家賃を口座振替で払っていて請求書が来ない場合、何を保存すればよいか(契約書と通帳の組み合わせ)
最終確認日: (数値は一次情報で照合)
事務所を賃借して口座振替で家賃を支払い、請求書や領収書の交付を受けていない場合について、国税庁の質疑応答事例「家賃を口座振替・口座振込により支払う場合の仕入税額控除の適用要件」は、適格請求書の記載事項の一部(例えば課税資産の譲渡等の年月日以外の事項)が記載された契約書とともに通帳(課税資産の譲渡等の年月日の事実を示すもの)を併せて保存することにより、仕入税額控除の要件を満たすこととなるとしています。口座振込の場合は、契約書とともに銀行が発行した振込金受取書を保存することによるとされています。これは適格請求書の記載事項が一の書類だけで全て記載されている必要はないという考え方によるもので、消費税法基本通達1-8-1は複数の書類による場合の条件として「これらの書類について相互の関連が明確であり、その交付を受ける事業者が同項各号に掲げる事項を適正に認識できる場合には」と定めています。なお、令和5年9月30日以前からの契約で契約書に登録番号等の記載が不足している場合は、別途その通知を受けて契約書とともに保存していれば差し支えないとされています。自社の契約書と保存書類がこれらの記載事項を満たしているかの判断は、税理士または税務署にご確認ください。
この記事の要点
- 消費税法第30条第7項は、課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合には、その保存がない課税仕入れに係る税額については仕入税額控除の規定を適用しないと定めている。請求書が交付されない取引でも、保存は必要になる。
- 国税庁の質疑応答事例は、口座振替で家賃を支払い請求書や領収書の交付を受けていない場合について、記載事項の一部が記載された契約書とともに通帳を併せて保存することにより仕入税額控除の要件を満たすとしている。
- 口座振込の場合は、契約書とともに「銀行が発行した振込金受取書」を保存することによるとされている。
- 考え方の根拠は、適格請求書の記載事項が一の書類だけで全て記載されている必要はないという点にある。消費税法基本通達1-8-1は「これらの書類について相互の関連が明確であり、その交付を受ける事業者が同項各号に掲げる事項を適正に認識できる場合には」という条件を付している。
- 一定期間の取引をまとめた適格請求書の交付を受けてそれを保存する対応も可能とされている(質疑応答事例・Q&A問95)。
- 令和5年9月30日以前からの契約で契約書に登録番号等の記載が不足している場合は、別途その不足していた事項の通知を受け、契約書とともに保存していれば差し支えないとされている。
- 取引の都度 請求書等が交付されない取引では、途中で貸主が適格請求書発行事業者でなくなっても借主が把握することは困難になるため、国税庁は必要に応じて公表サイトで確認するよう求めている。
事務所の家賃を、毎月口座振替で払っている。契約書はあるが、請求書も領収書も一度も来たことがない。通帳に引き落としの記録が残るだけ。
この状態で、仕入税額控除は受けられるのか。
国税庁は、この照会にそのまま答えた文書を公表しています。
まず、保存そのものは省けない
消費税法 第30条第7項 は次のとおり定めています。
第一項の規定は、事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等(請求書等の交付を受けることが困難である場合、特定課税仕入れに係るものである場合その他の政令で定める場合における当該課税仕入れ等の税額については、帳簿)を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れ、特定課税仕入れ又は課税貨物に係る課税仕入れ等の税額については、適用しない。
国税庁の質疑応答事例も、同じ点から始めています。
通常、契約書に基づき代金決済が行われ、取引の都度、請求書や領収書が交付されない取引であっても、仕入税額控除を受けるためには、原則として、適格請求書の保存が必要です。
請求書が来ないことは、保存しなくてよい理由にはなっていません。
答え —— 契約書と通帳の組み合わせで満たす
では何を保存するのか。質疑応答事例の回答は次のとおりです。
なお、適格請求書として必要な記載事項は、一の書類だけで全てが記載されている必要はなく、相互の関連が明確な複数の書類で記載事項を満たせば、それらの書類全体で適格請求書の記載事項を満たすことになりますので、契約書に適格請求書として必要な記載事項の一部が記載されており、実際に取引を行った事実を客観的に示す書類とともに保存しておけば、仕入税額控除の要件を満たすこととなります。
そして、照会の場合について具体的に示しています。
ご質問の場合には、適格請求書の記載事項の一部(例えば、課税資産の譲渡等の年月日以外の事項)が記載された契約書とともに通帳(課税資産の譲渡等の年月日の事実を示すもの)を併せて保存することにより、仕入税額控除の要件を満たすこととなります。
契約書が「年月日以外の事項」を担い、通帳が「年月日の事実」を担うという組み合わせです。
口座振替ではなく振込の場合
また、口座振込により家賃を支払う場合も、適格請求書の記載事項の一部が記載された契約書とともに、銀行が発行した振込金受取書を保存することにより、請求書等の保存があるものとして、仕入税額控除の要件を満たすこととなります。
通帳の代わりに、銀行が発行した振込金受取書が挙げられています。
まとめて交付を受ける方法もある
同じ質疑応答事例は、別の対応も挙げています。
この点、適格請求書は、一定期間の取引をまとめて交付することもできますので、相手方(貸主)から一定期間の賃借料についての適格請求書の交付を受け、それを保存することによる対応も可能です。
貸主から半年分・1年分をまとめた適格請求書を受け取って保存するという形です。
「複数の書類でよい」には条件が付いている
ここは読み落としやすい箇所です。複数の書類で満たしてよい、という考え方の根拠は消費税法基本通達 1-8-1 にあります。
また、適格請求書の交付に関して、一の書類により同項各号に掲げる事項を全て記載するのではなく、例えば、納品書と請求書等の二以上の書類であっても、これらの書類について相互の関連が明確であり、その交付を受ける事業者が同項各号に掲げる事項を適正に認識できる場合には、これら複数の書類全体で適格請求書の記載事項を満たすものとなることに留意する。
「相互の関連が明確であり」「適正に認識できる場合には」という条件が付いています。どの2枚でもよい、という書き方にはなっていません。
📌 なお、同じ照会は国税庁 インボイスQ&A 問95【令和5年10月改訂】にも収録されており、照会文はほぼ同じです。ただし当サイトが2026年10月13日に両方の原本を確認したところ、この条件の書き方が違いました。
| 記載 | |
|---|---|
| 質疑応答事例 | 「相互の関連が明確な複数の書類で記載事項を満たせば」 |
| Q&A 問95 | 「複数の書類で記載事項を満たせば」 |
| 消費税法基本通達 1-8-1 | 「これらの書類について相互の関連が明確であり、その交付を受ける事業者が同項各号に掲げる事項を適正に認識できる場合には」 |
Q&A 問95の本文には「相互の関連が明確」という語がありません。ただし通達の側にはこの条件が置かれており、質疑応答事例もこれを書いています。書類をそろえるときは、この条件が付いている側を前提にしておくのが確実です。
制度が始まる前からの契約について
契約書が古く、登録番号が書かれていない場合です。質疑応答事例には参考として次の記載があります。
令和5年9月30日以前からの契約について、契約書に登録番号等の適格請求書として必要な事項の記載が不足している場合には、別途、登録番号等の記載が不足していた事項の通知を受け、契約書とともに保存していれば差し支えありません。
契約書そのものを作り直すことを求める記載はありません。不足していた事項の通知を受けて、契約書と一緒に保存する形です。
相手が登録をやめたときに、気づけない
質疑応答事例は、この取引の形そのものに伴う問題にも触れています。
なお、このように取引の都度、請求書等が交付されない取引について、取引の中途で取引の相手方(貸主)が適格請求書発行事業者でなくなる場合も想定され、その旨の連絡がない場合には貴社(借主)はその事実を把握することは困難となります(適格請求書発行事業者以外の者に支払う取引対価の額については、原則として、仕入税額控除を行うことはできません。)。
請求書が毎月届く取引なら、登録番号が消えたことに気づく機会があります。口座振替は、その機会がありません。
そのため、必要に応じ、「国税庁適格請求書発行事業者公表サイト」で相手方が適格請求書発行事業者か否かを確認してください。
確認の頻度について、制度上の定めは示されていません。
確認しておきたいこと
- 不動産賃貸契約書に、貸主の氏名又は名称・登録番号・資産又は役務の内容・税率ごとに区分した対価の額が記載されているか
- 通帳または振込金受取書が、支払った年月日を示すものとして保存されているか
- 令和5年9月30日以前からの契約で記載が不足している場合、不足事項の通知を受けて契約書とともに保存しているか
いずれも保存要件に関わります。自社の契約書と保存書類で足りているかの判断は、税理士または税務署にご確認ください。
- 請求書が交付されない取引でも、保存そのものは省けない(消費税法第30条第7項)
- 国税庁が示しているのは契約書と通帳(口座振込なら銀行が発行した振込金受取書)の組み合わせ
- 複数の書類で満たす場合、通達は「相互の関連が明確であり」「適正に認識できる場合には」という条件を付している
- 令和5年9月30日以前からの契約は、不足事項の通知を受けて契約書とともに保存していれば差し支えないとされている
- 口座振替は、相手の登録が失効しても気づく機会がない。公表サイトでの確認を国税庁が求めている
最終確認日: 2026年10月13日
経営者の疑問と、制度の事実
答えるのは制度の事実だけです。有利・不利は事業ごとの事情で変わるため、判断は税理士・税務署にご確認ください。
経営者事務所の家賃は20年同じ大家さんに口座振替で払っている。請求書なんて一度も来たことがない。これは控除できなくなるのか。
制度の事実国税庁の質疑応答事例「家賃を口座振替・口座振込により支払う場合の仕入税額控除の適用要件」は、まず「通常、契約書に基づき代金決済が行われ、取引の都度、請求書や領収書が交付されない取引であっても、仕入税額控除を受けるためには、原則として、適格請求書の保存が必要です」としています。そのうえで、適格請求書の記載事項は一の書類だけで全てが記載されている必要はないとして、記載事項の一部が記載された契約書とともに通帳を併せて保存することにより仕入税額控除の要件を満たすこととなると記載しています。自社の契約書と通帳がこれを満たしているかの確認は、税理士または税務署にご相談ください。
経営者契約書と通帳を取っておけばいい、という理解でいいのか。ほかに何か要るのか。
制度の事実質疑応答事例が挙げているのは、適格請求書の記載事項の一部(例えば課税資産の譲渡等の年月日以外の事項)が記載された契約書と、課税資産の譲渡等の年月日の事実を示すものとしての通帳の組み合わせです。つまり契約書の側に何が記載されているかが前提になります。また消費税法基本通達1-8-1は、複数の書類による場合について「これらの書類について相互の関連が明確であり、その交付を受ける事業者が同項各号に掲げる事項を適正に認識できる場合には」という条件を付しています。令和5年9月30日以前からの契約で登録番号等の記載が不足している場合は、別途その通知を受けて契約書とともに保存していれば差し支えないとされています。自社の書類で足りているかの判断は、税理士または税務署にご確認ください。
経営者大家さんが登録をやめたかどうかなんて、こちらには分からない。どうすればいいんだ。
制度の事実質疑応答事例も同じ点に触れており、取引の都度 請求書等が交付されない取引については、相手方が適格請求書発行事業者でなくなる場合も想定され、その旨の連絡がない場合には借主がその事実を把握することは困難となると記載しています。そのうえで「必要に応じ、「国税庁適格請求書発行事業者公表サイト」で相手方が適格請求書発行事業者か否かを確認してください」とされています。確認の頻度について制度上の定めは示されていません。自社の管理方法については、税理士または税務署にご相談ください。
よくある質問
- 家賃は請求書も領収書も来ません。通帳の記録だけで控除できるのですか。
- 国税庁の質疑応答事例「家賃を口座振替・口座振込により支払う場合の仕入税額控除の適用要件」は、通帳だけでよいとはしていません。「適格請求書の記載事項の一部(例えば、課税資産の譲渡等の年月日以外の事項)が記載された契約書とともに通帳(課税資産の譲渡等の年月日の事実を示すもの)を併せて保存することにより、仕入税額控除の要件を満たすこととなります」と記載しています。契約書と通帳の組み合わせで記載事項を満たす形です。自社の契約書に必要な記載があるかの確認は、税理士または税務署にご相談ください。
- 口座振替ではなく、自分で振り込んでいる場合はどうなりますか。
- 同じ質疑応答事例は「また、口座振込により家賃を支払う場合も、適格請求書の記載事項の一部が記載された契約書とともに、銀行が発行した振込金受取書を保存することにより、請求書等の保存があるものとして、仕入税額控除の要件を満たすこととなります」と記載しています。
- インボイス制度が始まる前からの契約で、契約書に登録番号が書いてありません。契約書を作り直す必要がありますか。
- 質疑応答事例には参考として次の記載があります。「令和5年9月30日以前からの契約について、契約書に登録番号等の適格請求書として必要な事項の記載が不足している場合には、別途、登録番号等の記載が不足していた事項の通知を受け、契約書とともに保存していれば差し支えありません」。契約書そのものを作り直すことを求める記載はありません。自社の場合の対応は、税理士または税務署にご確認ください。
- 複数の書類で満たす場合に、何か条件はありますか。
- 消費税法基本通達1-8-1は、一の書類により記載事項を全て記載するのではない場合について「例えば、納品書と請求書等の二以上の書類であっても、これらの書類について相互の関連が明確であり、その交付を受ける事業者が同項各号に掲げる事項を適正に認識できる場合には、これら複数の書類全体で適格請求書の記載事項を満たすものとなることに留意する」と定めています。質疑応答事例も「相互の関連が明確な複数の書類で記載事項を満たせば」としています。自社の書類の組み合わせがこれに当たるかの判断は、税理士または税務署にご確認ください。
- 貸主が途中でインボイスの登録をやめたら、どうなりますか。
- 質疑応答事例は、取引の都度 請求書等が交付されない取引について「取引の中途で取引の相手方(貸主)が適格請求書発行事業者でなくなる場合も想定され、その旨の連絡がない場合には貴社(借主)はその事実を把握することは困難となります」としたうえで、「適格請求書発行事業者以外の者に支払う取引対価の額については、原則として、仕入税額控除を行うことはできません。」と記載しています。そのため「必要に応じ、「国税庁適格請求書発行事業者公表サイト」で相手方が適格請求書発行事業者か否かを確認してください」とされています。
個別の判断について
適用の可否や有利・不利は、事業区分・基準期間の課税売上高・過去の届出など個別の事情で変わります。実際の判断の前に、税理士等の専門家、または所轄の税務署にご相談ください。
出典(一次情報)
- 国税庁 質疑応答事例(消費税)家賃を口座振替・口座振込により支払う場合の仕入税額控除の適用要件(令和7年8月1日現在の法令・通達等)確認日 2026-10-13
- 国税庁 インボイス Q&A 問95《口座振替・口座振込による家賃の支払》【令和5年10月改訂】(分冊 01-12 PDF原本)確認日 2026-10-13
- 国税庁 消費税法基本通達 第1章第8節 適格請求書発行事業者の義務(1-8-1 適格請求書の意義)確認日 2026-10-13
- e-Gov法令検索 消費税法 第30条第7項(2026年10月1日施行版)確認日 2026-10-13
法令・国税庁・省庁など公的機関の公表資料のみを参照しています(解説記事等の二次情報は使用していません)。