令和8年度税制改正に対応

特定非常災害の被災事業者が出す届出書には、専用の様式がありません(「参考事項」欄に書く旨と、措置法施行規則37条の3の2の記載事項)

最終確認日: (数値は一次情報で照合)

結論から

特定非常災害の被災事業者に対する消費税の届出等の特例(租税特別措置法86条の5)について、国税庁の案内ページは「各種届出等」として、消費税課税事業者選択届出書、消費税課税事業者選択不適用届出書、消費税簡易課税制度選択届出書、消費税簡易課税制度選択不適用届出書の4つを掲げています。これらは普段から使われている様式で、この特例のための専用様式は掲げられていません。そのうえで同ページは「(注) 提出に当たり、届出書の「参考事項」欄に「令和8年熊本地震による災害の被災事業者である」など特定非常災害の被災事業者である旨を記載してください」と記載しています。ただし、同じ国税庁が公表しているリーフレット「消費税の届出等に関する特例について」では、掲げられている届出書が5つ(適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書を含む)で、注の文言も「これらの届出書の「参考事項」欄に「熊本地震の被災事業者」である旨を記載してください」となっており、案内ページと一致していません。どちらも国税庁の記載であるため、記載すべき文言がどちらか一方に限られると読むことはできません。また、国税通則法11条による期限の延長を受けていない事業者が、消費税法12条の2第2項・12条の3第3項・12条の4第1項・第2項の不適用を受けようとする場合には、別に届出書の提出が必要とされており、その記載事項は租税特別措置法施行規則37条の3の2が定めています。実際に提出する書類と記載内容については、税理士または税務署にご確認ください。

この記事の要点

  • 特定非常災害の被災事業者に対する消費税の届出等の特例(租税特別措置法86条の5)で提出するのは、普段と同じ届出書である。国税庁の案内ページに、この特例のための専用様式は掲げられていない。
  • 国税庁の案内ページが「各種届出等」として掲げているのは4つ。消費税課税事業者選択届出書、消費税課税事業者選択不適用届出書、消費税簡易課税制度選択届出書、消費税簡易課税制度選択不適用届出書である。
  • 同ページの注は「提出に当たり、届出書の「参考事項」欄に「令和8年熊本地震による災害の被災事業者である」など特定非常災害の被災事業者である旨を記載してください」となっている。書く場所は、新たな欄ではなく既存の「参考事項」欄である。
  • 同じ国税庁のリーフレット「消費税の届出等に関する特例について」では、掲げられている届出書が5つで、適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書が加わっている。案内ページ側には、この届出書の記載がない(本文の検索で0件)。
  • 注の文言も一致していない。案内ページは「特定非常災害の被災事業者である旨」、リーフレットは「「熊本地震の被災事業者」である旨」と書いている。どちらも国税庁の記載である。
  • 国税通則法11条による期限の延長を受けていない事業者は、経路が別になる。案内ページは、その場合の届出として「特定非常災害による消費税法第12条の2第2項(第12条の3第3項)不適用届出手続」と「特定非常災害による消費税法第12条の4第1項(第2項)不適用届出手続」を別に案内している。
  • この2つの届出書の記載事項は、租税特別措置法施行規則37条の3の2が定めている。条の見出しは「納税義務の免除の特例の適用を受けない旨の届出書の記載事項」。
  • 同条1項(措置法86条の5第4項・新設法人等)には「設立の年月日」が記載事項として置かれているが、同条2項(同条5項・6項・高額特定資産等)には置かれていない。
  • 1項・2項に共通するのは「課税期間の初日及び末日」と「同項の規定の適用を受けようとする各課税期間のうち最初の課税期間の初日の年月日」である。課税期間の初日は、2つの意味で書くことになる。
  • 措置法86条の5第4項は、届出書の提出を求める条件を括弧書きで限定している。新設法人等が「特定非常災害に係る国税通則法第十一条の規定の適用を受けた者でない場合にあつては」届出書を提出した場合に限る、という書き方である。

用紙は変わりません。変わるのは、欄のひとつです

特定非常災害の被災事業者には、消費税の届出について特例があります。租税特別措置法86条の5です。制度の中身と「指定日」がどう決まるかは、別の記事で扱っています。

この記事が扱うのは、手元の紙の話です。どの用紙を使い、どこに何と書くのか。

国税庁の案内ページは、「各種届出等」として次の4つを掲げています。

  • 消費税課税事業者選択届出書
  • 消費税課税事業者選択不適用届出書
  • 消費税簡易課税制度選択届出書
  • 消費税簡易課税制度選択不適用届出書

いずれも、普段から使われている様式です。この特例のための専用様式は掲げられていません。

そのうえで、同じページに注が置かれています。

(注) 提出に当たり、届出書の「参考事項」欄に「令和8年熊本地震による災害の被災事業者である」など特定非常災害の被災事業者である旨を記載してください。

つまり、新しい欄が増えるのではなく、既存の「参考事項」欄に旨を書き添えるという組み立てです。

ところが、書く文言は2つの資料で一致していません

ここが注意の要るところです。同じ国税庁が出している資料を2つ並べると、注の文言がそろっていません。

資料注に書かれている文言
案内ページ(各種届出等の注)「令和8年熊本地震による災害の被災事業者である」など特定非常災害の被災事業者である旨
リーフレット「消費税の届出等に関する特例について」これらの届出書の「参考事項」欄に「熊本地震の被災事業者」である旨

案内ページは「など」を付けた例示の形で、特定非常災害という制度上の言葉を使っています。リーフレットは鍵括弧の中を「熊本地震の被災事業者」とし、制度上の言葉を使っていません。

どちらも国税庁の記載です。したがって、どちらか一方だけが正しい文言である、と読むことはできません。一語一句が指定されているわけではない、という読み方になります。

掲げられている届出書の数も、同じではありません

文言だけではありません。対象として並んでいる届出書の数も違います。

リーフレットは、上の4つに次の1つを加えた5つを並べ、注を「これらの届出書」に掛けています。

  • 適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書

一方、案内ページの本文には、この届出書の記載がありません(本文を検索すると「取消」の語は0件です)。

同じ制度を説明した2つの資料で、4つと5つに分かれているという状態です。どの届出書を提出することになるかは、税理士または税務署にご確認ください。

期限の延長を受けていない場合は、経路が別になります

ここまでは「いつもの様式+参考事項欄」の話でした。もう1つ、別の経路があります。

案内ページは、国税通則法11条による申告等の期限の延長を受けていない事業者がこの特例を適用しようとする場合の届出について、別に2つの手続を案内しています。

  • 特定非常災害による消費税法第12条の2第2項(第12条の3第3項)不適用届出手続
  • 特定非常災害による消費税法第12条の4第1項(第2項)不適用届出手続

この「延長を受けていない場合に限る」という切り分けは、条文の側にも書かれています。租税特別措置法86条の5第4項の括弧書きです。

(当該新設法人又は当該特定新規設立法人が特定非常災害に係る国税通則法第十一条の規定の適用を受けた者でない場合にあつては、この項の規定の適用を受けようとする旨その他財務省令で定める事項を記載した届出書を…提出した場合に限る。)

同条5項も同じ組み立てになっています。延長を受けている事業者と、受けていない事業者で、届出書の要否が分かれるという書き方です。

その届出書の記載事項は、措置法施行規則37条の3の2にあります

上の括弧書きにある「その他財務省令で定める事項」の受け皿が、租税特別措置法施行規則37条の3の2です。条の見出しは「納税義務の免除の特例の適用を受けない旨の届出書の記載事項」です。

記載事項1項(措置法86条の5第4項)<br>新設法人・特定新規設立法人2項(同条5項・6項)<br>高額特定資産等
届出者の名称・納税地・法人番号○(代表者の氏名を含む)○(氏名又は名称)
設立の年月日○記載事項に挙げられていない
課税期間の初日及び末日○○
適用を受けようとする各課税期間のうち最初の課税期間の初日の年月日○○
その他参考となるべき事項○○

違いは「設立の年月日」です。1項にはありますが、2項にはありません。1項が新設法人・特定新規設立法人を相手にした項であることと対応した並びになっています。

もう1つ、見落としやすい点があります。課税期間の初日が、2回出てきます。「課税期間の初日及び末日」と、「適用を受けようとする各課税期間のうち最初の課税期間の初日の年月日」です。前者はその課税期間そのもの、後者は特例を受ける課税期間が複数あるときの先頭を指す書き方で、同じ日になるとは条文に書かれていません。

この記事のまとめ

  • 特定非常災害の届出等の特例(租税特別措置法86条の5)に、専用様式は掲げられていない。案内ページが掲げるのは、普段から使われている4つの届出書。
  • 書く場所は既存の「参考事項」欄。案内ページの注は「特定非常災害の被災事業者である旨」を記載するよう案内している。
  • 🔴 文言は2つの資料で一致していない。案内ページは「特定非常災害の被災事業者である旨」、リーフレットは「「熊本地震の被災事業者」である旨」。どちらも国税庁の記載であり、一語一句の指定と読むことはできない。
  • 届出書の数も違う。リーフレットは「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を加えた5つを掲げるが、案内ページ本文に「取消」の語は0件。
  • 国税通則法11条の延長を受けていない事業者は経路が別で、12条の2第2項・12条の3第3項・12条の4第1項・第2項の不適用届出書を出すことになる。
  • その記載事項は租税特別措置法施行規則37条の3の2。1項にだけ「設立の年月日」があり、2項にはない。

どの届出書を、どの様式で、何と書いて提出することになるかについては、税理士または税務署にご確認ください。

経営者の疑問と、制度の事実

答えるのは制度の事実だけです。有利・不利は事業ごとの事情で変わるため、判断は税理士・税務署にご確認ください。

経営者災害の特例を使うと聞いたが、税務署に行けば専用の申請用紙をもらえるのか。

制度の事実国税庁の案内ページが「各種届出等」として掲げているのは、消費税課税事業者選択届出書、消費税課税事業者選択不適用届出書、消費税簡易課税制度選択届出書、消費税簡易課税制度選択不適用届出書の4つで、いずれも普段から使われている様式です。この特例のための専用様式は掲げられていません。そのうえで同ページの注は、届出書の「参考事項」欄に「令和8年熊本地震による災害の被災事業者である」など特定非常災害の被災事業者である旨を記載するよう案内しています。つまり、用紙を変えるのではなく、いつもの用紙の既存の欄に旨を書き添える組み立てになっています。実際にどの様式を使うかについては、税理士または税務署にご確認ください。

経営者「参考事項」欄には、国税庁が指定した決まった文言があるのか。

制度の事実同じ国税庁の2つの資料で、文言が一致していません。案内ページの注は「「令和8年熊本地震による災害の被災事業者である」など特定非常災害の被災事業者である旨を記載してください」と書いています。リーフレット「消費税の届出等に関する特例について」の注は「これらの届出書の「参考事項」欄に「熊本地震の被災事業者」である旨を記載してください」と書いています。案内ページ側は「など」という語を付けて例示の形にしており、一語一句を指定した書き方にはなっていません。どのように記載するかについては、税理士または税務署にご確認ください。

経営者うちは期限の延長を受けていない地域だ。それでもこの特例は関係するのか。

制度の事実国税庁の案内ページは、国税通則法11条の規定による申告等の期限の延長を受けていない事業者がこの特例を適用しようとする場合の届出について、別に2つの案内を置いています。「特定非常災害による消費税法第12条の2第2項(第12条の3第3項)不適用届出手続」と「特定非常災害による消費税法第12条の4第1項(第2項)不適用届出手続」です。条文の側でも、租税特別措置法86条の5第4項は、新設法人等が「特定非常災害に係る国税通則法第十一条の規定の適用を受けた者でない場合にあつては」届出書を所定の日までに提出した場合に限る、という括弧書きを置いています。同条5項も同じ組み立てです。御社が対象になるかどうかは、税理士または税務署にご確認ください。

よくある質問

この特例のための専用の用紙があるのですか。
国税庁の案内ページは「各種届出等」として、消費税課税事業者選択届出書、消費税課税事業者選択不適用届出書、消費税簡易課税制度選択届出書、消費税簡易課税制度選択不適用届出書の4つを掲げています。いずれも普段から使われている様式であり、この特例のための専用様式は掲げられていません。そのうえで同ページは、届出書の「参考事項」欄に被災事業者である旨を記載するよう案内しています。提出する様式の確認については、税理士または税務署にご確認ください。
「参考事項」欄には、どう書けばよいのですか。
国税庁の案内ページの注は「提出に当たり、届出書の「参考事項」欄に「令和8年熊本地震による災害の被災事業者である」など特定非常災害の被災事業者である旨を記載してください」と記載しています。一方、同じ国税庁のリーフレットの注は「提出に当たり、これらの届出書の「参考事項」欄に「熊本地震の被災事業者」である旨を記載してください」と記載しています。2つの記載は文言が一致していないため、どちらか一方だけが正しい書き方であると読むことはできません。実際の記載文言については、税理士または税務署にご確認ください。
案内ページとリーフレットで、対象の届出書の数が違うのですか。
掲げられている数が違います。案内ページの「各種届出等」は4つ(消費税課税事業者選択届出書、同不適用届出書、消費税簡易課税制度選択届出書、同不適用届出書)です。リーフレットは、これらに「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を加えた5つを掲げ、注を「これらの届出書」に掛けています。案内ページの本文を検索すると「取消」の語は0件で、この届出書の記載はありません。どの届出書が必要かについては、税理士または税務署にご確認ください。
国税通則法11条の延長を受けている場合と、受けていない場合で違いがありますか。
案内ページは、国税通則法11条の規定による申告等の期限の延長を受けていない事業者が、この特例を適用しようとする場合の届出について、別に案内を置いています。具体的には「特定非常災害による消費税法第12条の2第2項(第12条の3第3項)不適用届出手続」と「特定非常災害による消費税法第12条の4第1項(第2項)不適用届出手続」の2つです。条文の側でも、租税特別措置法86条の5第4項は、新設法人等が「特定非常災害に係る国税通則法第十一条の規定の適用を受けた者でない場合にあつては」届出書を提出した場合に限る、という括弧書きを置いています。御社がどちらに当たるかについては、税理士または税務署にご確認ください。
その不適用届出書には、何を書くことになっていますか。
租税特別措置法施行規則37条の3の2が定めています。1項(租税特別措置法86条の5第4項に規定する財務省令で定める事項)は、届出者の名称(代表者の氏名を含む)・納税地・法人番号、設立の年月日、課税期間の初日及び末日、同項の規定の適用を受けようとする各課税期間のうち最初の課税期間の初日の年月日、その他参考となるべき事項です。2項(同条5項及び6項に規定する財務省令で定める事項)は、届出者の氏名又は名称・納税地・法人番号、課税期間の初日及び末日、同条5項又は6項の規定の適用を受けようとする各課税期間のうち最初の課税期間の初日の年月日、その他参考となるべき事項です。
1項と2項で、記載事項に違いはありますか。
あります。租税特別措置法施行規則37条の3の2第1項には「設立の年月日」が記載事項として置かれていますが、2項には置かれていません。1項は措置法86条の5第4項(消費税法12条の2第1項の新設法人、同法12条の3第1項の特定新規設立法人)に対応する項であり、2項は同条5項・6項(高額特定資産の仕入れ等、高額特定資産等に係る棚卸資産の調整)に対応する項です。当てはめについては、税理士または税務署にご確認ください。

個別の判断について

適用の可否や有利・不利は、事業区分・基準期間の課税売上高・過去の届出など個別の事情で変わります。実際の判断の前に、税理士等の専門家、または所轄の税務署にご相談ください。

出典(一次情報)

法令・国税庁・省庁など公的機関の公表資料のみを参照しています(解説記事等の二次情報は使用していません)。

本ページは公表されている制度情報にもとづく解説と試算の補助であり、税務に関する助言ではありません。個別の判断は必ず税理士等の専門家にご確認ください(所轄の税務署でも確認できます)。

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