,499,000円としています。
課税標準額の千円未満切捨ては、国税通則法118条1項に定められているものです。
ここまでは「合計してから切り捨てる」という一本道です。
消費税額の欄では、切り捨てる相手が変わります
問題はこの次です。
課税標準額が 3,502,000円と出たので、これに 6.24 パーセントを掛ければ消費税額が出そうに見えます。設例はそう計算していません。
イ 割戻し計算分 2,285,370 円 ⇒ 2,285,000(千円未満切捨て) 2,285,000 円×6.24%=142,584 円 ロ 積上げ計算分 96,121 円×78/100=74,974 円 ハ イ+ロ=217,558 円
(国税庁 設例4。2026年9月15日に取得・原文ママ)
切り捨てられているのは 2,285,370円、つまり割戻し分だけの対価の額です。課税標準額の 3,502,000円ではありません。
そして積上げ分は、千円未満切捨てを通っていません。適格請求書等に記載した消費税額等 96,121円に 100分の78 を乗じて別に計算し、最後にイと合算しています。この 100分の78 は消費税法施行令62条1項が定めているものです。
法第四十五条第五項に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、当該各号に定める金額の合計額に百分の七十八を乗じて算出した金額とする。
(e-Gov 法令検索・消費税法施行令・令和8年10月1日施行版。2026年9月15日に取得)
2つの欄を並べると、千円未満切捨ての土台が違うことがはっきりします。
| 課税標準額の欄 | 消費税額の欄 | |
|---|---|---|
| 割戻し分 | 対価の額 2,285,370円 | 同じ 2,285,370円 を切り捨て |
| 積上げ分 | 対価の額 1,217,379円 | 消費税額等 96,121円から計算 |
| 切り捨てるもの | 2つを合計した 3,502,749円 | 割戻し分だけの 2,285,370円 |
土台を取り違えると、この設例では3,610円の差になります
では、消費税額の欄を課税標準額から出すとどうなるか。当サイトで設例の数値を使って計算してみました。
| 設例の金額 | 課税標準額から出した場合 | 差 | |
|---|---|---|---|
| 税率6.24%適用分 | 217,558円 | `3,502,000×6.24%=` 218,524円 | 966円 |
| 税率7.8%適用分 | 1,986,278円 | `25,499,000×7.8%=` 1,988,922円 | 2,644円 |
| 合計 | 2,203,836円 | 2,207,446円 | 3,610円 |
設例が示している合計額は 2,203,836円です。
金額はこの設例の数値によるものであり、差額は取引の内容によって変わります。
なお、この 2,203,836円はここで終わりません。設例4は簡易課税の例で、付表5-3 の課税標準額に対する消費税額の欄にこの金額が転記されます。設例はそこから売上対価の返還等に係る消費税額 `5,951円` と `3,970円` を控除し、`217,558-5,951=211,607`、`1,986,278-3,970=1,982,308` と計算しています。売上税額の欄で生じた差は、みなし仕入率を掛ける土台にもそのまま乗っていく位置にあります。
課税期間の全体が1つの方式なら、この分かれ方は生じません
最後に、範囲をはっきりさせておきます。
ここまでの話は、割戻しと積上げが混ざる課税期間のものです。課税期間の全体が1つの方式であれば、割戻し分と積上げ分に分かれること自体が起きません。
同じ資料の設例5は、課税期間の全体が割戻し計算です。そちらは課税標準額を千円未満切り捨てたうえで税率を乗じる形になっています。
つまり「課税標準額に税率を掛ける」という覚え方が誤りなのではなく、方式が混ざる課税期間ではその形にならないということです。
この記事のまとめ
- 課税期間の途中で登録を受けると、1つの課税期間の中で売上税額の方式が分かれることがある(国税庁 設例4・令和6年10月1日登録の例)。
- 課税標準額の欄は、割戻し分と積上げ分を合計してから千円未満切捨て(設例では 3,502,749円 ⇒ 3,502,000円。国税通則法118条1項)。
- 消費税額の欄の割戻し分は、課税標準額ではなく割戻し分だけの対価の額を千円未満切り捨てた金額に税率を乗じる(2,285,370円 ⇒ 2,285,000円 × 6.24% = 142,584円)。
- 積上げ分は千円未満切捨てを通らない。適格請求書等に記載した消費税額等に 100分の78を乗じて別に計算し、最後に合算する(消費税法施行令62条1項)。
- 当サイトが設例の数値で計算したところ、消費税額の欄を課税標準額から出すと合計で 3,610円の差が出た。
- 課税期間の全体が1つの方式なら、この分かれ方は生じない(設例5)。
自社の課税期間にどの方式が当てはまるか、申告書と付表にどう記載するかについては、税理士または税務署にご確認ください。
経営者の疑問と、制度の事実
答えるのは制度の事実だけです。有利・不利は事業ごとの事情で変わるため、判断は税理士・税務署にご確認ください。
経営者うちは去年の10月に登録した。年の途中だと、申告書の売上の消費税はどう計算することになるんだ。
制度の事実国税庁の設例4は、令和6年1月1日から12月31日までを課税期間とする法人が令和6年10月1日から適格請求書発行事業者となり、それまでの間は課税事業者であるという前提で、9月30日までの期間の売上税額を割戻し計算、10月1日以後の期間の売上税額を積上げ計算として記載しています。適格請求書等積上げ方式は、消費税法45条5項が「交付した適格請求書又は適格簡易請求書の写しを第五十七条の四第六項の規定により保存している場合」について定めている特例で、同項は「することができる」という書き方です。御社がどの期間についてどの方式によることができるかは、税理士または税務署にご確認ください。
経営者課税標準額を千円未満で切り捨てて、それに税率を掛ける。私はずっとそう覚えてきた。それでは駄目なのか。
制度の事実課税期間の全体が割戻し計算である場合、設例5はその形で記載しています。一方、割戻しと積上げが混ざる課税期間について、設例4は消費税額の欄の割戻し分を「2,285,370円 ⇒ 2,285,000(千円未満切捨て)」「2,285,000円×6.24%=142,584円」と計算しており、切り捨てているのは割戻し分だけの対価の額です。積上げ分は「96,121円×78/100=74,974円」と別に計算し、最後に合算しています。この2つを合わせた217,558円が設例の消費税額です。御社の申告書の記載については、税理士または税務署にご確認ください。
経営者数百円の話だろう。そこまで神経質にならないといけないのか。
制度の事実設例4の数値で当サイトが計算したところ、消費税額の欄を課税標準額から出した場合は税率6.24パーセント適用分が218,524円、7.8パーセント適用分が1,988,922円で、合計2,207,446円でした。設例の2,203,836円との差は3,610円です。またこの金額は、簡易課税の付表5-3の控除対象仕入税額の計算の基礎となる消費税額にも引き継がれる位置にあります。設例は、付表5-3の課税標準額に対する消費税額の欄に付表4-3の2,203,836円を転記し、そこから売上対価の返還等に係る消費税額5,951円と3,970円を控除して計算しています。差額の大きさや御社の場合の取扱いについては、税理士または税務署にご確認ください。
よくある質問
- 1つの課税期間の中で、売上税額の計算方式が2つになることがあるのですか。
- 国税庁「課税期間の中途にインボイス発行事業者の登録を受けた場合の消費税申告書の計算・記載方法」の設例4は、令和6年1月1日から12月31日までを課税期間とする法人が令和6年10月1日から適格請求書発行事業者となった場合について、「令和6年1月1日~9月30日までの期間 ⇒ 売上税額は割戻し計算」「令和6年10月1日~12月31日までの期間 ⇒ 売上税額は積上げ計算」と記載しています。適格請求書等積上げ方式は、消費税法45条5項が交付した適格請求書等の写しを保存している場合について定める特例です。自社がどの期間についてどの方式によることができるかは、税理士または税務署にご確認ください。
- 課税標準額の欄は、どのように計算されていますか。
- 設例4の税率6.24パーセント適用分では、割戻し分が2,468,200円に100/108を乗じた2,285,370円、積上げ分が1,313,500円から96,121円を控除した1,217,379円で、この2つを合計した3,502,749円を千円未満切り捨てて3,502,000円としています。税率7.8パーセント適用分は、16,917,272円と8,582,309円の合計25,499,581円を切り捨てて25,499,000円です。課税標準額の千円未満切捨ては国税通則法118条1項に定められています。
- 消費税額の欄の割戻し分は、その課税標準額に税率を乗じるのではないのですか。
- 設例4はそのようには計算していません。税率6.24パーセント適用分の消費税額について、設例は「2,285,370円 ⇒ 2,285,000(千円未満切捨て)」としたうえで「2,285,000円×6.24%=142,584円」と記載しています。切り捨てられているのは、割戻し分だけの対価の額2,285,370円です。課税標準額の3,502,000円ではありません。実際の申告書の記載方法については、税務署にご確認ください。
- 土台を取り違えると、どのくらい違ってくるのですか。
- 当サイトが設例4の数値で計算したところ、税率6.24パーセント適用分について課税標準額3,502,000円に6.24パーセントを乗じると218,524円となり、設例の217,558円との差は966円でした。税率7.8パーセント適用分は25,499,000円に7.8パーセントを乗じると1,988,922円となり、設例の1,986,278円との差は2,644円でした。合計では2,207,446円と2,203,836円で、差は3,610円です。これはこの設例の数値による計算であり、差額は取引の内容によって変わります。
- 積上げ分にも千円未満切捨てはあるのですか。
- 設例4では、積上げ分について千円未満切捨てを行う記載はありません。「96,121円×78/100=74,974円」「854,811円×78/100=666,752円」と計算し、割戻し分と合算しています。消費税法施行令62条1項は、適格請求書に記載した消費税額等その他各号に定める金額について「当該各号に定める金額の合計額に百分の七十八を乗じて算出した金額」と定めています。
- うちは課税期間の全体が割戻しです。この話は関係しますか。
- 課税期間の全体が1つの方式である場合、割戻し分と積上げ分に分かれること自体が生じません。同じ資料の設例5は課税期間の全体が割戻し計算で、課税標準額を千円未満切り捨てたうえで税率を乗じる形になっています。自社がどの方式によることになるかは、税理士または税務署にご確認ください。
個別の判断について
適用の可否や有利・不利は、事業区分・基準期間の課税売上高・過去の届出など個別の事情で変わります。実際の判断の前に、税理士等の専門家、または所轄の税務署にご相談ください。
出典(一次情報)
- 国税庁 課税期間の中途にインボイス発行事業者の登録を受けた場合の消費税申告書の計算・記載方法(令和5年10月1日以後に開始する課税期間用)設例4 簡易課税・全15ページ確認日 2026-09-15
- 国税庁 消費税及び地方消費税の確定申告書等の様式・手引き等(設例集の索引・令和5年10月1日以後に開始する課税期間用)確認日 2026-09-15
- e-Gov 法令検索 消費税法施行令 第62条(課税標準額に対する消費税額の算出方法の特例)第1項・第2項/版ID 363CO0000000360_20261001_508CO0000000108確認日 2026-09-15
- e-Gov 法令検索 消費税法 第45条第1項第1号・第2号、第45条第5項(課税標準額に対する消費税額の計算の特例)/版ID 363AC0000000108_20261001_428AC0000000015確認日 2026-09-15
- e-Gov 法令検索 国税通則法 第118条第1項(国税の課税標準の端数計算等)・第119条第1項(国税の確定金額の端数計算等)/版ID 337AC0000000066_20260624_508AC0000000046確認日 2026-09-13
法令・国税庁・省庁など公的機関の公表資料のみを参照しています(解説記事等の二次情報は使用していません)。