令和8年度税制改正に対応

3割特例を使っている課税期間に支払った工事代金は、自己建設高額特定資産の1,000万円の累計に入りません(平成30年政令135号 附則21条の3)

最終確認日: (数値は一次情報で照合)

結論から

消費税法施行令25条の5第1項2号は、自分で建設等をした資産(自己建設資産)について、高額特定資産に当たるかどうかを、その建設等に要した課税仕入れに係る支払対価の額などの合計額で判定するとしています。同号の括弧書きは、この合計額から「当該建設等を行つた事業者が法第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除されることとなる課税期間又は法第三十七条第一項の規定の適用を受ける課税期間中に国内において行つた課税仕入れ及び保税地域から引き取つた課税貨物に係るもの」を除くとしています。つまり免税事業者だった課税期間と、簡易課税制度の適用を受ける課税期間に行った課税仕入れは、累計に算入されません。2026年10月1日施行版で新設された平成30年政令135号の附則21条の3は、3割特例(平成28年改正法附則51条の3第1項)の適用を受ける課税期間について、この同号中の「第三十七条第一項」を「第三十七条第一項若しくは所得税法等の一部を改正する法律(平成二十八年法律第十五号)附則第五十一条の三第一項」と読み替えるとしています。この読替えにより、3割特例の適用を受ける課税期間中に行った課税仕入れも、自己建設高額特定資産の累計額から除かれる形になります。2割特例については、同じ内容の附則21条の2が置かれています。自社の資産がこれに当たるかどうかの判定は、税理士または税務署にご確認ください。

この記事の要点

  • 自分で建設等をした資産は、取得価額ではなく建設等に要した課税仕入れに係る支払対価の額などの合計額が1,000万円以上かどうかで判定する(消費税法12条の4第1項の括弧書き・消費税法施行令25条の5第1項2号・同条2項)。
  • その合計額からは、免税事業者だった課税期間(消費税法9条1項本文)と、簡易課税制度の適用を受ける課税期間(消費税法37条1項)に行った課税仕入れが除かれる(消費税法施行令25条の5第1項2号の括弧書き・e-Gov原文・確認日2026-09-22)。
  • 平成30年政令135号の附則21条の3は、3割特例の適用を受ける課税期間について、この同号中の「第三十七条第一項」を「第三十七条第一項若しくは…附則第五十一条の三第一項」と読み替えるとしている。
  • この附則21条の3は、消費税法施行令の2026年5月22日施行版には置かれておらず、2026年10月1日施行版で新設された条である(版を並べて確認・確認日2026-09-22)。
  • 2割特例については、同じ形の附則21条の2が先に置かれている。ただし同条は「新令第二十五条の五第一項第二号」、附則21条の3は「消費税法施行令第二十五条の五第一項第二号」と書かれており、参照の表記が異なる(e-Gov原文)。
  • 高額特定資産を取得すると3割特例を適用できない課税期間が生じるという話とは、向きが逆である。こちらは3割特例を適用している課税期間の支出を、高額特定資産の判定にどう数えるかという話である。

高額な資産を取得すると、そのあと数年間は免税事業者に戻れず、簡易課税も選べない期間が生じます。その境目が1,000万円です。

買う場合は分かりやすいのですが、自分で建てる場合は事情が違います。1回の支払ではなく、積み上がっていくからです。

その積み上げから除かれるものがあります。3割特例を適用している課税期間の支出も、そこに入ります。

根拠は、消費税法施行令の条文本体ではなく、そこに添付された政令の附則にあります。

まず、自分で建てる場合の判定のしかた

消費税法12条の4第1項は、高額特定資産を取得した場合の取扱いを定めています。自分で建てる場合については、次の括弧書きが置かれています。

(他の者との契約に基づき、又は当該事業者の棚卸資産若しくは調整対象固定資産として自ら建設、製作又は製造(以下この項及び次項において「建設等」という。)をした高額特定資産(以下この項において「自己建設高額特定資産」という。)にあつては、当該自己建設高額特定資産の建設等に要した政令で定める費用の額が政令で定める金額以上となつた場合…)

「政令で定める費用の額」と「政令で定める金額」の中身は、消費税法施行令25条の5第2項にあります。

2 法第十二条の四第一項に規定する政令で定める費用の額は、同項に規定する自己建設高額特定資産の建設等に要した仕入れ等に係る支払対価の額の累計額とし、同項に規定する政令で定める金額は、千万円とする。

1回の取引の金額ではありません。累計額です。

累計から除かれるもの

その累計額が何を指すかは、消費税法施行令25条の5第1項2号に書かれています。長い条文ですが、括弧書きの後半が要点です。

二 自己建設資産(対象資産のうち、他の者との契約に基づき、又は事業者の棚卸資産若しくは調整対象固定資産として自ら建設等…をしたものをいう。) 当該自己建設資産の建設等に要した課税仕入れに係る支払対価の額の百十分の百…に相当する金額、特定課税仕入れに係る支払対価の額及び保税地域から引き取られる課税貨物の課税標準である金額(当該自己建設資産の建設等のために要した原材料費及び経費に係るものに限り、当該建設等を行つた事業者が法第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除されることとなる課税期間又は法第三十七条第一項の規定の適用を受ける課税期間中に国内において行つた課税仕入れ及び保税地域から引き取つた課税貨物に係るものを除く。…)の合計額

除かれるのは、次の2つの課税期間に行った課税仕入れです。

条文内容
消費税法9条1項本文免税事業者として、消費税を納める義務が免除される課税期間
消費税法37条1項簡易課税制度の適用を受ける課税期間

免税だった間と、簡易課税だった間の支出は、1,000万円の累計に数えません。

そこに3割特例を加えているのが、政令の附則

上の2号には、3割特例が書かれていません。書き足す代わりに、読替えが用意されています。

消費税法施行令に添付された平成30年政令135号の附則21条の3です。原文を引きます。

(適格請求書発行事業者となる小規模個人事業者に係る税額控除に関する経過措置) 第二十一条の三 二十八年改正法附則第五十一条の三第一項に規定する個人事業者である適格請求書発行事業者の同項の規定の適用を受ける課税期間における消費税法施行令第二十五条の五第一項第二号及び第七十五条第八項の規定の適用については、同号中「第三十七条第一項」とあるのは「第三十七条第一項若しくは所得税法等の一部を改正する法律(平成二十八年法律第十五号)附則第五十一条の三第一項」と、同項中「第三十七条第一項」とあるのは「第三十七条第一項又は所得税法等の一部を改正する法律(平成二十八年法律第十五号)附則第五十一条の三第一項」とする。

平成28年改正法附則51条の3第1項が、3割特例を定めた条文です。

読み替えたあとの25条の5第1項2号は、「簡易課税の課税期間」に加えて「3割特例の課税期間」も除くという形で読むことになります。

2割特例には、同じ条が先に置かれています

同じ附則の1つ前、21条の2が2割特例について同じ形の読替えを定めています。

第二十一条の二 二十八年改正法附則第五十一条の二第一項に規定する適格請求書発行事業者の同項の規定の適用を受ける課税期間における新令第二十五条の五第一項第二号及び第七十五条第八項の規定の適用については、同号中「第三十七条第一項」とあるのは「第三十七条第一項若しくは…附則第五十一条の二第一項」と…する。

読み替える対象の号も、読み替え後の形も同じです。

1か所だけ書き方が違います。21条の2は「新令第二十五条の五第一項第二号」、21条の3は「消費税法施行令第二十五条の五第一項第二号」です。指している条文は同じです。

この条は、前の版には載っていません

当サイトが消費税法施行令の2026年5月22日施行版と2026年10月1日施行版を取得して並べたところ、附則21条の3は10月1日施行版にだけありました(確認日2026年9月22日)。

3割特例を定める平成28年改正法附則51条の3が令和8年10月1日から効くのに合わせて、同じ内容の条が後から足された形です。

e-Gov法令検索で版を指定せずに開くと、その日に施行されている版が表示されます。探している条が見当たらないときは、版が早い可能性があります。

向きが逆の話と混ぜないこと

高額特定資産については、もう1つ別の話があります。

国税庁のQ&A問115-2は、3割特例を適用できない課税期間の1つとして、一般課税で高額特定資産の仕入れ等を行った場合を挙げています。これは当サイトの別記事([3割特例が使えない8つのケース](/articles/3wari-tsukaenai-8-cases/))で扱いました。

向き
Q&A問115-2 ⑥資産を取得した → 3割特例を適用できない課税期間が生じる
この記事(附則21条の3)3割特例を適用している → その期間の支出を1,000万円の累計に数えない

入口と出口が逆です。

また、高額特定資産を取得した後に簡易課税制度選択届出書を出せない期間が生じる点は、当サイトの別記事([高額な資産を買うと、簡易課税の届出書を3年間出せなくなることがあります](/articles/kogaku-shisan-kani-todokede-3nen/))で扱いました。

この記事のまとめ

  • 自分で建てる場合の高額特定資産は、建設等に要した課税仕入れの累計額が1,000万円以上かどうかで判定する(消費税法12条の4第1項・消費税法施行令25条の5第2項)
  • その累計からは、免税事業者だった課税期間と簡易課税の適用を受ける課税期間の課税仕入れが除かれる(同令25条の5第1項2号の括弧書き)
  • 平成30年政令135号の附則21条の3が、この除外に3割特例の適用を受ける課税期間を加える読替えを定めている
  • この附則21条の3は、2026年10月1日施行版で新設された条である
  • 2割特例には附則21条の2が同じ形で置かれている
  • 「高額特定資産を取得すると3割特例が使えない」という話とは向きが逆である

この記事は制度の内容を一般的に説明したものであり、個別の事案についての税務相談ではありません。自社の資産が自己建設高額特定資産に当たるか、どの課税期間の支出が累計に入るかについては、税理士または税務署にご確認ください。

経営者の疑問と、制度の事実

答えるのは制度の事実だけです。有利・不利は事業ごとの事情で変わるため、判断は税理士・税務署にご確認ください。

経営者個人でやっている。作業場を何年かかけて自分で建て増している。3割特例を使っている年に払った大工の代金は、1,000万円のほうに数えるのか。

制度の事実条文の形としては、数えない側に整理されています。消費税法施行令25条の5第1項2号は、自己建設資産の判定に使う金額を、その建設等に要した課税仕入れに係る支払対価の額などの合計額としたうえで、括弧書きで、免税事業者となる課税期間と消費税法37条1項(簡易課税制度)の適用を受ける課税期間に行った課税仕入れを除くとしています。そして平成30年政令135号の附則21条の3が、3割特例の適用を受ける課税期間について、この「第三十七条第一項」を「第三十七条第一項若しくは…附則第五十一条の三第一項」と読み替えるとしています。読み替えた後は、3割特例の課税期間の分も除かれる形になります。ただし御社の工事が自己建設資産に当たるか、支払がどの課税期間のものかといった判定が先に必要です。実際の当てはめは、税理士または税務署にご確認ください。

経営者そんな細かい読替えが政令の附則に入っていることに気づける気がしない。どこを見れば書いてあるのか。

制度の事実消費税法施行令の条文本体ではなく、同令に添付されている平成30年政令135号の附則にあります。e-Gov法令検索で消費税法施行令を開き、末尾の附則のうち、改正法令が「平成三〇年三月三一日政令第一三五号」のものを見ると、第21条の2と第21条の3が並んでいます。なお、この第21条の3は2026年5月22日施行版には現れず、2026年10月1日施行版で追加されています。版を固定せずに開くと、その日に施行されている版が表示されますので、探している条が見当たらないことがあります。条文の探し方や解釈については、税理士または税務署にご確認ください。

経営者1,000万円を超えたら何が起きるのか。そこも教えてほしい。

制度の事実消費税法12条の4第1項が定めています。同項は、高額特定資産の仕入れ等を行った場合、自己建設高額特定資産についてはその建設等に要した費用の額が政令で定める金額以上となった場合に、その日の属する課税期間の翌課税期間から、その建設等が完了した日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間について、納税義務の免除の規定を適用しないとしています。あわせて、この間は簡易課税制度選択届出書を提出できない期間が生じます。この点は当サイトの別記事でも扱っています。御社の場合にいつからいつまでが対象になるかは、税理士または税務署にご確認ください。

よくある質問

自分で建てる場合、1,000万円はいつの時点で判定するのですか。
消費税法12条の4第1項の括弧書きは、自ら建設等をした高額特定資産について「当該自己建設高額特定資産の建設等に要した政令で定める費用の額が政令で定める金額以上となつた場合」としています。同条を受けた消費税法施行令25条の5第2項は、その政令で定める費用の額を「自己建設高額特定資産の建設等に要した仕入れ等に係る支払対価の額の累計額」とし、政令で定める金額を1,000万円としています。1回の取引の金額ではなく、累計額が1,000万円以上になった時点を見る形です。自社の当てはめは、税理士または税務署にご確認ください。
その累計額から除かれるものがあると聞きました。何が除かれるのですか。
消費税法施行令25条の5第1項2号の括弧書きは、自己建設資産の建設等のために要した原材料費および経費に係るものに限るとしたうえで「当該建設等を行つた事業者が法第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除されることとなる課税期間又は法第三十七条第一項の規定の適用を受ける課税期間中に国内において行つた課税仕入れ及び保税地域から引き取つた課税貨物に係るものを除く」としています。消費税法9条1項本文は免税事業者について、37条1項は簡易課税制度について定めた規定です。個別の当てはめは、税理士または税務署にご確認ください。
3割特例の適用を受ける課税期間は、その除外に入るのですか。
平成30年政令135号の附則21条の3が、読替えという形で定めています。原文は「二十八年改正法附則第五十一条の三第一項に規定する個人事業者である適格請求書発行事業者の同項の規定の適用を受ける課税期間における消費税法施行令第二十五条の五第一項第二号及び第七十五条第八項の規定の適用については、同号中「第三十七条第一項」とあるのは「第三十七条第一項若しくは所得税法等の一部を改正する法律(平成二十八年法律第十五号)附則第五十一条の三第一項」と…する」です。読み替えられた後の同号は、簡易課税の課税期間に加えて3割特例の課税期間も除外の対象として読むことになります。自社の当てはめは、税理士または税務署にご確認ください。
2割特例にも同じ規定はありますか。
あります。平成30年政令135号の附則21条の2が、2割特例(平成28年改正法附則51条の2第1項)について同じ形の読替えを定めています。両条を並べると、読み替える対象の号も読み替え後の文言の形も同じです。ただし参照の書き方が異なり、附則21条の2は「新令第二十五条の五第一項第二号」、附則21条の3は「消費税法施行令第二十五条の五第一項第二号」と書かれています。
この附則21条の3は、前からあった条文ですか。
消費税法施行令の2026年5月22日施行版には置かれておらず、2026年10月1日施行版で新設された条です(当サイトが両版を取得して並べた結果・確認日2026-09-22)。3割特例を定める平成28年改正法附則51条の3が令和8年10月1日から効くことに合わせて、同じ内容の条が追加された形になっています。
高額特定資産を買うと3割特例が使えなくなる、という話とは別ですか。
向きが逆の話です。国税庁のQ&A問115-2は、3割特例を適用できない課税期間の1つとして、一般課税で高額特定資産の仕入れ等を行った場合を挙げています。これは資産の取得が3割特例の適用可否に影響するという向きです。この記事で扱っているのは、3割特例を適用している課税期間中に支払った建設費用を、自己建設高額特定資産の1,000万円の累計にどう数えるかという向きです。どちらが自社に当てはまるかは、税理士または税務署にご確認ください。

個別の判断について

適用の可否や有利・不利は、事業区分・基準期間の課税売上高・過去の届出など個別の事情で変わります。実際の判断の前に、税理士等の専門家、または所轄の税務署にご相談ください。

出典(一次情報)

法令・国税庁・省庁など公的機関の公表資料のみを参照しています(解説記事等の二次情報は使用していません)。

本ページは公表されている制度情報にもとづく解説と試算の補助であり、税務に関する助言ではありません。個別の判断は必ず税理士等の専門家にご確認ください(所轄の税務署でも確認できます)。

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